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2009年から上場企業は国(出先機関の財務局)に対して、財務状況を示す有価証券報告書と共に「内部統制報告書」の提出が義務付けられました。しかし、制度化されてから10年以上経ったものの、内部統制報告書で報告される「内部統制」とは何なのか、概念としてややわかりにくい面があります。
そこで今回は、企業で内部統制が行われる目的や理由について詳しく解説しましょう。
内部統制とは、企業目的を達成するために、所属する従業員が守るべきルールや仕組みのことです。従業員向けのルールというと社内規程や就業規則などがイメージされますが、内部統制はそれら企業内の各種ルールを総括した上位概念に該当します。つまり、内部統制を構築・強化するとは、社内にあるさまざまなルール・仕組みを適切に制定し、従業員に遵守してもらうことを指すわけです。
内部統制に対しては、金融庁によって説明・定義づけが行われています。それによると、企業が内部統制を行う目的として挙げられているのは「業務の有効性および効率性の向上」、「財務報告に対する信頼性の向上」、「事業活動に関連する法令遵守」、「企業が持つ資産の保全」の4つです。
さらに同庁は、内部統制の目的を達成するために、以下の6つの要素を挙げています。
統制環境 | 経営者と従業員におけるルールの適用・厳守の意識を高める。 |
リスクの評価と対応 | 内部統制の目的の実現を妨げるリスクを調査、分析、排除する。 |
統制活動 | 社内ルールを実行するための方針、プロセスを定める。 |
情報と伝達 | 内部統制の目的を実現するために必要な情報を関係者に伝達する。 |
モニタリング | 社内ルールが機能しているかを継続して監視する。 |
ITへの対応 | ITを適切に管理し、データの信頼性、情報のセキュリティを確保する。 |
国・金融庁がこのような内部統制の目的、要素を示し、上場企業に内部統制報告書の提出を求めるようになった背景にあるのが、経営者・従業員による不正行為の増加です。
1980年代以降、アメリカでは粉飾決済や不正経理よる犯罪が増え始め、2001年から2002年にかけてはエンロン社やワールドコム社といった大企業が不正会計・粉飾決算の発覚により倒産しました。大企業倒産による経済への影響は大きく、その後アメリカでは経営者・従業員の不正行為をなくすべく、2002年にSOX法(情報開示や不正防止に関する法律)が新たに制定されています。
日本でも2000年代以降、有価証券報告書の虚偽記載や経営資金の着服、個人情報の漏洩といった経営者・従業員の不正行為を原因とする事件が多発していました。そこでアメリカのSOX法を参考にしつつ、それまでの証券取引法を改正して日本版SOX法である「金融商品取引法」を2006年に成立(2008年度から適用)させます。経営者・従業員に対して適切なルール・仕組みを設定し、それを厳守させるという内部統制の考え方が、日本で重視されるようになったのです。
企業内で内部統制を強化していくことには、企業にとって多くのメリットがあります。
まず、内部統制によって財務状況の透明化を実現することで、経営者・管理者が経営状況をより適切に把握でき、正しい経営判断を行えるというメリットがあります。投資家や金融機関からの信頼性も高まり、資金調達もしやすくなるでしょう。
また、従業員に法令遵守を徹底させ、個人情報や企業秘密の漏洩行為を防止することで、企業の社会的信頼の失墜を防げます。一度漏洩する事件を起こすと信頼を取り戻すのは簡単ではないため、それを防止することは企業利益につながる行為です。
さらに、内部統制が想定する法令遵守にはハラスメント行為の防止も含まれているため、その強化はパワハラやセクハラなどを防ぐことも意味します。ハラスメントのない働きやすい職場環境を作ることは、従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。
実際にどのような方法で内部統制を作り上げていくかは、企業が置かれている経営環境や事業内容によって変わってきます。金融庁が掲げている内部統制の目的、要素は基本事項であり、自社に合った形で工夫しながらルール作りをしていくことが大切です。
子会社を複数持つ企業であれば、親会社だけ内部統制を強化しても、企業グループ全体としての業務の適正化は実現できないでしょう。内部統制によるメリットを生かすには、グループ企業全体で足並みをそろえて取り組むことが大切です。
内部統制とは所属する従業員が守るべきルールや仕組みのことであり、上場企業は内部統制報告書の提出義務があるため、企業を挙げて体制構築に取り組む必要があります。
なお、上場していない中小企業などは、内部統制報告書の作成・提出義務がありません。しかし、提出書類作成の必要がないからといって、内部統制をおろそかにすることは企業にとって得策とはいえません。内部統制を整備・強化することで得られるメリットは企業の規模によって変わることはなく、積極的に取り組むことが企業の成長、業績アップにつながるでしょう。
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