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試用期間が延長される理由は?

公開日2019/07/14 更新日2023/01/16
試用期間が延長される理由は?

企業の大半が「試用期間」を設けています。しかし、中にはその目的や意味を深く認識しないまま習慣的に設けている企業も少なくありません。試用期間は運用を一歩誤ると労使紛争に発展し、自社の評判を低下させるリスクを内包しています。人事担当者が知っておくべき試用期間の基礎知識と押さえておくべきポイントは何でしょうか。

試用期間とは

試用期間の定義

試用期間とは、採用した新入社員に対し、入社後の勤務状況を通じてその社員の適格性などを判断するための仮採用期間のことです。

試用期間中の労働契約は「解約権留保付労働契約」と呼ばれ、企業には本採用を拒否する権利(解約権)が与えられていますが、解雇や退職に関しては基本的に本採用と同じ扱いをしなければなりません。

試用期間の目的

試用期間の目的は、採用した社員の適格性判断にあります。

履歴書・職務経歴書による書類選考、筆記試験、面接選考など通常の採用プロセスでは、採用担当者と求職者との接触機会が限られるため、企業がその求職者の資質、潜在的能力、業務遂行能力などを的確に把握するのは困難なケースが大半です。

このため、試用期間を設けて本採用社員と同一条件で働いてもらい、その期間中に求職者の業務適応性、業務遂行能力、仕事へのモチベーション、協調性などを見極める必要があるとされているからです。

また、試用期間の対象となる社員は正社員、パート・アルバイト、契約社員など雇用形態は問われません。したがって、例えばコア業務に就く正社員は3カ月、ノンコア業務に就くパート・アルバイト社員は2週間など、雇用形態に応じて試用期間の設定を変えるのも可能です。

この試用期間の設定に明確な法的規制はありません。一定の合理性があれば、その企業の特性に応じた期間設定が可能となっています。

ただし、試用期間中の社員は身分的に不安定な立場に置かれ、本採用社員より精神的プレッシャーが強いので、試用期間の設定と運用においては、下記に留意する必要があるでしょう。

・試用期間は3―6カ月が通例

試用期間は仮採用社員の適格性を測るのが目的なので、特に正社員の場合は3―6カ月が通例になっています。6カ月を超える試用期間設定は、民法90条の公序良俗違反に問われるおそれがあります。

・処遇は本採用社員と同等に

仮採用社員の労働契約は「解約権留保付労働契約」なので、本採用社員と同等の処遇をしなければなりません。

例えば、都道府県労働局長の許可なく法が定める最低賃金を下回ることはNGですし、残業や休日出勤をさせた場合は所定の割増賃金を支払わなければなりません。雇用保険や社会保険などの加入要件を満たしていれば、企業は加入手続きをしなければなりません。

・評価は適正に

試用期間中は、チェックシートなどで仮採用社員の勤務状況を定期的に確認し、指導や教育を適切に行う必要があります。その結果、仮採用社員が適格性に欠けると判断する場合も、その理由を明確に説明し、自発的に改善する機会を与えるなどの努力が企業には求められます。

試用期間に関する法律

試用期間に関して、通常の労働契約に基づく社員と異なる法律は制定されていません。したがって、仮採用社員に対しても労働基準法・最低賃金法等の労働関連法令、雇用保険・社会保険の手続きは試用期間の初日から本採用社員と同様に適用されます。

ただし、仮採用社員に対しては、下記の4項目が試用期間中の特例として法令化されています。

(1)試用期間中は、労働基準法第20条に定める解雇予告の規定は適用されない。ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く(労働基準法第20条)。

試用期間中であっても入社から14日を過ぎた時点で解雇する場合は、通常の解雇と同様の手続きを踏まなければなりません

(2)平均賃金の算定期間中に試用期間がある場合は、その日数及びその期間中の賃金は、算定の期間及び賃金の総額から控除する(労働基準法第12条3項)。なお試用期間中に平均賃金を算定しなければならない場合には、試用期間中の日数と賃金を用いて算定する(労働基準法施行規則第3条)

(3)使用者が都道府県労働局長の許可を受けた時は、試用期間中の者における最低賃金は所定の最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額をもって適用する(最低賃金法第7条)。

2008年7月の改正最低賃金法施行により、それまでの「適用除外」から「減額特例」へ変更されました。具体的には、下記の要件を満たし、かつ試用期間中に減額対象労働者の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に、入社から6カ月間、最低賃金額の20%までの減額が認められています。単なる経営不振を理由とした減額は認められないので要注意です。中央最低賃金審議会の調査でも、試用期間中の減額特例を認められたのは極めてまれなケースに限られています。

・減額特例対象となる試用期間が、当該期間中または当該期間の後に本採用とするか否かの判断を行うためのものとして、労働協約、就業規則又は労働契約で定められているものであること

・申請のあった業種または職種の本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であること

・申請のあった業種または職種の本採用労働者に比較して、試用期間中の労働者の賃金を著しく低額に定める慣行が存在すること

(4)試用期間の長さや内容等は、労働条件の絶対的明示事項(労働基準法施行規則第5条1項1号でいう「労働契約の期間に関する事項」に該当する)であるため、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して試用期間に関する事項を書面で明示しなければならない(労働基準法第15条1項)。また就業規則の記載事項(通常、試用期間は全従業員に対して一律に定めることとなるので、労働基準法第89条でいう「その他その事業場の全労働者に適用される定めに関する事項」に該当する)でもあるので、使用者は就業規則に試用期間に関する事項を記載しなければならない。

