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日本における長時間労働の状況を改善するには、まずは企業側がしっかりと社員の労働時間の実態を把握し、対策を講じることが大切です。長時間労働は労働者側だけでなく企業側にもリスクを与えます。
今回は、長時間労働の状況を再確認する必要性とともに、企業へのリスクや具体的な対策について紹介します。
目次【本記事の内容】
企業側(使用者)は、労働者に違法な長時間労働をさせていないか、過重労働による心身へのダメージが発生していないかなど、時間外や休日労働時間数などについて現状を把握する必要があります。そのためには、使用者または労務管理責任者は、次のような点を再確認しておきましょう。
労働者の日々の労働時間を記録します。記録の方法としては、「タイムカード」や「ICカード」、「パソコンの使用時間の記録」などにより、客観的に確認できるものが望ましいです。労働者の自己申告により記録せざるを得ない場合は、実際の労働時間と乖離していないか、必要に応じて実態調査を行いましょう。
ここで注意しなければならないのは、2019年4月1日より順次施行される、いわゆる「働き方改革関連法」の存在です。時間外労働においては、2019年4月1日より上限規制が導入されており、「月45時間、年360時間」を原則としています。(中小企業は2020年4月1日より施行)
また、上記の時間を原則とし、特別な事情があるケースでも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度にすることが法律で定められています。
長時間労働をさせないために上記を守る必要がありますが、時間外労働の上限を超える申請を認めないなど、労働者の申告を阻害する措置をしてはいけません。
賃金台帳には、労働者一人ひとりにおける「労働日数」「労働時間数」「休日労働時間数」「時間外労働時間数」「深夜労働時間数」などを適正に記入しなければなりません。
これは、労働基準法第108条および同法施行規則第54条により定められています。記入を怠ったり虚偽の時間数を記入したりすると、同法第120条により30万円以下の罰金が課せられます。
労働者の名簿や賃金台帳、出勤簿など、労働時間の記録に関する書類は、3年間の保存義務があります。
このように、自社における労働時間を管理することで、現状の問題点が見えてきます。問題点を把握したら、解消するための検討や対策を行いましょう。
かつては、長時間労働をして、会社の生産性を高めることが美徳と捉えられがちな時代がありました。しかし現在では長時間労働は企業にとって以下のような多大なリスクを与えかねません。
長時間労働は、労働者の心身の健康を害し、障害や死をもたらす危険性があります。そうなれば労働者を失うばかりか、多額の損害賠償請求をされることもあります。ほかにも、募集や人材教育などにかかるコストなども同時にのしかかってきます。
また、企業に対する口コミや評価などがインターネットで簡単に広まってしまうため、自社の価値やイメージダウンにつながり、人材確保が難しくなる可能性も大きいです。
ここで、厚生労働省まとめ「平成29年度の過労死等の労災補償状況」をご紹介します。
「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」の請求件数は840件で、死亡件数は92件。支給決定件数253件のうち、評価期間1ヶ月では「100~120時間未満」の時間外労働をしていたケースが42件でした。
「精神障害に関する事案の労災補償状況」の請求件数は1,732件で、自殺件数は未遂を含めて221件。支給決定件数506件のうち、1ヶ月「20時間未満」が75件、次いで「160時間以上」が49件でした。
長時間労働は生産性を高めるどころか、企業へのリスクが大きいことを再認識しておきましょう。
違法な長時間労働は、場合によっては事業認可すら取り消されることがあります。
例えば、とある運送会社において、トラックドライバーを1日18時間以上拘束することが繰り返されていました。法律で定められた上限を超えた長時間労働が確認されたため、行政処分を繰り返したものの改善が見られず、結果として事業認可が取り消されました。
この件で、労働者側は「違法を繰り返さないと売り上げや利益が出ないという気持ちがあった」と証言しています。企業側は長時間労働を強いないことはもちろん、労働者に労働時間の上限があるなどの説明も必要です。
欧米諸国と比較すると、日本は長時間労働者の割合が高いと言われています。
経済産業省の「働き方改革に関する企業の実態調査/委託企業・株式会社日本経済新聞社」では、長時間労働の原因が浮き彫りになりました。
長時間労働の原因のトップは、「管理職の意識・マネジメント不足」。次いで多いのが、「人手不足(業務過多)」と「従業員の意識・取り組み不足」です。
限られた労働者数と時間の中で、長時間労働を削減しつつも高い成果を上げ、労働者の健康を守るためには、どのような具体策を講じればよいのでしょうか。
上記で紹介した調査の結果とともに、長時間労働の原因への対策を考えていきましょう。
仕事の指示に対する計画性や明確性はあるか、不必要な資料作成など無駄はないか、残業しなければ終わらない仕事量ではないかなど、見直す点をピックアップしてみましょう。残業をよしとする考えを持つ管理職であれば、効率よく働くことを評価する管理職に見直すことも必要でしょう。
人手不足だからこそ、退職者を増やすことはできません。そのためにも、仕事を断れない性格の労働者への負担が多くなっていないか、能力以上の仕事を任せていないかなどを見直した上で、個々人の能力に見合った仕事を決定します。
また、新人だけでなく中間層であっても、効率のよい仕事の進め方などの勉強会を実施したり、ITツールなどを導入したりして、時短や業務の効率化を図って生産性を高めましょう。場合によっては、研修などの学習機会を提供することも有益です。
長時間労働の根源である時間外労働に関して、大企業は2019年4月1日より、中小企業は2020年4月1日より上限規制が導入されます。労働時間の再確認や管理職の見直し、労働者への学習機会の提供などを行い、長時間労働対策を徹底しましょう。
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