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金融庁は、上場企業に義務付けられている「四半期報告書」を廃止し、証券取引所の規則にもとづく「決算短信」に一本化する方針を固め、早ければ来年の国会に法律の改正案を提出することを目指しています。
「四半期報告書」は、金融商品取引法の対象となる上場企業が、四半期ごとに作成する報告書です。2006年の証券取引法改正によって導入された「四半期報告制度」によって、四半期ごとに決算情報の開示が、義務付けられています。
四半期報告制度が導入される以前は、有価証券報告書と半期報告書を年2回開示することが原則でした。投資家が企業情報に触れる機会が欧米諸国に比べて少ないことから、四半期ごとの開示を義務付けたわけです。
米国では、1970年代から四半期開示が企業に義務づけられています。また日本でも、東京証券取引所がマザーズ市場を開設(1993年)した際に、取引所の独自ルールで四半期開示を始め、2003年には上場企業すべてに適用となりました。
しかし、あくまでも東京証券取引所のローカルルールで、開示する内容にはバラつきもありました。金融商品取引法にもとづく制度となったことで、より厳密な決算処理と情報開示が求められるようになっています。
しかし、投資家へ3か月ごとに企業情報を開示するためには、正確な四半期報告書の作成をしなければなりません。同時に四半期報告書には簡易版の「決算短信」の開示も求められています。これが企業の負担増となることから、経済界からは“四半期報告書廃止”を求める声も強くなっていました。
日刊工業新聞社が上場企業を対象に実施したアンケート調査(2021年)では、“四半期開示見直しを評価する”が全体の63.5%、“提出義務の一本化”が32.4%と、やはり多くの企業が四半期報告書の義務化は、大きな負担と感じていたことがうかがえます。
そのため、内容が重複する“報告書”と“短信”を一本化することで、企業の負担を軽減しようと、四半期報告書の見直しが金融審議会の作業部会で検討されてきたわけです。四半期開示の見直しは、岸田首相が目玉政策に位置づけ、2023年の通常国会での法改正を目指しています。
事業内容や四半期決算の情報まで網羅された四半期報告書は、投資家がその企業に投資するかどうかを判断する重要な情報です。日本が四半期報告書を廃止し、決算短信へ一本化するという方針は、はたして、海外投資家はどのように受け止めるのでしょうか。
もし、日本が企業の情報開示に後ろ向きであると受け止められたなら、日本の市場に対する海外投資家の期待感が薄くなるというリスクもあります。
たとえばイギリスやフランスも、四半期開示義務化を廃止しましたが、多くの上場企業は廃止後も任意で開示を続けています。日本でも、同じようなことになるのではないかと指摘する声もあります。はたしてどうなるのでしょうか。
四半期報告制度は、これまでに何度も見直されてきましたが、最近は財務情報だけでなく、人的資本やサスティナビリティへの企業姿勢など非財務情報の開示を求める投資家が増えています。
そのため、情報開示の姿勢が後退していると受け止められないように、有価証券報告書にリスク管理体制や人材価値を示す人的資本、企業のサステナビリティー(持続可能性)についての記載欄を新設するようです。
とくに重要視されているのが“人への投資”です。企業の人材育成方針、さらに女性管理職比率や男女間賃金格差などの情報開示の義務化も、作業部会の報告書に盛り込まれています。さて、この方針、海外投資家はどのように受け止めるのでしょうか。
四半期報告書作成の負担を軽減するために「決算短信」に一本化する方針ですが、新たな開示項目が加わったことで、むしろ企業の負担が「増えるのでは?」という声もあります。しかし、東京証券取引所の市場区分が変わり、日本の証券市場が新たな時代に向けて歩みだしたことだけは確かなようです。
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