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アメリカのトランプ大統領を、日本政府が令和最初の国賓として招いたのが5月末です。ゴルフ、大相撲観戦、炉端焼き、さらに天皇・皇后両陛下による歓迎行事や会見、晩餐会などの手厚いもてなしぶりが話題となりましたが、国賓で迎える基準や待遇とは、どういうことなのでしょうか。
外務省に、外国の要人をもてなす場合の基準(招待プログラム)があります。まず、日本政府が招待者の宿泊滞在から移動・通信・警護費用などすべて滞在費を負担する公式訪問と、訪問者がすべての経費を負担する非公式訪問の2つがあります。
日本政府が費用を負担する「公式訪問」には、招聘者の社会的地位や目的に応じて、国賓、公賓、公式実務訪問賓客、実務訪問賓客、外務省賓客に分けられます。
「国賓」の対象となるのは、国王や大統領などの元首で、皇太子や首相、副大統領などは「公賓」となり、内閣総理大臣との首脳会談や会食、そして天皇陛下との会見や宮中晩餐会などの行事が行われます。
国賓と公賓は、日本と訪問者の国との友好親善関係の増進が目的で、公式実務訪問賓客、実務訪問賓客、外務省賓客は、安全保障や経済連携といったビジネスライクな交渉が主な目的のため、天皇陛下との会見や宮中晩餐会などは催されることはありません。
では、国賓と公賓の“おもてなし”に違いはあるのでしょうか。ほとんど違いはありませんが、違うのは、国賓は歓迎行事を宮内庁が仕切り皇居宮殿前で行うほか、宮中晩餐会が開かれますが、公賓は外務省が仕切り歓迎行事は迎賓館で行い、晩餐会ではなく、宮中での午餐会となる点です。
ところで、国賓として外国の要人を招く場合、日本政府が負担する費用は、本人だけでなく随行者(最大10人分)を含めた宿泊や移動、食事、警備の費用3泊4日分で、1回で2,500万円ほどかかるとされています。
まさに、最高の“おもてなし”となりますから、費用負担も、天皇・皇后陛下の負担も相当なものとなります。国賓として招待するかどうかは、政府が閣議を開いて決めますが、現在は年間1~2人に限定されているようです。
そもそもは、外国要人を招く場合、国賓と公賓の2種類しかありませんでしたが、莫大な予算がかかることと、両陛下の負担軽減にもなるということで、1989年に行事やおもてなしの中身を簡単にした公式実務訪問賓客が設けられました。
ちなみに、トランプ大統領が前回(2017年11月)来日した時は、国賓ではなく公式実務訪問賓客待遇でした。
ところで、トランプ大統領は、日本に国賓として招かれた後、イギリスからも国賓として招かれています。日本では、マスコミも含めて、異常なほどの歓迎ぶりでしたが、イギリスでは、トランプ大統領を国賓として迎えることに、反対の声も多く上がっています。
もっとも、日本での、手厚いおもてなしぶりには、自国のアメリカからも、「単なる観光旅行か」という指摘もあったほどです。
国賓として外国要人を招くのは、国と国との友好親善をはかるため、というのが本来の目的です。ただ、時として、政治的思惑が絡む場合があることは否めません。
事実、日米首脳会談後の会見で、トランプ大統領が、日米間に横たわる貿易問題では、「8月(参院選後)に、いい結果が出るだろう」と発言し、その横で、安倍首相が苦虫をかみつぶすような表情をしていたのが、とても印象的でした。
政府としては、北朝鮮情勢や貿易問題などの懸案が山積するなかで、安倍首相とトランプ大統領との蜜月ぶりを内外にアピールする狙いだったようですが、思惑が外れ、むしろ、これからの貿易交渉の難しさを露呈する結果となってしまったようです。
国賓や公賓といっても、国民にはそれほど関係がないように思っていた人も多いでしょうが、実は1回の国賓待遇で、2,500万円ほどの国費が使われていたとすれば、やや穏やかではありません。しかし、政府が公式招待する外国賓客に対する接遇基準が決まっていることは、企業の接待交際費のルールづくりの参考になるかもしれません。
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