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賃金上昇やキャリアアップの期待がかかるリスキリングですが、「産休・育休中のリスキリングを後押しする」という岸田文雄首相の参院本会議での答弁に、「育児の実態をまったく理解していない」など波紋が広がっています。
ここで、あらためてリスキリングがどのように受け止められているのかを整理しておきましょう。
転職・キャリアノウハウメディア「すべらない転職」(アクシス株式会社運営)が実施した「リスキリングに関する意識調査」*によると、言葉を知っている人の割合は5割で、8割がリスキリングを「してみたい」と思っているようです。
リスキリングとは「新しい職業に就くため、あるいは今の職業でこれから必要となる新たなスキルを習得する・させる」(経済産業省の定義)ことで、政府は個人のリスキリング支援に「5年で1兆円」を投じる方針を示しています。
働きながらのスキル習得に、金銭的な支援を受けてチャレンジできるのであれば、積極的にリスキリングに取り組むビジネスパーソンも増加しそうです。しかし、「リスキリングに関する意識調査」の結果は、そう単純なものではありません。
「産休・育休中のリスキリング支援」については、約6割が「無理」と回答しています。「育休は休みではない」「育児中は寝る時間もとれない」「育児経験のない人の発想だ」などの批判の声も寄せられました。
もっとも、約4割が育休中でもリスキングは可能と回答していますから、産休・育休中のスキル獲得について前向きに受け止める意識があることもうかがえます。
リスキリングの効果の一つに、賃金アップが掲げられていますが、リスキリングをしたにもかかわらず、「年収アップにはつながらない」の回答が約7割を占めるなど、期待通りの効果が得られていないことが明らかになっています。
政府がリスキリングを後押しするのは、賃金アップや雇用の流動化を促進し、経済活性化につなげていくことが目的です。
賃金アップは、ビジネスパーソンにとっての最大の関心事です。それが、7割ものビジネスパーソンが実感していないとなれば、高まりつつあるリスキリング熱が一気に冷めてしまうことも考えられます。
リスキリングによる効果が実感できないのは、学ぶ内容、習得するスキルが、社会が求めるニーズと合致していない可能性もありそうです。
では、雇用の流動化についてはどうでしょうか。
資格取得のための各種スクールの中でも、昔から人気が高いのは英会話スクールですが、ビジネスのグローバル化に伴い求められる語学力のレベルも高まっており、ただ英会話スクールに通っただけではビジネスに役立ったり、転職に有利になるほどのスキルは身につかないかもしれません。
また、最近はプログラミングやWebデザインなど、ITスキルを学ぶスクールにも人気が集まっていますが、なんとなくITスキルのスクールに入って学んだからといって、IT人材として評価されるわけでもありません。
リスキリングへの注目度が高まるなかで、ビジネスパーソンの学習意欲が高まっていることは歓迎すべきことです。しかし、社会が何を求めているのか、そして自分自身が将来、どのように活躍したいのか、明確なキャリアビジョンがあってこそ、リスキリングの効果を実感できるのではないでしょうか。
*【調査概要】
調査対象:日本国内で働く20代~50代の男女 300名
調査年月:2023年1月30日
調査方法:インターネット調査(クラウドワークス)
■参考サイト
PR TIMES|約6割が「育休中のリスキリングは無理」と回答/リスキリング(学び直し)に関する意識調査を実施
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