特集インタビュー | Best Professional Firm 2019

人材が流動化する今

求められる人材像が変わった

─ あらゆる分野でIT化やデジタル化が進み、さらにはAIの導入が始まっています。こうした環境の変化は会計業務にどのような影響を与えていますか。

中園:今日、会計処理の多くは自動化され、そこに大きな価値はなくなっています。会計業界に求められる役割が企業の相談業務や経営アドバイス、あるいは富裕層の個人資産の保全などに移りつつあるのです。


─ 会計業界の業務内容がずいぶん変化してきました。すると税理士や会計士に 求められる人材像も以前とは違ってくるのではないでしょうか。

中園:以前は、まず税理士や会計士の資格を持っていることがアドバンテージでした。そして財務諸表を読める能力と、正確に仕事ができる性格が、世間から「優秀な会計人材」として認められたのです。しかし、そのタイプの人たちが得意としていた会計処理の仕事がITに取って代わられ、コンサルティングやアドバイス業務が主流となってくると、コミュニケーション能力や営業センスが問われるようになってきたのです。


─ 今、会計人材に求められている能力は一般企業と変わりませんね。

中園:極端なことを言えば、ファームによっては、税理士や会計士の資格を持っていなくても、簿記級程度の知識で十分ですね。それよりはコミュニケーション能力の高い人材を望むというケースすらあるのです。そうした事情が会計業界と一般企業との間の人材の流動化を高めています。例えば銀行に入ったものの、当初抱いていた、中小企業やベンチャーへの支援をしたいといった思いが遂げられず悶々としている人。これはよくあるパターンでしょう。そうした人が、直接的に経営者の力になれる会計業界に転職するケースが増えています。


─ 今までは会計人材の転職というと、 会計業界内で移るのが当たり前でした。今は会計業界と一般企業の垣根がなくなってきたわけですね。

中園:そうです。銀行などから会計業界 へ、という流れとは反対に、会計業界か ら一般企業への人材流動も目立ってきました。会計を熟知した人材は一般企業の経理・財務の部署にとっては垂涎の的です。とりわけ国際税務やIPOに精通した人材は歓迎されます。ベンチャーに飛び込むときは会計業界での給与水準は諦めなければいけない、といった話もすでに過去のものです。株式公開を狙っているベンチャーが会計士をCFOとして厚遇で招く例も出ています。このように会計業界の優秀な人材が次のステップを考えたとき、多様なキャリア選択が可能になっているのです。


これからの人材戦略

事業戦略、差別化戦略はあるか

─ 今は、税理士や会計士にもコミュニケーション能力や営業センスが求められ る時代です。そうした 事情が、会計業界の人材確保、人材活用 などの人材戦略にどのような影響を与えていますか。

中園:例えば会計業界から一般企業へ転職した方が、自分の専門性が生かされて仕事が面白いという場合もあります。しかも高いポジションや高給を得られることもあり、転職者にとって魅力が増大しています。その分、会計業界の人材確保の厳しさは増しているといえます。会計士や税理士が所属するファームの仕事を通じて夢を描けなければ、人材はどんどん流出するでしょう。


─ 会計業界が人材を引きつけるために はどんな手を打つべきでしょうか。

中園:まず、おのおののファームにどんな事業戦略があり、差別化戦略があるか が大切です。スタッフがそのコンセプトや価値観に共感し、さらに自分もその戦略を推し進めるための技能を身に付けた いと思えば、そのファームに居続ける十分な理由になりますし、個人とファームの両方の成長が見込まれるでしょう。


─ 一般企業との転職障壁が低くなったことで会計業界は大変です。

中園:悪い面ばかりではありませんよ。会計業界で働く魅力が明確になってきたところもあるのです。それは、仕事の多様性です。一般企業の経理・財務であれば自分の専門性は生かせるでしょうが、同一の事業に対する同一の会計業務に限られてしまうケースもあります。一方、会計業界の場合は顧問先が違えば、相手の事業も違いますし、求められる業務も異なります。業務にバリエーションがある点が仕事の面白さにつながるのです。加えて業務を完了したとき、顧問先から直接喜んでもらえます。


─ それは一般企業ではなかなか味わえない仕事の醍醐味です。

中園:ただしファームのトップに経営センスや営業センスがなければ、面白い仕事を取ってくることができません。人材流動化の時代は、トップが選ばれる時代でもあるわけです。会計業界の経営に携わる人は、ITに任せられる業務は任せ、もっと発想力やコミュニケーション能力が生かされる面白い仕事を取ってくることを考えなければいけません。それが人材を呼び込み、定着させ、能力をいかんなく発揮してもらう方法です。また、面白い仕事を増やすことがファームの売り上げを大きく伸ばし、経営者や従業員の報酬を格段に上げる方法でもあると付け加えておきます。

Profile

株式会社MS-Japan 取締役。早稲田大学大学院修了後の2003年に入社。東京J事業部の立ち上げに参画。大阪、名古屋、横浜の各支社長を歴任。通算2000名以上の公認会計士・税理士・科目合格者との面談を通じ、転職成功事例は500件以上。13年より取締役就任。

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