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コロナ禍の社会においては、働き方全体が大きく変化した中で、企業内での新入社員受け入れ態勢にも多大な影響が及んでいます。将来を担う人材が育成できないことは、企業にとっては死活問題にもつながります。
こうした状況で各企業の新入社員は現状をどのように受け止めているのか、また企業側はどのような対策を講じるべきなのか、ここでは1つの実態調査を参考に分析と解説を行います。
パーソル研究所は2020年11月に、「新卒入社者のオンボーディング実態調査(コロナ禍影響編)」を行いました。対象は全国の新卒採用10名以上、従業員300名以上の企業に在籍する新入社員1,100名と、人事部門の新卒担当者200名です。
その調査結果によれば、在宅勤務が中心になること自体について、新入社員は予測されたほどネガティブにとらえていないことが分かりました。一方で人事担当者は、オンラインによるオンボーディングにより、新入社員の定着促進や育成に工夫をこらしているようです。ここからその詳細について見てみましょう。
2020年4~5月の緊急事態宣言時から、新入社員の在宅勤務割合は徐々に減少しています。しかしその後10月時点でも、出社のみの比率が50%を超えることはなく、何らかの形で在宅勤務が継続している状況です。
こうした現状での労働環境について新入社員は、精神的・体力的な負担が少なくて済むことから、むしろ肯定的にとらえているようです。調査の結果から在宅勤務に対する満足度では、かなりの不安を抱える人事担当者と、一定の満足感を抱く新入社員との間には、大きな意識の隔たりが見てとれます。
一方で今回の調査では、新入社員が問題視している課題も明らかになりました。その中で多かった意見としては、まず同期や先輩社員とのコミュニケーションが取りづらいことが挙げられます。さらに、業務を進める上で不可欠な上司とのコミュニケーションが不足しているなど、社内での意思疎通に関する不満が表面化しているようです。
また、自律的に業務を遂行する必要性が感じられないことや、業務に取り組むためのモチベーションが下がることなど、仕事に対する意欲低下についての意見も多く見られます。同時に仕事内容についてや、職場の人間関係に関する情報が不足していることも問題視されています。
新入社員の育成面では、現場で直接意思の疎通を図ることができない点がネックになっているようです。研修や面談などはオンライン実施の割合が大幅に増加しており、特に各種研修は対面形式が制限され、かなりの割合がオンライン形式に置き換えられています。
ここでも問題点として浮き彫りになるのは、新入社員同士または職場の他の社員との交流が不足することです。新入社員にとってこうしたコミュニケーション不足は、業務スキルの習得や社内でのポジション確保の面で不安材料になっているようです。
一方で人事担当者は、オンラインによる業務スキルや知識の習得と面談には一定の評価を与えており、対面式の方法と同等以上の効果を感じています。しかし、OJTによる教育効果やコミュニケーションスキルなどの面では、効果に疑問を感じているという結果が出ています。
ただし新入社員の育成に関するコロナの影響について、人事担当者による回答からは意外な一面も見えてきます。それは業務スキル獲得や職場への適応などの点について、在宅勤務には良い面と悪い面両方の評価があることです。
在宅勤務と出社型勤務を比較した場合、在宅の方で良い影響が出ているという回答が多い反面、在宅の方が悪い影響が大きいという回答も多いのです。これは在宅勤務を上手に活用している企業と、その反対のケースとが混在していると考えられます。
ではコロナ禍で各企業は、どのようにして新入社員の育成に取り組んでいるのでしょうか。人事担当者からの回答で最も多かったことは、コミュニケーションに関するフォローです。同期や先輩社員との交流以外に、上司、他部署、さらに経営陣との交流を活発にすることが、新入社員の業務スキルの習得と定着に大きく貢献しているようです。
また新入社員の立場からすると、上司にプライベートな相談まで聞いてもらえることが、非常に大きな心の支えになっていることも見逃せません。その上で上司が業務の方向性や、将来的なビジョンを示すことが新入社員に良い影響を与えていると考えられます。
現在新型コロナウィルス問題によって、国内企業は新入社員の育成と定着とに多くの課題を抱えています。こうした課題をクリアするためには、オンライン環境でも活発なコミュニケーションの場を設けることが重要です。
その一方でOJTなどでは、なるべく対面式で研修を行う機会を増やす必要があるでしょう。また新入社員が、仕事以外のことを相談できる場を提供するためには、相談窓口の設置や懇親会の開催なども効果的な方法です。いずれにせよ、今まで以上に社内が強い人間関係で結ばれることが、コロナ禍を乗り切る最善の方法なのかもしれません。
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