特集インタビュー | Best Professional Firm 2019

「奉行」シリーズのCMでもおなじみのオービックビジネスコンサルタント。AI時代の到来で積極的にクラウド化を進める同社が考える未来の会計事情とは?

AIと5Gがもたらす「未来会計」の姿

─ 会計のみならず、今全ての仕事がデジタル化や自動化、さらにはAIの影響を受けています。オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らの論文『雇用の未来』によると会計士や税理士の仕事も高い確率でなくなるとか。長らく会計の世界の動向を見てきた和田社長は業界の将来像をどう描いていますか。

和田:6〜7年前、ドイツでもIT化でなくなる産業が議論され、会計や税理も含め仕事の8割は失われるだろうという予測が出て、社会の関心を集めました。確かに今、急速に進むAIの活用やデータ速度が現行の4Gの100倍といわれる5Gの普及によって会計の姿は全く変わるでしょう。例えば、交通費や物品の購入費をスマートフォンで決済することにより、その支払先と内容をAIが自動で仕分けしますし、取引先との間で発生する売り上げや仕入れは全てデータでやりとりされ、それも自動化されることになるでしょう。同時に銀行の取引内容もデータでの自動取り込みが当たり前になります。究極的には人の手が一切入らないで、売り上げや経費の入力から決算書の作成まで自動化されていくと私は考えています。


─ まさにIT化やAIの導入で、人手がかかっている多くの仕事が失われるという未来予測そのままです。すると会計士や税理士の存在自体も消えていくのでしょうか。

和田:確かに転記や消し込みのような単純な繰り返し作業はなくなり、決算書作成ではチェックが中心となるでしょう。8割仕事がなくなることの本質は、8割効率が上がることです。しかし、会計士や税理士の役割が失われるわけではありません。今よりもさらにレベルの高い役割に移行するのです。今後は、決算書を2週間くらいのスピード感をもって作成する会計事務所も出てくれば、コンサルティングや表現する業務に特化していく会計事務所も現れると考えています。コンサルティングにしても、企業のマーケティングや財務管理、あるいはタックスマネジメントなどさらに細分化、専門化していくと予測しています。一方の表現する業務とは、例えば、毎年の決算発表の場で、あるいは株式上場の場面で、企業の会計や財務の内容をどう効果的に見せていくかという業務です。これが、私が今思い描いている「未来会計」の姿です。

静かに進む会計のクラウドサービスモデル

─ 未来会計は会計に携わる全ての人に興味がある話です。恐らく今は未来会計に向かう途上にあると思います。果たしてどのような段階でしょうか。

和田:従来は、仕分けから勘定元帳を作成し、損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)を作るところまでの一連の作業はクライアントサーバーで集計されていました。それをうまく使いこなすことで、手作業が自動化されていったのは読者の皆さんも経験していることと思います。現在、会計の世界で起きているのは、クライアントサーバーによる会計からクラウドサービスを活用する会計への移行です。クラウド会計を導入すると、例えば、海外の関連会社の会計を日本にいながら常時確認できたり、M&Aを考えたときの企業価値やリスクを評価するデューデリジェンスで必要となる資料をすぐに見にいけるといったメリットを享受できます。


─ 一気に、クラウドサービスによる会計が実現していきますか。

和田:早い段階でクラウド会計に変えるか は、企業や会計担当者の考え方によるでしょう。誰しも使い慣れた仕組みを継続したいと思うもの。それでも徐々にクラウド会計に移っていくでしょう。ただし本格的に普及するには三つの条件がそろう必要があると考えています。まず、クラウドサービスモデルが、従来利用されていたクライアントサーバーモデルよりも機能と使い勝手、そしてサポートのいずれもが上回ることです。かつグローバルでクラウド会計が利用できることが求められます。次に、会計と融資、会計と税金や相続、会計とデューデリジェンスなどがつながり、データを見る必要のある人がどこにいてもライセンスキーの発行によって確認できる世界が実現することです。そして、最後がデータ化に伴うセキュリティーの強化です。会計に関するデータは、企業にとっては最重要の情報ですから堅固なセキュリティーシステムが必須です。私たちはマイクロソフトテクノロジーを100%採用することで、極めて変化に強いクラウド環境を提供しています。また、データ通信だけでなくデータベースも暗号化することで、世界トップレベルのセキュリティーを実現しています。以上の三つの条件がそろえば、どの企業も納得してクラウド会計を導入すると思います。クラウド会計は会計事務の大幅な効率 化とスピード化をもたらしますから、企業成長の上でも有利だといえます。

Profile

わだ・しげふみ|1952年生まれ。東京都出身。75年、立教大学経済学部を卒業。80年3月に公認会計士、6月に税理士に登録。同年12月に(株)オービックビジネスコンサルタントを設立し、代表取締役社長に就任、現在に至る。一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の名誉会長・理事や公益社団法人経済同友会の幹事など、業界団体や公益団体の役職も務める。

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