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AIやRPAというワードはここ数年で大きな盛り上がりを見せている。ビジネス系メディアでも取り上げられることが多くなってきているので、この言葉を少なからず目にしたことがある方も多いだろう。
AIやRPAが人間の代わりに仕事をするようになると多くの仕事がなくなる、というようなことも言われているが、今後、管理部門や士業の仕事はいったいどうなっていくのだろうか?今回は業務効率化のツールの筆頭であるRPAの大手、RPA テクノロジーズ株式会社の最高執行責任者である笠井直人氏にインタビューを行い、RPAの普及に伴い管理部門や士業の未来がどうなるのか考えてみたい。
RPAの現状と今後の市場見込み「RPA BANKに掲載されていたデータ(https://rpa-bank.com/rpanews/3304/)によると2016年度のRPA市場は8億円ほどで、3年後の2019年度の規模は60億程度の予測となっています。」と、笠井氏は云う。実際の肌感覚としても、概ねその程度の印象とのことだ。笠井氏の話によると、企業規模500名以上規模では何らかの取り組みを始めているというが、検討を進める企業の規模に関してはその限りではない。「弊社にも先日、20名規模の地方企業からも問い合わせがあり、企業の規模にかかわらずRPA導入検討の話をいただきます。」と、業務効率化を図りたい中小企業からの引き合いも増加している。「海外の導入状況についてはハッキリしたいことは言えませんが、RPAツールはもともとヨーロッパ発のものが多いので、その点では日本よりも進んでるのではないでしょうか」とのことだ。
AIは頭脳、RPAは手足「AIとRPAは一緒のくくりで話されることが多いですが、似て非なるものです。人に例えるならAIは頭脳、RPAは手足。AIは膨大なデータを分析したり、予測したり、人の頭脳の代替です。一方、RPAツールは人が手足を使ってPCの操作をする代わりを担います。」と、笠井氏は云う。AIは、データを基に、何かを判断したり予測したりを人の代わりにすることができるが、PCの操作を代行することはできない。一方RPAツールは、PC上の人間の操作を自動的に行わせるものであり、ある種のマクロである。設定した操作を間違えなく、スピーディーにこなすことができるのがRPAだが、その操作内容は事前に人が設定する必要がある。上記の説明を聞くと、AIとRPAとはまったく異なるものということがわかる。
RPAはシステム開発とは異なるのか?従来のシステム開発とRPAの違いについて、笠井氏はこう説明する。「RPAはある種のマクロのようなものであり、ある決められた処理をするという意味ではシステムと似た部分があるが、業務の粒度と費用対効果によってどちらが適しているかが異なります。」
システムは、粒度が大きく、導入後の費用対効果の高い業務の一連のプロセス全体を効率化することに向いていて、これまでもそういった業務の効率化にはシステム開発が行われてきた。しかし、頻繁にルールが変更されるような業務や、ルール化されていない新規事業に関する作業では、費用対効果が悪くシステム化が見送られてきたことも多い。また、ボリュームの少ない業務については、そもそもシステム化の起案すらされないことも少なくないだろう。RPAツールは、粒度が低く、システム導入のコストをかけるまでもないような業務にも対応可能だ。むしろそういった業務にこそ向いていると考えてもよい。RPAを活用すると、システム化されず、いまだに人が対応している業務の一部を効率化することが可能なのである。
管理部門(間接部門)や士業の仕事への影響RPAツールに向いている業務は、システム間のデータ連携作業やwebからの情報収集、同一性のチェック、数値集計、アプリの操作など6つの領域分類される。その中でも特に大量かつ繰り返しの操作に適しているという。
管理部門の業務の中でも上記に当てはまる作業はRPAに向いているといえる。例えば、経営企画の業務の場合、競合調査などに必要なwebからの情報収集や、経営層への報告のための数値集計・レポート作成などの業務で活用が可能である。人事総務の仕事の場合、「入退社の処理」の一部や「採用応募者の処理」などが自動された実績があるとのことだ。
