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就業規則を変更する際に知っておきたい注意点

公開日2020/01/29 更新日2020/01/30
就業規則を変更する際に知っておきたい注意点

残業規制、有休義務化、副業解禁、在宅勤務制度導入、ハラスメント対策など、働き方改革推進を背景に労働条件の変化が一段と激しくなっています。これに伴い労働関連法制の改正頻度も増しており、企業は2-3年に一度は就業規則を変更しなければならない状況になっています。では就業規則を変更する際はどのようなタイミングで、どのような手続きをするべきなのでしょう。また、総務担当者はどのようなことに注意を払わなければならないのでしょうか。

就業規則に記載しておく事項

就業規則は、どの企業のそれも基本的に次の構成で作成されています

第1章 総則就業規則の目的、就業規則を適用する社員の範囲など、就業規則の全体的要件を記載
第2章 採用・異動
採用、異動など雇用要件を記載
第3章 服務規律
社内機密保持、パワハラ・セクハラ禁止など社員が職務上守るべきルールを記載
第4章 労働時間、休憩・休日
始業・終業時刻、休憩時間、出勤日・休日など勤務ルールを記載
第5章 休暇・休業
有給休暇、育児・介護休業などの付与要件を記載
第6章 賃金
賃金算定基準、賃金体系、昇給基準、手当の種類・額、賞与支給方法、給与支払日・支払い方法などの処遇要件を記載
第7章 定年・退職・解雇
これらに関する要件を記載
第8章 安全衛生・災害補償
会社が労災防止や社員の安全確保のために行う事項、健康診断等社員の健康保持に関する事項、労働災害が発生した場合の補償規程などを記載
第9章 職業訓練
社員の業務スキル向上、キャリア形成などのために実施する教育訓練に関する要件を記載。
第10章 賞罰
社員の表彰要件、懲戒処分要件などを記載
第11章 雑則
就業規則変更手続きなどを記載

このように就業規則の記載事項は多岐にわたります。これらの記載事項は「絶対的必要記載事項」、「相対的必要記載事項」、「任意的記載事項」の3事項に分かれています。

<絶対的必要記載事項>

始業時刻、終業時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の決定・計算方法、賃金の締切り・支払い時期など、就業規則共通の基本的記載事項11項目。就業規則に絶対的必要記載事項が1項目でも抜けている場合は法律上の不備になります。

<相対的必要記載事項>

退職手当に関する事項、賞与・最低賃金額に関する事項、安全衛生に関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項、福利厚生に関する事項、賞罰に関する事項など、当該事業所固有の記載事項です。

例えば在宅勤務制を導入している事業所の場合、社員が業務で使用する自宅の私有パソコンの通信費負担は会社なのか社員なのかを、相対的必要記載事項として就業規則に明記しておく必要があります。

<任意的必要記載事項>

出張旅費規程、休職規程、採用・異動・昇給・昇進等に関する規程など、就業規則への記載が企業の任意に委ねられている事項です。

どういうときに就業規則を変更する?

就業規則は、合併・会社分割・事業譲渡等の事業再編、雇用・勤務形態多様化、裁量労働制導入、経営状況悪化による賃下げ・昇給凍結など様々な理由で変更が必要になります。

変更理由は一見バラバラで無法則に見えます。このため「就業規則変更のタイミングが分からない」と悩んでいる総務担当者は少なくないようです。ところが、これらの理由は「社内規則変更への対応」、「労働関連法改正への対応」、「雇用関係助成金制度への対応」の3類型に集約できます。この法則性を知っておけば、就業規則変更のタイミング掴みはそれほど難しくありません。

<社内規則変更への対応>

勤務時間の変更、教育訓練制度の変更、業績評価制度の変更、新たな公的資格取得奨励制度導入、福利厚生制度の変更などの社内規定を変更する場合は、それを反映した就業規則に変更する必要があります。

<労働関連法改正への対応>

労働関連法が改正された場合は、直ちにそれを反映した就業規則に変更する必要があります。これを怠るとその企業の就業規則は法律上の不備になるので、総務担当者は注意が必要です。

近年は過労死問題、残業代未払い問題、パワハラ・セクハラ問題など様々な労働トラブルが顕在化し、社会問題化しています。このため、労働関連法の改正も頻度を増しており、法改正に対応した職場環境改善と就業規則変更が必要になっています。

<雇用関係助成金制度への対応>

雇用関係助成金制度の大半は、就業規則提出が申請条件の1つになっています。したがって助成金制度適用を申請する場合は、事前に申請する助成金制度の適用要件を反映した就業規則に変更しておく必要があります。

就業規則変更と関係の深い助成金制度には、次のものがあります。

・社員の雇用継続を図る「雇用調整助成金制度」

・社員を新規採用する場合の「特定求職者雇用開発助成金制度」、「トライアル雇用助成金制度」

・雇用環境の改善を図る「職場定着支援助成金制度」、「人事評価改善等助成金制度」

・障害者の雇用環境整備を図る「障害者雇用安定助成金制度」、「障害者職業能力開発助成金制度」

・社員の仕事と家庭の両立を図る「両立支援等助成金制度」

・社員のキャリアアップ・人材育成を図る「キャリアアップ助成金制度」、「人材開発支援助成金制度」

・労働時間・賃金・健康・福利厚生の改善を図る「職場意識改善助成金制度」、「中小企業最低賃金引上げ支援対策費助成金制度」

就業規則変更のフロー

労働契約法第9条は、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定めています。したがって社員と合意をせず、企業が勝手に就業規則の変更はできません。

