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インターネット上のSNS利用については、利用者が誹謗中傷を受けて、場合によっては自殺に追い込まれるなど、一部で深刻な社会問題にまで発展しています。SNSでは以前から匿名性が問題視されており、責任の所在を明確にする仕組みづくりが求められていました。
こうした現状に対処するため、2022年10月1日付けで「改正プロバイダ責任制限法」が施行されました。ここではその内容と共に、SNSを利用する上での問題点について解説します。
SNSの利用者は、まずアクセスプロバイダを介してインターネットに接続し、さらにコンテンツプロバイダを通じてコメントの投稿や書き込みをしています。このコメントに誹謗中傷が含まれていて、別の利用者の社会的権利を侵害する場合には、加害者側は法的な責任を問われることがあります。
これを規定した法律が「プロバイダ責任制限法」で、2001年に成立して施行されました。この法律をもとに、被害者側はアクセスプロバイダとコンテンツプロバイダに対して、加害者を特定するための情報開示を求めることができます。
しかしプロバイダの中には情報開示に応じないケースもあり、応じたとしても手続きには非常に長い時間がかかり、場合によっては1年以上の期間と、仮処分や裁判に関わる多額の費用が必要になります。こうした現状を改善するために施行されたのが、今回の「改正プロバイダ責任制限法」です。
SNSでの誹謗中傷に追い詰められ、自殺にまで追い込まれるケースは決して少ない数ではありません。ニュースになった女子プロレスラーの事例のように、被害者は精神的な苦痛を味わったのち、自ら死を選ぶという最悪の結果にまで発展する場合があるのです。
SNS上で誹謗中傷のコメントを投稿した場合、当事者はもちろんのこと、リツイートなどによりそれを拡散した場合でも、名誉毀損罪や侮辱罪に問われる恐れがあります。これは被害者が一般人でも、いわゆる有名人や著名人の場合でも違いはありません。
一時的な感情で相手を批判したつもりでも、SNS上で論争になってしまうと、コメントがエスカレートして誹謗中傷につながることもあります。また、匿名性の強いSNSとはいえ、コメントの発信者は技術的に特定可能です。被害者の苦しみに対して、加害者にも相応の罰が待っていると考えたほうがよいでしょう。
SNSによる被害者が、加害者に関する情報を求めることを「発信者情報開示請求」といいます。
今回施行された改正プロバイダ責任制限法では、この点について大幅な見直しが行われました。
開示請求を行うことができる範囲の見直し
改正前のプロバイダ責任制限法はSNSの普及を考慮していなかったため、現在のようなログイン型サービスの場合、加害者の特定に必要なログイン時情報の開示が難しいという弱点を抱えていました。今回の改正で一つ目のポイントになるのが、この仕組みの改善です。
改正法では特別措置として、被害者はログイン時情報まで開示を請求することが可能になりました。請求できる情報の範囲が広がったわけです。いわば現在のSNSの広がりに対して、現行の開示条件を緩和する特別ルールが設けられたといえるでしょう。
新たな裁判手続きの創設
実際に誹謗中傷の被害を受けた場合、発信者情報開示請求を行うには裁判手続きが必要になるケースが一般的です。ところが今回の改正前には、最初にコンテンツプロバイダに対して発信者情報開示仮処分の申し立てを行い、次にアクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を起こすという、実に手間がかかる二段階の手続きが必要でした。
今回の改正では、条件によって難しい場合はありますが、被害者は「発信者情報開示命令に関する裁判手続」という一連の流れで情報開示を求められるようになりました。少なくとも今までのように手間と時間と費用がかかる手続きを簡略化して、一歩被害者に近づく法律になったといえるでしょう。
今回の改正プロバイダ責任制限法により、誹謗中傷の被害者からすると加害者の特定がしやすくなり、情報開示請求の手続きもハードルが低くなったと考えられます。
一方で、各プロバイダにとっては、情報発信者に関するデータを適正に管理・保存するという義務が生じました。
ただし、SNS上での意見と誹謗中傷との判別は難しい場合もあり、そこにプライバシー問題も関わるため、すべてを法改正で簡単に解決できるわけではありません。
今回の法改正では、施行後5年を目安に見直しを行い、必要な変更を実施するという条項も付け加えられています。
日本は諸外国に比較して、裁判手続きに時間と手間がかかるといわれています。しかしSNSをめぐるトラブルでは、被害者が苦しんだ末に自ら死を選ぶというケースもあるため、一刻も早く加害者を特定して相応の措置をとらなければなりません。
今回施行された改正プロバイダ責任制限法により、SNSによる誹謗中傷問題の取り扱いが一部変更され、被害者により近い法律が実行力をもったといえるでしょう。しかし今後もインターネットを取り巻く環境は変化を続けるはずです。その中で少しでも被害者を減らすため、常に新たな取り組みが求められることになるでしょう。
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