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近年、職場における「ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)」の問題が注目を集めるようになっています。ジェンダーとは社会的な意味での男女間における性区別という意味です。
性に関するハラスメントというとセクシャルハラスメント(セクハラ)をイメージする人も多いかもしれません。しかしジェンハラは、セクハラとは大きく異なるハラスメントです。
今回はジェンハラとは何か、セクハラとどこが違うのか、防止するにはどうすればよいのかなどについて解説していきます。
ジェンハラとは、男らしく、女らしくなど、社会通念上の性区別をもとに、あるべき行動や言動をとるよう圧力をかけるハラスメントのことです。例えば女性に対しては、女性であることを理由にお茶くみをさせたり、「女のくせに」などと発言したりすることはジェンハラに該当します。同様に、体を使う作業をすべて男性社員だけにやらせること、「男なんだから頑張れ」などと発言することは、男性に対するジェンハラになります。
他にも、男性と中年女性の社員は「さん」付けで呼ぶのに若い女性社員だけ「ちゃん」付けで呼ぶ、中年の女性社員を「おばさん」と呼ぶ、結婚した女性を「おくさん」、出産した女性を「おかあさん」などと呼ぶ、等もジェンハラに含まれます。
職場における「いじめ」の事案としてジェンハラが取り上げられる場合も多いです。
また近年では、LGBTに対するジェンハラも問題視されています。LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーに該当する人のことです。これらの人に対して差別的な発言をして苦痛を与えることは、職場における重大なハラスメントとみなされます。
セクハラは、性的な行為や言動による嫌がらせを中心とする概念です。一方、ジェンハラは性別に関する固定観念や、性別に基づく過度な役割分担意識に基づいた差別とそれによる嫌がらせのことを指します。男女雇用機会均等法の第11条では「性的な言動」に対する規制について明記されていますが、主としてセクハラを想定した内容で、ジェンハラの防止について直接的に規定しているわけではありません。セクハラの場合は社会的な認知度も高く、企業としても法制度に基づいて厳格に対処するようになっていますが、ジェンハラ防止に関しては取り組みが十分に進んでいるとはいえないのが現状です。
本人に悪気やハラスメントをする意図がなくても、実はジェンハラに該当するというケースが少なくありません。
例えば、労働政策研究・研修機構の報告書によると、女性社員が「結婚はまだなの?」「若いうちが花だね」などと発言されるという「いじめ被害」にあったという調査結果が報告されています。また、化粧や髪形について意見をいうことも、心理的な苦痛を与える恐れがあるのでハラスメントの対象です。男性に対しても、「男は強くなければならない」という価値観のもと、男性であるという理由だけで力仕事や残業をやらされるというケースが多いです。
LGBTに対するジェンハラとしては、男性が女性の恰好で出勤したら、職場で「オカマ」などと呼ばれる、そのことが原因でいじめに遭う、話し方が女性っぽいことを笑われて不快に感じた、などの例があります。日本社会ではLGBT・セクシャルマイノリティに対する理解がまだ乏しく、社会的な啓発活動を今後さらに進めていく必要があるでしょう。
ハラスメントを防ぐためには、各人が日ごろから他者に対する思いやり、配慮を持って行動し、発言することが重要です。自分の行動や発言が、固定観念に基づく男女観に基づいたものではないか、相手を傷つけることがないかを日ごろから自問自答することが望まれます。
企業が行うジェンハラ対策としては、社内で行う各種研修の中でジェンダー意識やLGBTについて理解・勉強する機会を設けることが有効策の1つです。また、職場内でジェンハラが起こった場合の対処方法や相談先などを、掲示や冊子等を通して従業員の間で周知化させておくと、従業員のジェンダーに対する意識を高め抑止力につながります。その際、どのような言動や行動がジェンハラに該当するのかを明記することで、従業員は気を付けるべき事柄を具体的に知り、学ぶこともできるでしょう。
男女雇用機会均等法では、ジェンハラ自体が措置義務の対象となっているわけではありません。ただ、ジェンハラの防止に取り組むことは、従業員の就労意欲を向上させ、ハラスメントを理由とした離職を防ぐことにつながるので、企業として対策を充実させることは大きなメリットがあるといえます。
ジェンハラは、社会通念上における性差を背景としているので、ハラスメントをしている当人にも罪の意識や悪気がないことも多いです。自分の行動や言動が、職場の人に対してジェンハラによる精神的な苦痛を与えていないか十分に注意する必要があります。
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