就業規則の変更は、

 1.就業規則変更方針決定

 2.就業規則変更案作成

 3.社員代表者からの意見聴取

 4.就業規則変更届の提出

 5.変更後の就業規則周知

の手順で行います。

手順1
就業規則変更方針決定
現行就業規則と職場・雇用環境、組織・事業、直近の労働関連法・判例などとの間に齟齬・乖離がないかを点検し、就業規則変更方針を取締役会で決めます。
手順2
就業規則変更案作成
就業規則変更方針に沿って、変更すべき規程をピックアップし、「変更の合理性」を明確化しておきます。これは、変更後の労使トラブルを未然に防ぐために重要です。この後、変更する規程を新しい就業規則へ盛り込みます。
手順3
社員代表者からの意見聴取
就業規則の変更においては新規作成時と同様、社員の過半数を代表する労働組合または社員代表者の意見聴取が義務付けられています。意見聴取後、その内容を「意見書」にまとめ、合意の証として労働組合または社員代表者の署名・捺印を得ます。
手順4
就業規則変更届の提出
変更した就業規則に新旧対照表と意見書を添えて所轄労働基準監督署へ届け出ます。
手順5
変更後の就業規則周知
変更後の就業規則は社員への周知が義務付けられています。


就業規則は所轄労働基準監督署へ届け出れば有効になるのではなく、社員への周知終了によって初めて有効になります。このため周知に際しては、変更前と変更後の就業規則を比較できるように工夫し、変更理由も明示しておくと就業規則変更を社員に受け入れてもらいやすくなり、周知も早期に終了するでしょう。

周知方法は事業所の休憩室等社員が共通で使用する場所への備付け、書面での一斉通知、社内メール通知など方法は自由です。

なお、自社に事業所が複数ある場合は、変更届を「事業所ごと」に所轄労働基準監督署へ提出する必要があります。ただし、変更が全事業所共通であれば、変更届を本社所轄の労働基準監督署へ一括提出できます。

従業員の反対があっても変更できるのか

経営状況悪化などで賃下げや昇給凍結をせざるを得なくなり、そのために就業規則を変更しようとすると、変更に反対する社員が出るのが通例です。社員にとっては、労働条件低下を容認する就業規則変更になるからです。

このような変更を企業の一存でできるものなのでしょうか。

これについて、労働契約法第9条は「使用者は、労働者の合意なく就業規則を変更し、労働者の不利益となる内容で労働条件を変更することはできない」と不利益変更を禁止しています。一般に「就業規則の不利益変更禁止ルール」と呼ばれている規定です。

一方、同法は第10条で「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」と明示しています。

同条が明示している「就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なもの」を、判例では

 1.就業規則変更によって労働者が被る不利益の程度

 2.使用者側の変更の必要性の内容・程度

 3.変更後の就業規則の内容自体の相当性

 4.代償措置その他関連する労働条件の改善状況

 5.労働組合等との交渉の経緯

 6.他の労働組合や従業員の対応

 7.同種事項におけるわが国社会における一般的状況等

を総合考慮して判断すべきである、と具体的に示しています。

したがって、これら7項目の内容が合理的なものなら、社員個々の同意を得なくても、つまり反対する社員がいても、判例上は「就業規則の不利益変更」ができると解釈されています。

ただ、法律の要件をみたせば「就業規則の不利益変更ができる」とは言え、これを楯に不利益変更をゴリ押しすると、経営者と社員の信頼関係崩壊、社員のモチベーション喪失などの経営リスクを招きかねません。このリスクを回避し、社員に不利益変更を受け入れてもらうためには、やはり「社員個々の不利益変更に対する同意取付け」が重要とされています。そのために総務担当者は、次の配慮と対策が必要と言われています。

・説明方法

朝礼などで社員一斉に同意を呼び掛けるのではなく、社員一人一人との個別面談で内容を説明し、同意を得る

・変更内容の説明の仕方

就業規則の不利益変更の規定の説明では「なぜ不利益変更を行わなければならなのか」を、経営状況を含め明確かつ具体的に説明する(自社の事情を率直に打ち明けることにより社員の疑心暗鬼が解け、同意を得やすくなる)

・説明内容を記録する

個別面談の内容は記録し、同意を得た証拠として保管する

・経過措置を取る

就業規則変更により社員に急激な不利益が発生しないよう、不利益変更を段階的に実施するなどの措置を取り、不利益変更後の経営リスクを少しでも減らす

まとめ

就業規則の変更に際しては企業の独断ではなく、「就業規則変更方針決定、就業規則変更案作成」の変更手続きに入る前に、社員から広く意見を聞き、「就業規則変更の社内世論」を形成しておくことが何より重要です。そうしておけば、変更内容が社員に有利であれ不利であれ、それは「会社発展のため」と社員の理解と協力が得られ、社内に波風を立てることなく就業規則変更ができるでしょう。

※本記事の内容について参考にする際は、念のため専門家や関連省庁にご確認ください

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