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簿記を勉強中の方で、貸方・借方につまずいてしまう方は非常に多いと思います。
または、貸借対照表の作成自体あまり得意ではないという方も少なくないかもしれません。
そこで今回は、貸借対照表の基本的な構造や、貸方・借方の考え方、言葉の由来などについてご紹介します。
貸借対照表
決算の際必要になる財務諸表の中に、企業の財政状況を判断できる資料として作成されるのが貸借対照表です。
貸借対照表は主に左右の欄で形成され、左側に資産、右側の上に負債、右側の下に純資産を記入します。
左右の金額は完全に一致していることになり(不一致の場合、不明金となるわけですから大問題です)その意味合いからも英語名では「Balance Sheet」と呼ばれています。
この左と右の欄に関して、簿記では「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」と表記します。
左側の資産の欄を「借方」、一方右側の負債・純資産の欄を「貸方」と言います。
分かりやすく具体的な例を挙げてみましょう。たとえば、事務仕事用にパソコンを一台現金で購入したとします。この場合、
借方 |
貸方 |
||
パソコン | 200,000 | 現金 | 200,000 |
となります。この場合あまりつまずいてしまう方はいないのではないかと思います。しかしこれが「借」「貸」の意味を含む項目で表したとたん、頭が混乱してしまう方が続出してしまいます。
たとえば、銀行から借り入れをした場合、「借方」は字の意味とも通じて分かりやすいのですが、負債として記入する「貸方」にも同じく記入をしなければなりません。
「借りている」のに「貸方」に記入するという一見ミスマッチな行為に直面した瞬間から、貸借対照表に対する苦手意識が芽生え始めてしまいます。
はたしてなぜこのようなミスマッチな現象が起きているのでしょうか。「借方」「貸方」の由来をひも解いてみましょう。
「借方」「貸方」の由来
現在日本国内で用いられているのが「複式簿記」です。
この複式簿記の原形は、13~14世紀のイタリア諸都市において誕生したと言われています。
この頃の帳簿の仕方は、債権や債務が発生した際、相手側の観点に沿って記帳が行われていました。
たとえば、Aという商人がBという取引先に掛売で商品を売った場合、Aの帳簿には勘定項目として「B勘定」を設けます。このとき、BはAに債務を負った状態です。
記帳は相手側の観点で行われるため、Aの帳簿内の「借方」に「B勘定」という勘定項目が記録されるのです。
※参考:神戸大学大学院 MBAプログラム「借方」と「貸方」
この西洋の貸借に対する考え方と、日本の考え方とは若干異なります。しかしこれを日本へ広めた福沢諭吉は、「debit」(借方)と「credit」(貸方)を、そのままの配置で「帳簿之法」に訳しました。
福沢諭吉は始め、日本の考え方では混乱が生じるおそれもあるため、「借方」を「出」、「貸方」を「入」として説明した方が良いのではないかと考えました。しかし、後に諸外国との貿易が盛んになれば、その言葉の矛盾に不都合が生じてしまうと考え断念し、西洋に倣った記述で翻訳を行ったとされています。
また、単純に「左方」「右方」などの方角で示さなかったことにも理由があります。
当時「帳簿之法」は縦書きで記されていました。そのため、西洋の原書の中に「借方」「貸方」が左右に並んでいたとしても、右や左で表すとおかしなことになってしまうため、日本の帳簿に合うように上を「借方」下を「貸方」として表現されました。それが、横書きが主流になった現代でも、帳簿之法の表現に倣い「借方」「貸方」という表記になったと考えられています。
原理さえ分かれば理解できる
「借方」を資産、「貸方」を負債と純資産、というように、原理を省いて覚えてしまえば問題はありません。そして、言葉の由来や原理さえ分かれば、ほとんどの方が理解できるものであると言えます。
似たようなものに「円高」「円安」があります。
これは経済用語の中でも非常に優しい部類のものですが、「円安」「円高」の「安」「高」は、価格の上下ではなく、価値の上下を表します。そのため「1ドル120円」から「1ドル110円」へと為替が変動した際、一見「円」が「安く」なったと感じてしまいそうですが、実際には円の価値が上昇しているため「円高」となります。
これとまったく同じではありませんが、似たような原理であるのが「借方」「貸方」です。
原本は西洋の簿記に倣っていることを踏まえ、西洋簿記の観点を覚えてしまえば理解できるはずです。
難しい簿記の中でもとりわけ財務諸表、特に貸借対照表はてこずるものかもしれません。
しかし、難しい諸表の中にも言葉の由来にさまざまな背景が伺えるのは面白いものです。
福沢諭吉もみなさんが分かりやすくなるよう、とても頭を悩ませたものと思います。その意思を汲みしっかりと理解をして、日本経済活性のため活用できるようにしていきましょう。
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