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2021年3月から利用できるようになった「マイナ保険証」。いよいよ今年(2024年)12月2日をもって、従来の健康保険証の発行が終了となります。一方、医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は9.9%のみ(2024年6月時点。厚生労働省発表)で、周知されているとは言い難い状態です。このようななかで、企業の労務担当者はどのようなことを知っておくべきでしょうか?
本記事では「マイナ保険証」の基本について解説します。
「マイナ保険証」とは、マイナンバーカードを医療機関・薬局で健康保険証として利用することです。 マイナ保険証は2021年3月から利用できるようになり、2024年8月現在は従来の健康保険証とマイナ保険証の両方が利用できます。そしていよいよ今年12月2日から、従来の健康保険証は新規発行・再発行ともに行われなくなります。なお、12月2日時点で有効な健康保険証は、最大1年間有効とする経過措置が設けられています。
マイナンバーカードを健康保険証として利用する際は、医療機関や薬局の受付に設置された顔認証付きカードリーダーを使います。マイナ保険証によって、これまでよりも正確な本人確認や過去の医療情報の提供に関する同意取得などを行うことができます。また、マイナポータルで医療費・薬剤情報・特定健診情報をいつでもどこでも閲覧できます。
マイナンバーカードは、デジタル社会における公的基盤です。そして、マイナ保険証は「医療DX」の実現のために導入されました。 マイナ保険証の運用にあたり、医療機関や薬局には「オンライン資格確認等システム」が導入されます。「オンライン資格確認」とは、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで「資格情報」の確認ができる仕組みのことです。医療機関や薬局では、患者が加入している医療保険や自己負担限度額を確認する(=資格確認)必要があります。
従来の健康保険証による資格確認は、健康保険証に記載された記号・番号・氏名などの情報を医療機関システムに入力して行います。この方法は入力の手間がかかり、患者を待たせてしまうといった問題があります。そこで「オンライン資格確認」が開発・導入されることになったのです。
オンライン資格確認等システムの導入により、医療機関や薬局の窓口で、患者の直近の資格情報等を確認できるようになり、期限切れの健康保険証での受診で発生する過誤請求や手入力による事務コストを削減できます。また、マイナンバーカードによる本人確認で、医療機関や薬局において特定健診等の情報や診療・薬剤情報を閲覧できるようになり、より良い医療を受けられます。このように、マイナ保険証によって「医療DX」が実現できるのです。
医療機関を受診した際に、薬剤情報や健診結果の提供に同意すると、自身の情報に基づいた総合的な診断や重複する投薬を回避した適切な処方を、医師などから受けることができます。
医療機関で高額な医療費が発生する場合、「高額療養費制度」で医療費の上限額を超えた分が支給されます。支給申請には通常、高額な医療費を一時的に自己負担したり、役所で限度額適用認定証の書類申請手続きをしたりする必要があります。しかし、マイナ保険証を利用すればこれらが不要になります。
マイナ保険証を利用すると、マイナポータルから保険医療を受けた記録を参照できます。領収証を保管・提出する必要がなく、確定申告の医療費控除申請の手続きを簡単に行うことができます。
従来の健康保険証は、就職・転職・引越しなどで医療保険者や住所が変わった場合、保険証を切り替える必要があります。しかし、マイナ保険証なら新しい医療保険者への加入手続きが完了次第、保険証を切り替えることなく、マイナンバーカードを引き続き保険証として利用できます。
2023年4月より、医療機関のマイナ保険証の対応が義務化されました。厚生労働省の発表「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」(2024年5月26日時点)によると、全国の病院・医科診療所・医科診療所・薬局でマイナ保険証を利用できる割合は90.7%です。
つまり、ほとんどの医療機関ではマイナ保険証の対応が可能ですが、少数ながらも利用できないところがあります。 ただし、すでに義務化にはなっているので、いずれ利用割合はさらに高まるでしょう。
マイナ保険証として使用するためにマイナンバーカードを持ち歩く頻度が増えれば、紛失リスクが高まります。例えば、マイナ保険証をカードリーダーに置いたまま取り忘れる、というようなミスは起こり得るでしょう。万が一、紛失してしまっても一時利用停止ができますが、再発行するまでは不便かもしれません。
