株主の権利を損なう恐れがあるとして、反対する投資家も多い。こうした中、Zホールディングスが実施を明言した。その理由は。

 2021年6月9日に産業競争力強化法等改正法が成立し、会場を設けずにオンラインのみで株主総会を開催する「バーチャルオンリー株主総会」の開催が可能になった。

 会社法では、株主総会の招集に際して株主総会の場所を定めなければならない。そのため、リモート参加と会場参加の両方を可能とする「ハイブリッド型」バーチャル株主総会を実施する企業が増えている。三菱UFJ信託銀行の調査によると、20年122社だった実施社数は、21年は約2.6倍の323社に増えた。

■ バーチャル株主総会(ハイブリッド型)の実施社数の推移
■ バーチャル株主総会(ハイブリッド型)の実施社数の推移
注:参加型はリモートで株主総会を視聴する方法。出席型はリモートで議決権を行使する方法

2021年6月の株主総会シーズンは、323社がバーチャル株主総会を実施。20年の約2.6倍となった
(出所:三菱UFJ信託銀行)

 バーチャルオンリー株主総会の開催は、上場企業が対象で、経済産業大臣および法務大臣の確認を受け、定款で定められていることが条件である。そこで22年の実施に向けて、いくつかの企業が21年の株主総会で定款変更を諮った。武田薬品工業、三井住友フィナンシャルグループ、LIXIL、リクルートホールディングス、ソフトバンクグループ、アイ・アールジャパンホールディングスなどである。

海外投資家が反対

 バーチャルオンリー株主総会は、課題が指摘されている。質問や動議などの株主権利を損なう恐れがあるからだ。実際、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、経営陣と株主の有意義な交流を妨げる可能性があるとして、21年6月10日に開催されたアイ・アールジャパンの定款変更議案に反対推奨を出した。アイ・アールジャパンは総会前に、「多くの株主の出席を可能にすることにより、有意義な交流を促進する」という見解を示して反論。議案は賛成率89.48%で可決されたものの、懸念を示す投資家が一定数いることも明らかになった。

 株主総会や取締役会の運営を企業に助言する三菱UFJ信託銀行・法人コンサルティング部の大谷敏嗣氏は、「バーチャルオンリー株主総会は、一部の海外投資家が導入にネガティブ。この先、導入企業が増えていくかどうかは、動向の確認が必要」と話す。

 こうした中、バーチャルオンリー株主総会の22年の実施を明言した企業がある。ヤフーやLINEを傘下に持つZホールディングスだ。21年6月18日に開催した株主総会で、会場出席の株主から「コンピュータの知識がない私は出席できなくなってしまう」という声が上がった。これに対して川邊健太郎社長は、「遠隔地の株主も平等に参加できるようになり、多くの質問も受け取れる。開催コストの削減にも寄与する」と説明し、理解を求めた。定款変更議案は、90.03%の賛成率で可決された。