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年末調整の時期が近くなり「扶養」という単語を目にする機会が増えている管理部門の担当者も多いかと思います。
扶養家族というと、ほとんどの人が専業主婦や未成年者をイメージするのが普通です。しかし、法律上の扶養家族の規定はこのイメージとは異なり、税法と健康保険法とでは扶養家族の名称が異なり、その要件も厳格に規定されています。したがって人事・労務担当者は、社員の年末調整や社会保険料計算を間違えないよう、法律上の扶養家族の意味を正しく知っておく必要があります。
法律上の扶養家族とは、「何らかの理由で就業が困難であり、かつ生活資金も不十分なため、生活を保護する必要がある家族」を指すとされています。具体的には未成年の子供、身体に障害があるため就業できない成年者、高齢の親などが法律上の扶養家族になります。
また、税法上の扶養家族と健康保険法上の扶養家族は別物です。前者は「扶養親族」と呼ばれ、後者は「被扶養者」と呼ばれ、扶養家族として認定される範囲や条件が異なります。
税法上、扶養親族とは「その年の12月31日現在、次の4つの要件のすべてに当てはまる人」としています。
・配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること
・納税者と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
健康保険法上の被扶養者とは、健康保険の被保険者が生活を保護している人のことですが、具体的には健康保険法や厚生労働省通知等で示されている下記の要件や条件を満たす人になります。
●被扶養者の範囲
1.被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係を含む)、子・孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
2.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
①被保険者の三親等以内の親族
②被保険者の配偶者(内縁関係含む)の父母、連れ子
③被保険者の配偶者(内縁関係含む)死亡後のその父母、連れ子
●被扶養者の認定要件(基本条件)
1.健康保険法で定められた親族の範囲内であること
2.主として被保険者により生計を維持されていること
3.被保険者に認定対象者を継続的に養う経済的扶養能力があること
4.認定対象者に収入がある場合は一定の収入要件を満たしていること
5.被保険者の他に扶養義務者が存在しないか、他の扶養義務者より被保険者の生計維持程度が高い(※)こと
※夫婦共働きの場合は、原則として子供の人数にかかわらず収入が多い方の被扶養者となる
6.後期高齢者に該当しないこと
●被扶養者の認定条件
1.認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の身体障害者の場合は180万円未満)で、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であること
2.認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の身体障害者の場合は180万円未満)で、かつ被保険者からの援助による収入額より少ないこと
なお、健康保険法における被扶養者は、原則的に配偶者、16 歳未満の子・孫、60 歳以上の父母等ならびに身体障害者とされています。これは、16 歳以上60 歳未満の認定対象者は労働能力があり、自ら収入を得ることができるので、被保険者の経済的援助がなくても自立して生活できるとの考えに基づいています。
このため、被保険者が被扶養者の認定申請をする際は、認定対象者の収入や扶養状況を確認できる書類を提出し、被保険者が生計費の半分以上を援助しなくてはならない状態にあるとの証明が必要となります。
扶養家族がいると変わるものは、税法上の扶養親族に対する「扶養控除」を受けられることと、健康保険法上では被扶養者の健康保険料納付が免除されることです。
特に税法上の扶養者控除が適用されると、扶養親族がいない場合と比べ納税者の所得税や住民税が安くなります。したがって、扶養家族がいる社員といない社員とでは税額計算や社会保険料計算が異なるので、人事・労務担当者は注意をする必要があります。
扶養家族がいる場合の扶養控除額は次の通りです。なお、扶養控除を受けられる「控除対象扶養親族」は、「その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の人」となっています。
●所得税の扶養控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳以上の扶養親族) | 38万円 |
特定扶養親族(19歳以上23歳未満の扶養親族) | 63万円 |
別居の老人扶養親族(70歳以上の扶養親族) | 48万円 |
同居の老人扶養親族(同上) | 58万円 |
●住民税の扶養控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳以上の扶養親族) | 33万円 |
特定扶養親族(19歳以上23歳未満の扶養親族) | 45万円 |
別居の老人扶養親族(70歳以上の扶養親族) | 38万円 |
同居の老人扶養親族(同上) | 45万円 |
たとえば年収400万円の自社社員に扶養家族として親が1人いる場合、所得税なら3万円台から6万近く、住民税なら3万円台から5万円近く税金が低くなります。
履歴書の扶養家族欄に記入する扶養家族数は、健康保険上の被扶養者数を記入するのが通例です。この際の扶養家族数は、既述の健康保険法上の被扶養者の認定条件を満たしていることに加え、他の健康保険組合・国民健康保険に加入していないことが条件になります。
また、年齢75歳以上の親は扶養家族数に含めません。
人事・労務担当者が中途採用者の履歴書から扶養家族数を確認する際は、上記に留意する必要があります。この確認を怠ると社会保険加入手続きを誤る恐れがあります。
年末調整においては、配偶者控除と扶養控除を混同しがちです。配偶者控除の上限額と健康保険の被扶養者の収入限度額も混同しがちです。また扶養控除においては、子供の年齢によってその取扱いが異なり、さらに同居していない親が扶養控除の対象になるケースもありますが、これもともすれば忘れがちです。社員数が多い企業ではこれらの処理が膨大になるのでミスが発生しやすいといわれています。ミスの発生は再処理という新たな負担を発生させます。人事・労務担当者はミスを発生させない仕組みを考えることも重要です。
※本記事の内容について参考にする際は、念のため専門家や関連省庁にご確認ください
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