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先日、4月の有効求人倍率は1.32倍で、前月と同水準であることが発表されました。有効求人倍率は経済動向を把握できる注目すべき指標であり、ビジネスの動きを読み解く上では、ぜひ押さえておきたい数値です。今回は、有効求人倍率の最新動向について詳しく解説します。
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有効求人倍率とは、「有効求人数÷有効求職者数」で計算される指標です。 ここでいう「有効」とは、ハローワークが求人、求職の期間として定めている日数で、「求人、求職それぞれ申し込み月の翌々月末日まで」とされています。
有効求人数とは全国のハローワークに登録されている企業側からの求人の数、有効求職者数とは、ハローワークにて求職の登録をしている人の数です。それぞれ前月から繰り越された数と、当月の新規登録数を加算して算出されます。
有効求人倍率が1.0のときは、企業が募集している仕事の求人数と、仕事を探している求職者数が同じであり、均衡が取れていることを意味します。1.0を超えているときは求人数の方が多いので、労働市場は売り手市場です。
一方、1.0未満のときは、求人数よりも求職者数の方が多いので、「なかなか仕事が見つからない」という買い手市場となるわけです。 なお、有効求人倍率の測定方法には、求人票を受理した場所で集計する「受理地別」と、求人票に記載されている就業地にて集計する「就業地別」の2種類があります。
就業地別で計算すると、企業の本社・工場が集積する地域に求人数・求職者数が集中する形での有効求人倍率となります。これにより企業・工場が多い都市部と少ない地方との有効求人倍率を正しく把握できるわけです。
一方、受理地別の場合だと、就業場所ではなく求人が出されている場所ごとの有効求人倍率が算出可能です。厚生労働省などの公的データでは、受理地別の数値を「公表値」、就業地別の数値を「試算値」と位置づけています。
2023年4月の有効求人倍率は1.32倍で、前月から横ばいとなっています。具体的な数値を見ると、4月の月間有効求職者数は2,070,382人、月間求人数は2,422,422人。
季節調整値(季節的な要因によって過度に増えたり減ったりする不連続性を除去した値)で計算すると、月間有効求職者数は前月比マイナス0.7%、月間求人数は前月比マイナス0.6%でした。つまり、求職者数も求人数も同程度に減少したことで、有効求人倍率の値は横ばいになったわけです。
有効求人倍率は経済状況の変化を的確に示す指標でもあります。たとえば、戦後間もない高度成長期前の1950年代は、有効求人倍率は平均0.5倍未満でした。統計が始まった1953年は0.31倍で、労働者にとっては就職が極めて難しい状況だったのです。
しかし、高度成長期が始まると徐々に求人数が増えていき、1962年に1.37倍とはじめて1.00倍を突破したのです。直後少し下がりますが、60年代後半から急増し、1973年には史上最高となる1.76倍を記録しました。その後また少し緩やかに下がっていき、80年代後半のバブル期に再び増加し、1990年と91年には1.40倍となっています。
90年代半ば以降はバブル崩壊のあおりを受けて低下していき、1999年には0.48倍と求職者の半分の求人数しかない状況が生じます。そこから再び緩やかに増えて2006年には1.06倍まで回復したものの、リーマンショックにより再び下降し、2009年には0.47倍となりました。
そこから再び増加傾向に転じ、とくに2010年代後半にはバブル期以来の高水準となり、2018年には1.61倍まで上昇したのです。その後少し低下し、2022年は年間平均で1.28倍となっています。
2023年4月の有効求人倍率を職業別(パート含む)に見ると、以下の通りです。
・管理的職業従事者:1.15倍
・専門的・技術的職業従事者(製造技術者、情報処理・通信技術者、医師、社会福祉、美術家・デザイナーなど):1.71倍
・事務従事者(一般事務、会計、営業、郵便など):0.43倍
・販売従事者:1.91倍
・サービス職業従事者(家庭生活支援、介護サービス、保健医療サービス、飲食物調理、接客など):2.82倍
・保安職業従事者(警察、消防、自衛官など):6.00倍
・農林漁業従事者:1.19倍
・生産工程従事者(各種組立、修理、検査の従事者など):1.75倍
・輸送・機械運転従事者(自動車運転、船舶運転など):2.09倍
・建設・採掘従事者(建設躯体工事、建設、電気工事、土木作業など):5.02倍
・運搬・清掃・包装等従事者(運搬、清掃など):0.77倍
職業ごとに有効求人倍率の実情は大きく変わってきます。事務従事者などは買い手市場ですが、保安職や建設業などは完全に売り手市場です。
2023年4月の有効求人倍率について、前月からの推移を主要産業別に見ると、宿泊業・飲食サービス業(8.2%増)、情報通信業(7.5%増)、学術研究専門・技術サービス業(3.3%増)などにおいて、大きな増加が見られました。
一方、建設業(9.6%減)、製造業(9.3%減)、生活関連サービス業・娯楽業(1.3%減)などでは前月から減少が見られました。
都道府県別に有効求人倍率を見ると、就業地別だと最高値は福井県の1.95倍、2番目が島根県の1.75倍。最低は神奈川県の1.10倍で、2番目が大阪府の1.13倍です。
一方、受理地別だと、最高値は福井県の1.84倍、2番目が東京都の1.79倍、最低は神奈川県の0.90倍、2番目が兵庫県の1.03倍です。
2023年4月時点の日本全体の有効求人倍率は前月から横ばいの1.32倍でした。ただし、これはあくまで平均値であり、実際の数値は職業別、都道府県別で大きく変わっているため、指標として参考にする場合は細かく数値を見極めることも必要でしょう。
全体の動向としては2014年以降、日本における有効求人倍率は1.00を下回ったことはありませんが、「事務就業者」などではかなり買い手市場の状況であり、就職・転職をするなら自分自身の強みをアピールする必要があるでしょう。
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参考サイト
厚生労働省|一般職業紹介状況(令和5年4月分)について
独立行政法人 労働政策研究・研修機構|図1 完全失業率、有効求人倍率
厚生労働省|有効求人倍率の受理地別値(公表値)と就業地別値(試算値)
総務省|日本標準職業分類案(分類項目名、説明及び内容例示新旧対照表)
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