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終身雇用や年功序列といった日本型の人事制度から、成果主義型の報酬制度へと移行する企業が増加するのに伴い、企業と従業員の結びつきを示す“エンゲージメント”が注目を集めています。エンゲージメントの高さは、業績の向上につながるとされていますが、エンゲージメントを維持・向上させる方法はあるのでしょうか。
「エンゲージメント(engagement)」は、「婚約、誓約、約束、契約」を意味する言葉で、従業員の会社に対する“愛着心や思い入れを表すもの”というのが一般的な解釈です。
最近では、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」という、さらに踏み込んだ意味で使われるようになっています。
このエンゲージメントが、人事領域の部門で注目を集めています。日本の人事制度がこれまでの終身雇用や年功序列から、成果主義型の報酬制度への移行が進みつつあるなかで、よりよい待遇や環境を求めて人材の流動化が進んだことが挙げられます。
その結果、将来の経営層候補となる優秀な人材流出や、若年層の早期退職など、人材育成が経営の最重要課題となりました。組織が個人の成長を後押しする人事施策の重要性が改めて認識されるようになり、それに伴ってエンゲージメントにも注目が集まるようになりました。
「エンゲージメントが高い」ということは、企業と従業員には信頼関係があり、業務にも意欲的に取り組むため、業績の向上にも期待が持てる状況です。離職者の抑制や従業員のモチベーションアップにも効果があります。
「人事白書2019」(日本の人事部)によると、エンゲージメントが高まったことで得られた効果は「組織の活性化」が最多で、次に「従業員モチベーションの向上」「業績の向上」「離職率の低下(定着率の向上)」が続いています。
エンゲージメントには、「個人の成長や働きがいを高めることは、組織価値を高める」「組織の成長が個人の成長や働きがいを高める」という考え方が根底にあります。在宅勤務の普及や副業解禁など、働き方の多様化が認められるようになったことも、エンゲージメントが注目される背景にはあるようです。
エンゲージメントの高い職場には、「仕事そのものへの情熱・熱意がある」「会社全般への満足感が高い」「会社への愛着が強い」「職務への満足感」「仕事の成果が会社に大きく貢献している状態」などの特徴があります。
つまり、エンゲージメントを高めるためには、給与アップなどの待遇や労働環境の改善だけではなく、従業員が仕事に意欲を持ち、やりがいを感じているかどうかが重要です。また、多様性や価値観を共有・評価する環境や機会の提供を行う必要があります。
具体的には、「ビジョンへの共感」や「やりがいの創出」「働きやすい職場づくり」「成長支援」などで、なかでも「ビジョンへの共感」は、エンゲージメントを高める上で欠かせない要素です。
人事政策では、エンゲージメントだけでなく、従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)の重要性も指摘されています。ESとは、従業員が仕事の内容や報酬、待遇、職場環境、職場の人間関係などに対してどのくらい満足しているかを示すものです。
いくらESが高くても、待遇面の満足度が高いだけで、従業員は必ずしも企業への貢献度が高いわけではありません。よりよい条件の企業を求めて転職する可能性もあります。
エンゲージメントとESが大きく違う点は、エンゲージメントには、従業員の企業に対する思い入れがあるため、「この企業に貢献したい」という気持ちを持って仕事に取り組んでいることです。
米ギャラップ社が2017年に発表した調査「State of the Global Workplace 2017:GALLUP」によると、日本のエンゲージメントスコアは調査対象139か国中132位です。「非常に意欲的な社員」の割合でも、世界平均の15%に対し、日本はわずか6%でした。従来型の日本的人事評価制度では、グローバル化が進むなか、なかなか生き残ることが難しくなっているだけに、エンゲージメントの重要性は、ますます高まってくるのではないでしょうか。
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