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政府は2018年に、働き方改革の一環として「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。これに先立ち、2016年に副業を容認する発表をしていましたが、2018年にはそれを促進する姿勢となったのです。最近ではテレワークの普及や、新型コロナ感染症の影響による企業の業績低迷で更に副業解禁の気運が高まっています。
この状況下で、管理部門は副業の解禁に対してどのような準備をしておけばよいのでしょうか?
社員の副業解禁に当たって準備すべきことと、他社ではどのような条件で解禁しているのかを解説します。
副業とは、一般的に本業(本記事の場合は現在の勤務先での業務)以外に労働を行い、副収入を得ることを指します。2016年までは「副業・兼業禁止規定」によって副業は「原則禁止」とされていましたが、方針が変更され、厚生労働省が提供しているモデル就業規則からも「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除されました。
ただし実際には現在勤務する会社への届出方法が複雑であったり、人事部門の承認を必要であったりするなど、副業が容易に行える状況ではありませんでした。ところが働き方改革への意識が高まり、コロナ禍となった2020年を境に状況は変わりました。大手企業を中心に、社員への副業を解禁する企業が増え始めたのです。
今後はさまざまな事情から、社員への副業解禁に踏み切る企業が増えると予想されます。管理部門としては、副業解禁となった場合の準備を進めておく必要があります。
一口に副業解禁といっても管理方法や規程類の整備など、施行までには時間がかかります。貴社ではどこまで準備が進んでいるでしょうか?下記のチェックボックスに2つ以上の未チェックがあるなら、準備を急いだ方がよいかもしれません。
□副業解禁に伴う労務管理方法の策定
副業を行う場合の働き方や評価制度など、労務管理の方法も決めておきましょう。
□副業解禁に伴う制度や社内規定等の整備
副業を行う場合の会社への届出制度や、禁止事項に関わる規定の整備も必要です。
□副業時の時短勤務導入
社員の行う副業が平日の兼業であるならば、時短勤務についての制度を導入する必要があります。
□副業受け入れ時の在宅正社員制度の導入
副業を受け入れる場合の制度も準備しておく必要があります。在宅正社員の制度を設けておけば、地方や海外の優秀な人材も活用できます。
社員に副業を解禁することには、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?そもそも双方にメリットがなくてはこのような制度は成り立ちません。一般的にはどのようなメリットがあるのか、また副業の解禁を行っている企業の事例も紹介しておきましょう。
・従業員の収入増
コロナ禍で業績が低迷する企業もあり、場合によっては残業削減やボーナスの減額もあり得ます。従業員にとっては生活の安定につながります。
・従業員の離職防止
上記のような事情から、他企業への転職を検討する従業員の離職防止に役立ちます。
・従業員のスキル向上、人材育成
副業によって他の業種を経験することができれば、スキルの向上や新しい人材への成長が期待できます。
たとえば東京海上日動火災保険では、2021年から全社員約1万7千人を対象に副業の推奨を始めました。同社が副業を推奨する狙いは「異業種で経験を積むことで社員の能力を伸ばしたり、働き方を柔軟にして企業としての魅力を高めたりする」ことです。
また金融業界でも、副業の奨励制度を導入している企業があります。新生銀行は2018年4月より、入社1年目から60歳を超えた定年後雇用の社員でも利用できる副業制度を始めています。同行は副業を解禁するメリットとして「(行員の)経済的な補填及び(国の)労働力不足の解消」、「本業以外の興味・スキルを活用することにより、多様な視点が醸成されイノベーションを生む土壌となる」、「専門知識、スキルの向上」を挙げています。
このように副業解禁は従業員だけでなく、企業側にもメリットがあるのです。
上記のように積極的に副業解禁に踏み切る企業がある一方、副業は解禁するものの、その前提を「個人のスキルアップや成長につながる副業」に限定し、「就業時間外や休日のみ」、「正社員で入社4年目以上」、「事前に届出書・誓約書を上長及び人事総務本部長に提出」など、多くの制限をつける企業もあります。
無条件で容認できない気持ちもわかるのですが、双方のメリットを満たす運用をしなければ、いずれ制度は破綻してしまうかもしれません。副業解禁でチェックすべきポイントは、従業員と企業側双方が納得し、継続して運用していける制度や規定の整備ではないでしょうか。
副業解禁を推進する複数の企業が同じようにメリットとして挙げているのは、従業員のスキル向上と、本業への効果還元です。副業というと、どうしても従業員の収入増だけに目が行ってしまいますが、制度の運用を始める場合には双方にメリットが必要という大原則を忘れないようにしましょう。
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