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AI/RPA時代の管理部門の業務を分類
AI/RPA時代がついに到来しました。
昔から言われていた「すべての管理系事務業務がロボットにより行われ、ヒトが作業をしなくてもよい時代」です。
しかし、実際はまだまだAIの精度はそれほど高くなく、すべてを完全にロボットに任せられる時代までは時間がかかりそうです。
言うならば、「全業務手作業時代」、「ERP大規模システム時代」につづく、「フレキシブルRPA時代」が到来したものであり、次のフェーズとして「全自動・完全AIロボット時代」が来ると考えられ、現在はそれに向けた過渡期であるともいえます。
AI/RPA時代の管理部門の業務は、大きく3つに分かれます。
AI/RPA時代にもまだ一定の業務が“しばらく”残る
1の「将来的にはAI/RPA化できる業務」は、さらに2つに分けられます。
①典型的にRPAを入れやすいデジタル業務
②定常的業務、事務的業務でありながら、今のAI/RPAの機能範囲ではまだ十分自動化できない業務(数年後には自動化される業務)
経理部門
①各部署から提出されたエクセルシートを集計し別のシステムへ入力するような業務等、経理系デジタル情報間での集計・転記業務
②サプライヤー等から送られてくる紙の納品書や請求書にもとづき社内システムへ手入力する業務等、経理系のペーパーからデジタルへの転記業務
人事部門
①社員から提出された勤怠システムに入力できない情報を集計し、別の管理システムに入力するような業務等、人事系デジタル情報間での集計・転記業務
②手書き又は打刻されている勤怠表を集計し、勤怠管理システムに入力しなおす業務等、人事系のペーパーからデジタルへの転記業務
総務部門
①様々なオフィス関連のベンダーからメール等で届く情報を集計しなおし、デジタル伝票化し、勘定システムに仕訳入力する業務等、総務・施設系デジタル情報間での集計・転記業務
②様々なオフィス関連のベンダーから紙で届く使用量計算書や請求書等を集計し、仕訳伝票を作り、購買管理システム又は勘定システムに仕訳入力する業務等、総務・施設系のペーパーからデジタルへの転記業務
新たに生まれてくる、AI/RPAに業務を教える業務とは?
2の「AI/RPAで業務の自動化を設計・設定、変更する業務」は、AI/RPAというものが導入されることにより新たに生まれてきた業務です。これはある意味では、今まで新しく社員や派遣社員が入社したときに、人がやり方を教えるという業務に分類されるものです。
「なんとなくわかるよね、やりながら考えてみて」と言えたものが、教える相手がRPAというロボットになるために、対象となる業務一つひとつを完璧に教えなければならなくなった業務です。この業務は1の業務を具体的にRPA化するという業務であり、部門別の違いはそれほどありません。業務自体の種類としては以下のように分類されます。
①RPAへの指示をする前に、RPAが物事を考えずに機械的に業務をこなせるよう、その業務を行う対象物の認識をしやすくする(標準化する)業務
②RPAへの指示書をRPAが理解できる言葉(コード)で作る業務
③RPAが想定した通りに動かない、エラーが起きたときに、その原因を探り、修正する業務(②のRPAへの指示書を修正する場合と、①の業務対象物の初期設定を修正する場合とがあります)
経理業務の場合で、各部門から提出された売上情報のエクセルシートを集計し、別のシステムへ入力するような業務について、実際にRPAで行うケースを考えてみます。
まず、実際にどのような表題のエクセルシートをどのような順番で開き、具体的にどのセルのデータをどのようにコピーし、どこに貼り付け、集計し、またそれをコピーしてどのシステムを開いてどのように貼り付けるかという一連のプロセスをフローチャートにし、そのプロセスがどのような場合にも当てはまるのかを再確認します。これが①の分類です。
次に、作ったフローチャートを、実際にRPAが理解できる専門のコードで指示書にするという業務があります。これが②です。
その内容に変更があったときに、その専門コードの指示書を書き換えるという業務、RPAがうまく思った通りに動かないときに、指示書を見直し書き換えるというような、システムエンジニア的な業務があります。また、そもそもRPA向けの指示書に書いた通りで動くように、業務対象となるもと情報の設定を修正するということもあります。これらが③になります。
AI/RPAではできない、新しいアイデア・取組みを考え、組織に根付かせる業務とは?
