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ニュースや新聞で「ODA(政府開発援助)」という言葉を見聞きします。先進国から開発途上国への開発援助だと知っている人も多いでしょう。しかし、どのようなことに使われ、どのくらいの規模の資金が使われているのか、という具体的な中身までとなると、知っている人はさほど多くはないのではないでしょうか。
今回はODAで行われる事業やその資金規模、ODAの問題点などについて日本での取り組みを中心に紹介します。
目次【本記事の内容】
ODAとは「Official Development Assistance(政府開発援助)」。政府が開発協力のために行う支援のことです。また、開発協力とは、開発途上国などの開発を目的とした政府や政府機関による国際協力活動のことをいいます。
ここでいう「開発」とは農地開発や工場プラントの建設、道路や橋などのインフラ整備だけでなく、人材育成や法制度整備、紛争解決、人道支援といったものも含みます。援助の内容も無償の資金協力や、将来の返済が前提の「有償資金協力(円借款)」だけでなく、技術を伝える「技術協力」があります。
こうした支援は、単に先進国が開発途上国に手を差し伸べるという人道的な理由だけで行われるのではありません。先進国側から見れば、開発途上国の発展は、自国の経済発展や安全確保につながるとの考え方もあるのです。
たとえば、道路や上下水道が普及していない国で、社会的インフラの整備を行おうとすれば、そうした技術を持つ自国の企業が現地に進出することができますし、さらに法律や制度が整えば、企業も進出しやすくなります。
また、中東地域で問題となっている海賊対策に取り組めば、自国の船舶は安心して周辺海域を航行できますし、医療体制の整備が遅れている国や地域で人材育成や施設整備を支援すれば、新型コロナウイルスのような感染症の世界的拡大を抑えることができるかもしれません。
もちろん、自国にとっての友好国を増やし、国際的な存在感を大きくするという効果も期待できます。
今では開発途上国を支援する側となった日本ですが、戦後の復興期、日本は米国を中心とする先進国から支援を受ける側でした。
終戦の翌年から6年間で、米国から日本に対して行われた資金援助の総額は約18億ドル。現在の貨幣価値に換算すれば、日本円で約12兆円にのぼります。また、世界銀行からの低金利融資は計8億6000万ドル。現在の額に換算すれば約6兆円でした。
ちなみに、日本が世界銀行への返済を終えたのは1990年。日本がバブル景気で沸き返っていた頃でした。
しかし、日本がODAを開始し、支援する側に回ったのは1954年。終戦からわずか9年後のことでした。当時はまだ、アジア諸国への戦時賠償が続いていて、賠償に加えて経済協力を行うという形でした。その後、1976年に賠償の支払いが終了した後もODAは続き、高度経済成長とともに額も大幅に伸びていきます。1989年には米国を抜いて、ODAの量が世界一となりました。
現在、日本のODAの支出総額は172億5000万ドル(2018年)となっていて、米国に次いで世界第2位となっています。ただし、指標の1つであるODA実績の対国民総所得比では0.23%と世界18位。国連の目標値は0.7%となっており、国際社会では日本に対し経済力に見合った支援額を求める声もあります。
開発途上国の発展と自国の経済成長や安全保障に寄与してきた日本のODAですが、国内外から問題点も指摘されています。
国内からの批判で代表的なのは、ODAがどこの国に対し、どう使われているのか、不透明だとの声です。特に批判の声が大きかったのが中国へのODAでした。
中国へのODAは1979年以降始まり、現在も続いています。「GDP世界第2位でアフリカ諸国などに援助まで行っている大国に、なぜODAが必要なのか」という指摘です。実際には、近年中国に対して行われるODAは、公害や感染症への対策など限られた分野への協力にとどまっていたのですが、こうした国内からの批判も受けて、2018年度で新規案件の採択を終了。これまでの継続案件も2021年度末ですべて終了します。
一方、国外からの批判で多いのは、「ひもつき援助が多い」「現地の役に立っていないものがある」といった声です。
ひもつき援助とは、建設工事などをともなう案件で資材や工事の発注を日本企業に限定するような援助の方法です。「結局、自国企業の利益のために援助を行っているだけではないか」というわけです。実際のところ、これは事実で、ひもつきの援助が日本の高度経済成長に貢献したという一面は否めません。
こうした批判を受け、日本もひもつき援助を減らしてはいますが、まだ数が多いのは確かです。
また、支援が現地の役に立っていないという指摘もしばしば聞かれます。国の2018年度決算に対する会計検査院の検査でも、当初期待した効果が十分に発揮されていない援助があるとの指摘がされました。
報告書によると、ソロモン諸島の給水事業で水の濁りを改善する施設を約20億円かけて整備したものの、既存の送水管が漏水していたため、2014年の完成直後から使われずに放置されていました。また、110億円かけて建設したインドネシアの下水処理場も処理後の水質が目標値に達せず、十分な効果を発揮していないそうです。
日本とは技術のレベルや文化、環境が異なる中での事業ですから、うまくいかない点もあるのでしょうが、ODAの原資は国民が支払った税金。有効に使ってもらいたいものです。
戦後、日本の復興と経済成長に合わせて拡大したODAですが、世界情勢の変化や意識の変化によってODAの役割や目的、支援方法も変わりつつあります。
今年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、医療体制や衛生環境が遅れている国に対する支援も課題としてクローズアップされました。
今後、日本に対しても世界的な危機に対応するためのODAが一層求められていくのではないでしょうか。
※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁にご確認ください。
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