2018年1月以降は、求人広告や公共職業安定所での求人申し込みの際において、試用期間の有無と、試用期間がある場合にはその期間と期間中の労働条件を明示しなければならなくなりました(職業安定法第5条の3、職業安定法施行規則第4条の2)

なお、これら試用期間に関する法律については、専門的な法解釈が必要になるので、自社の個別案件においては労働問題に詳しい弁護士や自社と顧問契約をしている社会保険労務士に相談すると良いでしょう。

試用期間中に出来る事

試用期間中の社員との労働契約は、すでに述べた通り解約権留保付労働契約です。また、試用期間は仮採用社員の適格性を見極めるための期間であるので、その企業が「自社社員としての適格性に欠ける」と判断した場合は、試用期間中に解雇できます。

ただし、試用期間中の解雇は労働契約法16条により「客観的に合理的な理由があり、それが社会通念上相当と認められる場合」に限られています。

「客観的に合理的な理由」としては、下記の例が挙げられます。

・業務遂行能力が会社の求めるレベルより著しく劣っている場合

・他社員との協調性がない場合

・無届の遅刻・欠勤を繰り返すなど素行不良が改まらない場合

・法律違反行為があった場合

・経歴詐称等本人の履歴に重大な虚偽があった場合

また「社会通念上相当と認められる場合」とは、例えば「遅刻・欠勤を繰り返す、業務遂行能力が著しく劣っているなどの仮採用社員に対し、企業が指導・研修等の適切なフォローを行ったにもかかわらず、改善の兆しがない場合」が挙げられます。

試用期間中に解雇する場合の手続きは、試用開始から解雇までの日数により、2通りに分かれます。

・試用開始から14日以内の解雇

この場合は、前述の労働契約法16条の規定に合致していれば、労働基準法21条に基づき即時に解雇できます。解雇予告手当等を支払う必要もありません。

・試用開始から14日超の解雇

この場合は、労働基準法20条に基づく解雇手続きが必要です。具体的には解雇に際しては30日前に解雇予告をしなければなりません。また、解雇予告をしない場合は解雇までの日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。

例えば、解雇予告をせずに解雇する場合は平均賃金の30日分を、解雇日の10日前に解雇予告をした場合は平均賃金の20日分を支払わなければなりません。

試用期間を延長する際の注意点

「試用期間が終了したが、当社が必要とする業務遂行レベルに達していない。しかし、当人は一所懸命努力しているので、このまま解雇するのは忍びない。もう少し猶予を与えて当人に本採用のチャンスを与えたい」との思いから、試用期間の延長をする場合があります。

試用期間の延長に関しては法令上の定めはないようですが、例えば判例では、試用期間の延長が許されるのは「試用期間満了時において、社員として不適格と認められるが本人の今後の態度によっては登用してもよいとして試用の状態を続けていく時、または、即時不適格と断定することはできないが適格性に疑問があり、本採用することがためらわれる相当な事由があるため、なお選考の期間を必要とする時」(大阪読売新聞社事件 大阪高裁 昭和45年7月10日)とされています。

このため、試用期間を延長する際は、一般に以下の条件クリアと対象者の同意が必要とされています。

・就業規則に試用期間延長要件等試用期間の延長に関する規定が盛り込まれている

・雇用契約書に試用期間を延長する可能性がある事項が盛り込まれている

・試用期間を延長するにあたっての明確な理由がある

・延長期間が社会通念上妥当な長さである(当初の期間を合わせ概ね1年以内)

これらの条件をクリアせずに対象者の同意を得ても、「試用期間延長の強要」と見做され、労使紛争に発展するリスクがあります。

なお、同意の取り付けは口頭ではなく、必ず同意書の対象者の署名・捺印を求めましょう。同意書があれば後々のトラブル防止に役立ちます。

試用期間が延長される理由3選

「試用期間を延長するにあたっての明確な理由」として、社会通念上認められるのは、次の3事例とされています。

(1)仮採用決定時に期待した成果が出ていないが、本人のためにもう少し様子を見たい

書類選考、筆記試験、面接選考などの採用プロセスで「この人材なら当社に貢献してくれるだろう」と仮採用しても、人によっては新しい職場にうまく溶け込めず、本来の能力を発揮できないケースがあります。この場合の試用期間延長は「明確な理由」とされます。

(2)欠勤が度重なるなどで試用期間中の出勤日数を満たしていない

雇用契約書等に明記された出勤日数を満たしていない場合は、「明確な理由」があるとされ、試用期間延長の対象になります。

(3)試用期間中に配置転換をしたので、改めて適格性を判断したい

例えば「試用期間中の業務遂行能力は当社が求めるレベルに達していない。しかし、勤務評価からは別の潜在能力の可能性が認められるので、その能力を活かせる職場に配置転換し、改めて適格性を判断したい」といったケースでは、試用期間延長が「明確な理由」とされます。

まとめ

試用期間は「採用ミスマッチ防止が目的」ともいわれています。

つまり、書類選考、筆記試験、面接選考など通常の採用プロセスで、採用ミスマッチを完全に防止するのは困難であり、その最後の関門として試用期間を設けることがわが国の労働慣行と社会的に認知されているといえます。

したがって、試用期間を採用プロセスのゴールとして積極的に活用するのは当然ですが、その運用は労働関連法令・判例、厚生労働省の雇用関連ガイドラインなどに則り適切に行わなければなりません。また、試用期間中の業務内容・範囲・レベルの明文化、試用期間延長や本採用拒否の基準明文化、試用期間中の指導・研修の記録・保存なども重要です。これらの遵守が試用期間に伴う労使紛争リスク防止策にも繋がるでしょう。

※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁等にご確認ください

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