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従業員の些細なミスに対してのクレームが延々と続き、暴言や威嚇する発言、金品や土下座を要求するなどのカスハラ(カスタマー・ハラスメント)が大きな社会問題となっています。実際に、どのようなカスハラの事例があるのかを見ていきましょう。
UAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が、2017年10月に発行した「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査結果」によると、約5割が「迷惑行為が増えている」と回答し、レポートには現場からの悲痛な肉声も収められています。
・商品の場所を案内したら、遠回りさせられたと怒りだし、「バカ、死ね。辞めろ!」と怒鳴られた
・商品の在庫を尋ねられ、在庫が無い旨をお伝えしたところ、「売る気がないんか、私が店長だったらお前なんかクビにするぞ」と延々怒られた
・惣菜の価格が間違っていると言われ確認に行こうとしたら、待たせるなと怒鳴られ3時間説教され続けた
・お客様が購入した包丁の切れ味が悪いとのことで返品対応した際、「高い商品買ったのに研いでも切れない」と、その包丁をむきだしでこちらの顔まで近づけてきた
・商品不良のため返金を実施した際、丁寧に謝罪しても納得されず、土下座での謝罪を要求された
耳を疑いたくなるような現場の声ですが、人格を否定するような暴言や、威嚇、脅迫、長時間の拘束、さらにはSNSで実名をさらしての誹謗中傷など、現場では悪質なクレームに相当悩まされているようです。
NHKの「クローズアップ現代+」では、このカスハラ問題を2回放映しましたが、放送できなかった分までまとめた「カスハラ モンスター化する『お客様』たち」が、文芸春秋から発売されています。
その中から、「商品の入れ方がおかしい」というクレームから「慰謝料100万円よこせ」と要求されたコンビニ店主の実例を紹介しましょう。
最初のクレームは、「商品を袋に入れる“入れ方”がおかしい」でした。客は25歳くらい、半年ほど前からコンビニに買い物にくるようになったそうで、最初のクレーム以来、何かにつけて声を荒げるようになったと言います。
そして、「半年で200万円ぐらい使ったから、半分の100万円を返せ」という要求を突きつけられます。さらに、その100万円は“慰謝料”の名目となり、店に顔を出さなくなったものの、ひっきりなしに電話がくるようになり、「オレがどういう人間か、わかっているだろう」という、脅し文句も発せられたそうです。
そのほかにも、大手スーパーやグループホーム、写真スタジオ、タクシードライバーの被害が載っていますが、とても他人事には思えないようなものばかり。カスハラ対策の必要性を再認識させられる内容となっています。
カスハラに共通しているのは、些細なミス(ミスとは言えないケースもある)に対して、理不尽な要求を突きつけることです。
こういうことは、昔からありました。ただし、いわゆる反社会勢力が行ってきたものです。それが、今は、ごくごく普通の庶民までが、ある日突然、モンスターのような悪質クレーマー、カスハラ加害者になってしまうことも増えてきました。
しかも、カスハラ被害は、客の対応をするスタッフだけでなく、経営そのものにも大きな影響を及ぼすことがあるだけに深刻です。カスハラ被害が続くことで、従業員がストレスのために体調を崩すだけでなく、退社してしまうことだって考えられます。
ただでさえ、人手不足が深刻な状況ですから、ますます人が集まらなくなれば、経営を継続することが難しくなることもあるのではないでしょうか。
消費者や取引相手からの理不尽な要求や嫌がらせが、大きな社会問題となっていますが、法規制や対策は、なかなか進んでいないというのが実態です。しかし、なかには犯罪に該当するケースもありますから、放置したままにはできません。管理部門の担当者は、顧問弁護士などと相談しながら、法的な対応策なども打ちたてていく必要がありそうです。
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