マイナ保険証は、利用にあたっては初回利用前に事前登録する必要があります。登録方法は以下の3つです。
(1)医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダーから登録する
(2)「マイナポータル」から登録する
(3)セブン銀行ATMから登録する
なお、それぞれの登録方法で事前に準備しておかなければならないことが異なります。詳しくは、厚生労働省の公式サイト内にある「マイナンバーカードの健康保険証利用方法」または「マイナンバーカードが健康保険証等として利用できます!」で確認しましょう。
マイナ保険証の使い方は簡単です。顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをセットし、本人確認(顔認証または暗証番号)をするだけで保険資格の確認が完了します。
なお、利用にあたって注意すべきことは、前述の「デメリット」でもご説明したとおり、持ち歩くことで紛失リスクが高まるため、取り扱いに気を付けましょう。 マイナンバーカードに付いているICチップには、カードの表面に記載された氏名・住所・生年月日などの最小限の情報のみ記録されています。税や年金など、プライバシー性の高い情報は記録されていません。
また、マイナンバーカードを利用する際には暗証番号が必要です。そのため、もしマイナンバーカードを紛失しても、すぐに個人情報が漏洩するというわけではありません。しかし、マイナンバーカードが再発行されるまでは不便になります。
なお、マイナンバーカードを紛失してしまった場合は、24時間365日体制で電話による一時利用停止の申請ができます(電話:0120-95-0178 通話料無料)。
マイナ保険証はマイナンバーカードを所有していることが前提となります。では、マイナンバーカードを持っていない場合、健康保険証は今後どうなるのでしょうか?
従来の健康保険証は、今年(2024年)12月2日から新規発行および再発行が終了し、今後はマイナンバーカードでの保険証利用を基本とする仕込みに移行されます。12月2日時点で有効な健康保険証は、最大1年間有効とする経過措置が設けられており、期間中はマイナ保険証と従来からの保険証の両方が使えるため、利用者は保険証を選択できます。
しかし、2025年12月2日以降は保険証として利用できるのはマイナ保険証のみとなります。 そのため、いずれはマイナ保険証に切り替えるのが望ましいでしょう(経過措置期間中に発行済保険証の有効期間が到来した場合や、転職・転居などで保険者の異動が生じた場合は、該当の現行保険証は失効)。
健康保険証の発行終了後、マイナ保険証や有効な健康保険証を持っていない場合は、医療機関の受信時や薬局では「資格確認書」で資格確認を行います。この「資格確認書」は、マイナ保険証を持っていない人を対象として、本人の申請によらず、加入する医療保険者から送付される予定です。
マイナ保険証に切り替わるにあたり、企業の労務担当者など手続きを行う人がすべきことがいくつかあります。ここでは代表的なものをピックアップしました。
医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は9.9%のみ(2024年6月時点。厚生労働省発表)で、未だに認知度は低い状態です。そこで、まずは労務担当部署(担当者)がマイナ保険証に関する新制度を理解しておくことが重要です。自社従業員からの問い合わせに対して適切に回答できるようにしておきましょう。
新制度の概要と仕組み、従業員自身が行う手続きや利用方法、データなどの新たな管理方法、全体の業務フローなどを確認しておきます。
マイナ保険証への切り替えは、基本的には従業員自身の手続きが大前提となります。マイナ保険証制度の仕組み、メリット、事前登録と利用方法、従来の健康保険証の取扱いなどをしっかり周知させるために、説明資料の料作成や社内ネットでの情報展開を行うとよいでしょう。
マイナ保険証への切り替えはもちろん、従来の健康保険証の取り扱いに関するマニュアルを作成・見直ししておくと、従業員からの問い合わせへの対応や周知をスムーズに行うことができます。
今年12月2日から従来の健康保険証は発行されなくなり、来年(2025年)12月2日以降は保険証として利用できるのはマイナンバーカードのみとなります。企業の労務担当者はマイナ保険証についてしっかり把握・理解し、自社の従業員に周知させ、滞りなく手続きできるようにしておきましょう。
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