ただし、笠井氏によると、RPAはある特定の業務、たとえば決算処理、を丸ごと自動化するのには向いておらず、その業務を細かく分けて、適した業務を自動化する方が良いという。「RPAは、業務を操作ごとに細分化してその一部を自動化するイメージで導入すると、うまく機能することが多いです。より業務の効率を高めるには、RPAツールの操作や特性の理解と、業務全体のプロセスの理解がある方がマネジメントするとよいと思います。」会社によって管理部門の業務プロセスが異なるため、どの業務が自動化されるか断言はできないが、管理部門のほとんどの業務の中に代行可能な操作はあると考えてよいだろう。
管理部門はAI・RPAとどのように付き合っていけばよいのか?今後、労働人口の減少に伴いAIやRPAの普及は進んでいくだろう。そうなると管理部門や士業の仕事はなくなってしまうのか?その問いに対して笠井氏はこう答える。「前述のとおり、RPAは業務全体を自動化することにはあまり適していません。AIも同様だと思います。部分的に正確かつスピーディーに処理をすることは可能ですが、どのようにRPAを活用するかは人が決めなくてはなりません。RPAやAIが当たりまえになってくるころには、管理部門の仕事が、業務全体を把握してロボットのマネジメントをする業務に変化していくことが考えられます。それは管理部門に限ったことではないかもしれません。」管理部門に人がいなくなることはないが業務の種類は間違えなく変わりそうだ。これまでのルーティンワークから解放され、より上流の企画業務や、業務をデザインしロボットをマネジメントする業務などにシフトしていくのである。
ルーティンワークから解放されるということは、要求されるスキルや能力も変化することを意味する。どの業務のどの操作をロボットに任せるのかなど、ロボットのマネジメントをする役割はRPA普及に伴い増えていくため、マネジメントの能力は今後も要求されそうだ。また、ビジネスプロセスのマネジメントも重要になる。漫然と目の前の作業を行うのではなく、業務全体を把握して個々の作業の意味を理解することがより重要となっていくだろう。
RPAテクノロジーズ社が描く未来80年代から90年代にかけて、1人1台のPC使用が当たり前になっていく中、PCの操作を覚えるのは必然であった。ここ10年ではスマートフォンやタブレットの操作も同様だ。社会人全員が使えるわけではないが、少しの知識があれば使えるということで言えば、マイクロソフト社のexcelの関数も同じである。笠井氏は云う、「プログラミングが必要ないRPAツールを扱うにはC言語やJAVAの知識は必要ありません。Excelの関数のように、慣れればビジネスパーソンの誰もが使えるものです。近い将来、RPAツールが一般化し、働く人の多くがロボットのマネジメントができるようになると、ロボットの数が増え、ロボットに求めることもより複雑化、高度化していきます。それに対して、ソリューションも高度になっていき、ロボットにまかせられることの幅がどんどん広がっていくようになるでしょう。」ゆくゆくは人間の社員に数体のロボットが部下としてつくのが当たり前になり、新卒社員にもロボットの部下がつくような時代が来るだろう。面倒な操作はロボットにまかせて、判断するための時間や、企画や業務効率化などのクリエイティブなことに人の時間を割くような世界になる。
生物学者のダーウィンの言葉にもあるように、強くても賢くても、世の中の変化に対応できないものは生き残れない。資格や知識が生かされる管理部門や士業の世界でも、今後はそれだけでは生き残れない可能性がある。管理部門で生き残る=必要とされ続けるために必要なことは、もしかしたら変化に対応し続けることなのかもしれない。
(取材・文/株式会社MS-Japan 有山智規)
【プロフィール】 笠井 直人(かさい なおと)RPAテクノロジーズ株式会社 最高執行責任者東京外国語大学を在学時にRPAのテクノロジーに触れ、ビズロボジャパン株式会社(現RPAテクノロジーズ株式会社)にインターンとして参画。大学を卒業後、2015年より同社へ入社。RPAサービス「BizRobo!」の導入支援や、RPAを活用した事業開発に従事。営業・導入支援・マーケティング等を含む全領域で活動。2016年7月に設立した、一般社団法人日本RPA協会の協会委員に就任。
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