特集インタビュー | Best Professional Firm 2019

Best Professional Firm2019は、旧態依然とした会計ファームではなく、新しい時代にふさわしい未来志向の取り組みをし、業界をけん引する会計ファームを広く世の中に知らしめるためのもの。
その一方、少子高齢化による人材不足、加速する会計のIT化といった背景を踏まえ、本事業を主宰するMS-Japan代表取締役社長・有本隆浩氏に、会計ファームの生き残り策を聞いた。

従来からの会計業務しか対応しないファームは自然と淘汰されていく

会計業界が迎える本格的な淘汰の時代

─ 世の中のIT化の流れが一層速くなり、AIや、全てのモノがつながるIoTも各業界で急速に広まりつつあります。会計業務でいえば、いよいよクラウドの時代に入ってきた感があります。
会計業界はこの流れをどう見ているでしょうか。


有本:会計業界の多くのファームがかなり危機感を抱いています。ITによる急速な変化は産業界に対して、もしかしたら産業革命以上のインパクトを与えるかもしれません。会計業界に限らず基本業務がIT化され、中でも単純で繰り返し的な処理業務は早晩、人手を必要としなくなるでしょう。そうなると会計業界には顧問先が成長するためのサポート役やアドバイザー役が期待されますし、その役割を担わないと会計業界からは淘汰されてしまうファームも少なくないでしょう。


─ ここが会計ファームにとっての分かれ道かもしれませんね。

有本:ITなどの最先端技術を取り込んでいくのか、それに背を向け旧来型の月次巡回監査や決算資料作成の業務などを続けていくのか。恐らく旧来型の業務を続けていくことは不可能だと思います。それらはITに簡単に取って代わられてしまう業務ですから。会計業界の先生方の高齢化が進んでいて、今は平均年齢が70歳に近くなっています。その点で従来からの会計業務しか対応しないファームは自然となくなり、若い人たちから新しい形の会計ファームが出てくる流れもあると思います。何しろ今の若い人たちはITやデジタルに全く抵抗感がありませんから、最新のテクノロジーを貪欲に取り込み、使いこなしてしまいます。

時代が動くとき必ずチャンスが生まれる

─ 資金的に余裕のある大きな会計ファームならIT投資も積極的にできます。会計の業界はこれから寡占化が進むのでしょうか。

有本:確かにスケールメリットを得るため、規模を拡大している会計ファームは存在します。一方で巨大ファームにはない業務やサービスを提供するところも現れ始めています。例えば、会計にまつわる法律のことを知り尽くした会計事務所です。大きな事務所ではありません。スタッフは過去の会計に関する膨大な数の訴訟や判例を調べ上げ、法律の勉強もして、顧問先に対して法律をベースにした会計のアドバイスを行っています。それが顧問先から非常に喜ばれているのです。


─ 確かに法律の強い会計事務所は希少な存在です。ニーズはありそうです。

有本:どんな事業でも探せば必ずスキマがあって、そこからビジネスが広がっていくものです。要はそこに気づくかどうかです。ほかにもベンチャー支援に強いところや、医療あるいはエンターテインメント産業、社会福祉法人などの業界に特化した強みを見せるところなど、規模が大きくなくても存在感を出し、利益を上げている会計ファームが出てきています。今回、「Best Professional Firm(BPF)」に選出された会計ファームにも何かしら目を見張る特色があります。 今のようにITやAIによって世の中に変革がもたらされている時や法律が変わるようなときは、よりスキマが大きくなり、それだけビジネスチャンスが広がるものです。

自分の専門性を生かして2社、3社の業務を請け負うスタイルも出てきた

会計ファームトップにもビジネスセンスが問われる

─ 税理士、会計士の仕事は、やりようによっては面白い。でも現状、会計の世界を目指す若い人たちが減っていると聞きます。仕事に魅力がないのでしょうか。

有本:会計士志望者の数は下げ止まった感じですが、税理士志望者は毎年3000人ずつ減っています。決算書作成のために必要な繰り返しの手作業や決算前の目まぐるしい忙しさ、あるいは所長との徒弟関係など、若い人たちが敬遠する従来の会計業界のイメージを払拭できていないのでしょう。しかし先ほど述べたように、柔軟な発想でほかの会計ファームとは違う事業を手掛け始めているところも増えていて、若い就職志望者を集めています。これからの会計業界は一般企業と同じでビジネスセンスが問われます。事務所の先生方も経営者という意識を持つ必要があるのです。私たちもBPFの選出を通して、新しい分野へ果敢に挑戦する会計ファームや、先端技術を積極的に取り込んで業務効率化を果たし、より付加価値の高い仕事にシフトしている会計ファームなどを 紹介することにより、会計業界の魅力を発信していきたいと思っています。


─ 働く魅力という点では、今、世間では働き方改革が話題です。会計の世界でもどのような働き方ができるかは重要な課題ですね。

有本:会計業界の魅力づくりには、人材の有効活用という視点が欠かせません。最近は各業界が、人材獲得のためにしのぎを削る時代ですからなおさら重要です。人材活用も柔軟な発想で向き合うといいでしょう。例えば近ごろは副業を認める企業が増えています。自分の専門性を生かして2社、社の業務を請け負うスタイルも出てきました。一つの会社に縛られない働き方です。これからは、違うファームに属する専門家同士が協力し合って一つのプロジェクトを遂行するケースも現れてくるでしょう。しかも高速通信が可能な時代ですから一度も顔を合わせることなく、プロジェクトを完遂してしまうことさえ可能です。そういう状況を、最近話題のVRの技術がさらに後押しすると思っています。


─ VRは日本語で「仮想現実」と訳され、つくり出されたバーチャル世界を人の脳があたかも現実世界と認識する最先端の技術ですね。仕事のスタイルも変える可能性があるのですか。

有本:ネットでつながる者同士が仮想の会議室に座って、そこでリアルな感覚で話し合いができるようになります。そうなると出勤の意味はなくなり、オフィスの必要もなくなるかもしれません。会計士の資格を持ちながらどの会計ファームにも所属しない人たちが増えてくる可能性があります。会計業界は目の前にいるスタッフの人材活用はもちろんのこと、どこにも所属しない独立した税理士や会計士をつなぎ、プロジェクトを進めていくような手腕も試されるようになると思います。

Profile

ありもと・たかひろ|1961年生まれ。85年、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。多くの企業の人材採用の提案活動に従事。90年、28歳で株式会社日本MSセンター(現:株式会社MS-Japan)を設立。95年、人材紹介事業の許認可を取得し、管理部門特化型エージェントとして業界をリード。2016年12月、東証マザーズ市場への株式上場。17年12月、東証1部上場を果たす。

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