3の「AI/RPAではできない、何か新しいアイデア・取組みを考え、そしてそれを組織に根付かせるという業務」は、本来、管理系各部の課長・マネージャー以上の階級の人が主要業務としてやらなければならなかった業務です。
その業務というのは必ずしも明確に定義されるものではなく、どちらかというと業務目的のみが定義され、そのためにどのような業務を行うか、自ら定義しなければならないものです。
日本の企業の場合、実際にそこまでできている会社というのは比較的少ないように思います。
実際の業務としては以下のようなものがあります。
経理部門
これまでの最重要業務目的が「財務諸表・決算書を早く正確に網羅的に作成する」ことと、「予定通りに正確に網羅的に顧客へ請求をし、取引先に支払いを行う」という事務的なことであったものが、今後は「経営陣が損益・財務状況をより実態に即した形で把握・理解するために必要な情報を常に作成し提供できる体制を作る」ことや「資金繰り・キャッシュフローをより安定化させ最大資金効率を達成する」こととなります。
そのため、必要な業務は、たとえば「今よりもより実態に即した情報を常時把握するための方策を考え、そして現場にそれを行ってもらうためのコミュニケーションを取る」ことや「より安く安定した資金繰り実現のために投資家・銀行と継続的にコミュニケーションを取り関係構築を図る」というようなものになります。
人事部門
これまでの最重要業務目的が「給与計算を早く正確に行う」「社員の採用をする」ことであったものが、今後は「従業員のパフォーマンス・価値貢献を最大化する」こととなります。
そのため、必要な業務は、たとえば「従業員のパフォーマンスをフェアに評価するための人事制度構築」「従業員が最大パフォーマンスを出すための制度や環境整備」「従業員のパフォーマンスが落ちている時や辞めそうな時のフォローやサポート施策・実行」など多岐にわたってきます。
総務部門
これまでの最重要業務目的が「会社運営のために必要な施設・ファシリティ等が適時適切に稼働し会社運営が妨げられないようにする」ことであったものが、今後は「より従業員のパフォーマンス向上又は顧客からのブランドイメージ向上に資する施設・ファシリティ設計し導入・運営・管理する」ことに変わってきます。
そのために必要な業務は、例えば「従業員が快適に働けるためのオフィスや休憩スペースの環境整備および設置」や、「従業員の一体感を作るための企画および実施」や「来客者に魅力を感じてもらうための会議室設計や顧客対応の品質向上」などになります。
次ページ AI/RPA時代の管理部門の各業務にはどんなスキルと資質が必要なのか?
AI/RPA時代の管理部門の各業務にはどんなスキルと資質が必要なのか?
AI/RPA時代の管理部門の各業務には、次の表のようなスキルと資質が必要だと考えられます。
今後AI/RPAでなくなっていく業務をだれがやるのか?
これら3分類は、同じ部署であってもそれぞれ必要なスキルレベルと、社内人財で持つ必要度が異なってきます。
まず、「典型的にRPAを入れやすいデジタル業務」に必要なのは、従来型の事務スキルで足りるものではありますが、最初にRPAにより置き換わる業務です。RPAの全面完全導入にはどの会社も時間がかかるとはいえ、いずれなくなっていく業務をなくなるまで社内の人財が行うのか?というのは考えるべきポイントだと思われます。
また、「定常的業務、事務的業務でありながら、今のAI/RPAの機能範囲ではまだ十分自動化できない業務」も、今時点の技術ではRPA化・自動化はできませんが、数年以内には自動化ができるようになると思われます。この業務も同様になくなることを想定すると、社内の人財にこれをなくなるまで場繋ぎで行わせるのか?ということを考える必要があると思います。
いつかはRPAに置き換わる業務は、早いタイミングで事務アウトソーシングに出してしまうというのが一つのソリューションになります。
これらの業務のために大切な正社員を使うのは得策ではなく、かつその社員の将来に向けたスキルアップの機会を失わせることにもなります。
一方で、これらの業務はRPA化していくために、標準化していかなければならないという新たな要件も生まれてきます。
事務アウトソーシング会社に発注すると、事務アウトソーシング会社が自らの業務遂行のために業務の標準化を進めてくれます。また、一部の事務アウトソーシング会社はRPAのアウトソーシングも行っており、事務アウトソーシングを受けつつ、その後のRPA化も一緒に引き受けるケースもあります。
そうすると、事務的な業務をRPA化の移行期からRPA化までのすべてを任せる事ができ、正社員は今後の主要業務となってくる、AI/RPAではできない、企画設計といった業務への取り組みを早く始めることができるようになります。
新たに生まれるAI/RPAで業務の自動化を設計・設定、変更する業務をだれがやるのか?
