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人事じゃなくても知っておくべき「裁量労働制」とは? みなし残業とどう違う?

公開日2018/11/15 更新日2018/11/15

厚生労働省が不適切なデータ処理で「裁量労働制で働く人の方が一般の労働者より労働時間が短い」と誤った結論を国会に報告してしまったことで話題となった裁量労働制。そもそも裁量労働制とはわかりやすくいえば何なのでしょうか。

導入できる職種や要件、残業代や休日出勤はどうなるのか、メリットとデメリット、みなし残業やフレックスとの違いなど、裁量労働制について人事が必ず知っておくべきことをみていきましょう。

関連記事:みなし残業制度を導入する際に注意すべき点とは?

裁量労働制とは簡単にいうと何?

裁量労働制とは、労働時間を労働者の裁量にゆだねる制度です。労働時間は実際に働いた時間に関係なく、「あらかじめ労使で定めた時間働いた」とみなします。たとえば、裁量労働制でみなし労働時間が「8時間」とされていれば、ある日は5時間働き、翌日は10時間働いたとしても問題なく、時間管理だけでなく仕事をする時間帯や出退勤は自由です。

裁量労働制の種類と導入できる職種、導入要件

裁量労働制を取り入れられるのは法令により定められた、

専門業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制

の2種類のみです。

専門業務型裁量労働制

専門型裁量労働制で認められる業務

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を労働者の裁量に大幅にゆだねる必要がある業務として、法令により定められた次の19の業務です。

  1. 新商品、新技術の研究開発、または人文科学、自然科学の研究
  2. 情報処理システムの分析、設計
  3. 新聞、出版の記事取材および編集、放送番組制作の取材および編集
  4. 衣服や室内装飾、工業製品、広告などのデザイン
  5. 放送番組や映画などのプロデューサーまたはディレクター
  6. コピーライター
  7. システムコンサルタント
  8. インテリアコーディネーター
  9. ゲームソフトの制作
  10. 証券アナリスト
  11. 金融商品の開発
  12. 大学における教授研究
  13. 公認会計士
  14. 弁護士
  15. 建築士
  16. 不動産鑑定士
  17. 弁理士
  18. 税理士
  19. 中小企業診断士

専門業務型裁量労働制の導入要件

専門型裁量労働制を導入するためには、次の内容について労使協定を定め、労働基準監督署に届け出ます。

  1. 対象業務(上記の19業務の中から)
  2. みなし労働時間
  3. 対象業務を遂行する手段および時間配分の決定などに関し、労働者に具体的な指示をしないこと
  4. 労働時間の状況の把握方法と、労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉のための措置の具体的な内容
  5. 労働者からの苦情を処理するための措置の具体的な内容
  6. 有効期間(3年以内)
  7. 4.と5.についての記録を有効期間中およびその後3年間保存すること
  8. 時間外労働・休憩時間・休日労働・深夜業の規定が就業規則と異なる場合はその内容

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制で認められる事業場・業務・労働者

企画業務型裁量労働制で認められるのは、「事業場」「業務」「労働者」が以下の要件を満たした場合です。

  1. 企画業務型裁量労働制で認められる事業場
    1. 本店・本社
    2. 事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
    3. 本店・本社の指示を受けることなく、事業の運営に大きな影響を及ぼす決定を独自に行っている支社・支店
  2. 企画業務型裁量労働制で認められる業務
    1. 事業の運営に関する業務
    2. 企画・立案・調査および分析業務
    3. 適切に遂行するためには遂行の方法を労働者に大幅にゆだねる必要がある業務
    4. 遂行の手段および時間配分の決定について使用者が具体的な指示をしない業務
  3. 企画業務型裁量労働制で認められる労働者
    1. 対象業務を適切に遂行するための知識・経験をもつ労働者
    2. 対象業務に常に従事している労働者

企画業務型裁量労働制を導入するための手順

企画業務型裁量労働制を導入するためには、専門業務型裁量労働制を導入するのと比較して要件が厳しく、以下のような手順を踏まなければならないとされています。

  1. 労使委員会を設置する
    労使委員会の委員の半数は、労働者の過半数を占める労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には労働者の過半数を代表するものが指名されなければならないとされます。
  2. 労使委員会で決議する
    労使委員会で5分の4以上の多数決をもって以下の内容を決議します。
    1. 対象業務
    2. 対象労働者の範囲
    3. みなし労働時間(1日あたり)
    4. 対象労働者の健康・福祉確保の措置
    5. 対象労働者の苦情処理の措置
    6. 労働者の同意を得なければならないこととその手続き、不同意労働者に不利益な取扱いをしてはならないこと
  3. 労働基準監督署に決議を届け出る
  4. 対象労働者に個別に同意を得る
  5. 制度を実施する


残業代・休日労働・深夜業・休憩時間はどうなる?

裁量労働制が導入されても、残業代、休日労働、深夜業、休憩時間に関しては、労働基準法の規定が一般労働者と同様に適用されます。

残業代

残業代は、みなし労働時間に対して適用されます。みなし労働時間が法定労働時間である1日8時間、週40時間を超える場合には残業となりますので、法定労働時間を超える分について割増賃金が支払われなければなりません。

休日労働

裁量労働制であっても法定休日に労働した場合には、割増賃金が支払われなければなりません。

深夜業

裁量労働制であっても午後10時~午前5時までの深夜に労働した場合には、割増賃金が支払われなければなりません。

休憩時間

休憩時間はみなし労働時間に対して適用されます。みなし労働時間が6時間を超え8時間までであれば45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間が与えられなければなりません。

裁量労働制のメリット・デメリット

裁量労働制はどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。導入する企業および労働者の双方からみていきましょう。

裁量労働制のメリット

導入する企業にとってのメリット

裁量労働制を導入することの企業にとってのメリットは第一に、人件費が予測しやすくなることです。裁量労働制なら休日や深夜以外で残業代が発生することがありませんので、人件費を早い段階で算出することができます。また、それに伴い労務管理の負担も軽減します。労働者一人ひとりの残業代を計算する必要がなくなるからです。

労働者にとってのメリット

裁量労働制を導入することの労働者にとってのメリットは、勤務時間が短縮される可能性があることです。仕事の能率を高め、与えられた仕事をみなし労働時間より短い時間で終わらせられれば、勤務時間を短くすることができます。また、裁量労働制なら出退勤も自由ですので、自分のペースで仕事ができることにもつながるでしょう。

裁量労働制のデメリット

導入する企業にとってのデメリット

裁量労働制を導入することの企業にとってのデメリットは、導入に手間がかかることです。専門業務型裁量労働制なら労使協定を結ばなければなりませんし、企画業務型裁量労働制なら労使委員会を設置の上、決議を行わなければなりません。これらの手続きを負担と感じる企業もあるでしょう。

労働者にとってのデメリット

裁量労働制の労働者にとってのデメリットは、長時間勤務が常態化してしまう可能性があることです。与えられた仕事が終わらせられなければ退勤することができないからです。みなし労働時間を大幅に超える時間働いても残業代は出ませんので、労働者の不満が溜まる場合もあるでしょう。

裁量労働制とみなし残業・フレックスはどう違う?

裁量労働制と混同しやすい制度として、みなし残業やフレックスがあります。裁量労働制がみなし残業やフレックスとどう違うのかをみてみましょう。

裁量労働制とみなし残業の違い

みなし残業制度は、あらかじめ決められたみなし残業時間について、仮に働いていなくても残業代を支払うものです。この点において、みなし労働時間を採用する裁量労働制と似ています。しかし、みなし残業制度の場合は、実際の労働時間がみなし残業時間を超えたら超過分の残業代が支払われるのに対し、労働裁量制では、実際の労働時間がみなし労働時間を超えても残業代が支払われないことが違う点です。

裁量労働制とフレックスの違い

フレックスタイム制度は、定められたコアタイムに就業していれば、出退勤時間を自由に決められる制度です。ただし、裁量労働制と違いフレックスでは「みなし労働時間」がありませんので、所定労働時間は働かなければなりません。したがって、出勤時間が遅くなれば退勤時間もその分遅くなります。

まとめ

裁量労働制は、うまく活用できれば企業にとっても労働者にとってもメリットがある制度です。しかし、企業にとって導入のハードルはやや高く、また労働者にとっても長時間勤務が常態化するなどのリスクがあります。導入にあたっては、メリットとデメリットをよく考え合わせ、慎重に検討する必要があるでしょう。

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