RPAの導入によって新たに、「業務の自動化を設計・設定、変更する業務」が生まれてくることは説明しました。これは、RPAというロボットに伝えるための特別な言語が必要になりますので、今までの事務業務だけをやってきた方には少し難しい業務になります。もともとからある程度システム的なスキルを持つ人に特別な講習を行うことで、ようやくそれを遂行することができるようになります。
一方で、このスキルと業務というのは、最初にRPAを導入する際にはとても大切なスキルではありますが、社内にひと通り導入してしまった後には、正社員が常にやらなければならないような業務ではなくなります。そのため、これも同様にRPAに関するスキルと業務を短期的視点で正社員に学ばせるのか?という論点が出てきます。
こちらも同様に、業務ごと外部化・アウトソーシングというのがひとつのソリューションになります。そもそも新しくスキルを身につけなければならないにも関わらず、それが永続する強みにならないことを、正社員にやらせるというのは得策ではありません。
逆にアウトソーシング会社は、そればかりをいろいろな顧客向けに行っているものですので、確実に高いスキルと失敗も含めた経験を持っています。RPAプロジェクトは大切なものであるからこそ、外部のアウトソーシング会社、特にRPAだけではなく事務アウトソーシングも行っている会社に全面的に任せ、自社では次世代に確実に求められる業務に早い段階から取り掛かるというのが必要になってくると思います。
正社員は今後の管理部の価値を問われる本質的な業務への早期取り掛かりが重要
「AI/RPAではできない、何か新しいアイデア・取組みを考え、そしてそれを組織に根付かせる業務」は、元々から各管理部に求められていた事でありながら、今後は最も大切な、「管理部の価値を問われる本質的な業務」となってきます。
会社の将来のことを常に考え、ほかの部署のことも十分理解し、コミュニケーションをとっている人でなければできないこの業務こそ、正社員が最も注力すべき業務となります。
そしてこれこそが、最も会社の将来の価値を作る源泉となるものとなります。この業務に従事する人財に必要なスキルは、「管轄分野における現状課題を発見する力」「管轄分野におけるあるべき姿を描く力」「あるべき姿を導入するために現場と折衝し、導入していく力」などが必要になってきます。これらのスキルは簡単に身に就くわけではありません。ですから、早い段階からこのような業務に取り掛かり、徐々にスキルも身に着け、会社になくてはならない人財になっていかなければなりません。
これらのうち、参考となる知識的な部分、ツールおよびソリューション的な部分は、コンサルティング会社に依拠することもできます。私たちNOCもそれに資するソリューション提案も様々させていただいています。しかしこれらを包括的・総合的に考え、会社をよりよい方向へ引っ張っていくのは、やはり正社員の業務・ミッションになっていきます。
【執筆者プロフィール】
岡崎 透
NOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社 業務コンサルティング本部 常務執行役・本部長
新日本監査法人、KPMG FAS、ブーズアレンハミルトン、三井物産、PwC Advisory等を経てNOCアウトソーシング&コンサルティングへ参画。500社以上の日系・外資系企業に対し、財務デューディリジェンス、オペレーションコンサルティング、人事コンサルティング、PMI、M&Aアドバイザリー等を実施。NOCではBPOの前段階における業務の見直し、BPOによる効率化可能性の検証、RPA導入アプローチ及び導入に係るプロジェクトをマネジメントしている。
関連URL:https://www.noc-net.co.jp/
(記事提供元:NOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社)
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