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多様な働き方を実現しやすくなった昨今、若年層の転職・離職はめずらしいことではなくなりつつあります。しかし、コストをかけて採用した新入社員には、できれば長く勤めてほしいと多くの企業が考えているはずです。
2021年卒の新入社員は、今後のキャリアをどのように捉えているのでしょうか。また、企業に対して何を求め、期待しているのでしょうか。さまざまな調査結果から浮かび上がってくる新入社員の実態をまとめました。
「3年3割離職」という言葉が象徴するように、新卒で入社した従業員が早期に退職する傾向は久しく続いています。研修期間を終えて間もない時期に新入社員が退職してしまうと企業にとってもダメージが大きいため、早期の退職をできるだけ抑えたいと考えるのは自然なことでしょう。
日本労働調査組合が実施した調査では、新入社員のうち50.6%がすでに退職を検討したことがあると回答しています。
「入社後に退職を検討したことがありますか?」
・ある:50.6%
・ない:49.4%
(日本労働調査組合「21卒新社会人の勤務意識に関するアンケート調査」2021年6月)
上記の調査は2021年5月下旬に実施されたものであることから、入社後2ヶ月足らずでおよそ半数もの新入社員が退職を意識していることになります。研修期間中の企業も少なくない中、実務が始まる前から退職したいと感じる新入社員が決して少数派ではない事実は注目に値します。
第二新卒をはじめとする若年層の転職・離職は、企業にとって重要な課題の1つといえます。将来的なキャリアについて、新入社員はどのように考えているのでしょうか。
「就職した会社で定年まで働きたいと思いますか?」
・定年まで同じ会社で働きたい:31.2%
・いずれは独立・起業したい:11.4%
・自分に向かなければ転職したい:27.3%
・わからない:30.1%
(NCBリサーチ&コンサルティング「2021年度 新入社員意識調査アンケート結果」2021年6月)
4割弱の新入社員が転職や独立・起業を視野に入れていることがわかります。入社した会社で定年まで働きたいと回答した新入社員の割合を上回っており、多様な選択肢を見据えて今後のキャリアプランを考えていることが見て取れます。
現状では「わからない」と答えた新入社員に関しても、本格的に実務に携わるようになって以降、意識が変化していくことは十分に考えられるでしょう。少なくとも、定年まで一社で勤め上げることを希望する新入社員が少数派になりつつあるのは明らかです。
入社した企業で働くことに満足しており、デメリットと感じる面が少なければ退職を検討し始める可能性は低いと考えられます。では、新入社員は現在の会社で働く上でどのような点にデメリットを感じているのでしょうか。
「入社した会社で働くことの最近感じるデメリットを教えてください」
・給料が安い:13.9%
・長時間労働:8.6%
・人間関係:7.5%
(日本労働調査組合「21卒新社会人の勤務意識に関するアンケート調査」2021年6月)
デメリットとして最も多かった回答は、給料の水準が低いことでした。成果主義・実力主義による評価制度を導入する企業が徐々に増えているとはいえ、勤続年数に応じて定期昇給していく給与体系の企業も少なくないはずです。
前出の調査結果を踏まえると、より好条件の企業があれば躊躇なく転職していく新入社員も出てくることが予想されます。入社直後の待遇面で不満を感じている新入社員が少なからず存在することを念頭に置く必要があるでしょう。
新入社員はどういった働き方や職場環境に魅力を感じているのでしょうか。新入社員が企業に求めている要素について、次の調査結果がヒントになるはずです。
「魅力に感じる企業の制度」
・年次有給取得の促進:53.7%
・時差出勤・フレックスタイム制勤務:44.2%
・資格(検定)等の取得支援:42.0%
・人材育成体系(研修計画)の充実:40.7%
(東京商工会議所 研修センター「2021年度新入社員意識調査」2021年6月)
上位を占めた回答は、柔軟な働き方と成長機会の充実だったことがわかります。画一的な勤務体制やキャリアパスの魅力が薄れており、個々の従業員のニーズに応えていくことの重要性が増しているといえるでしょう。
柔軟な働き方や豊富な成長機会を整えることは、優秀な人材を獲得していく上でますます重要な要素となっていくはずです。
人生100年時代が到来しつつある昨今、定年まで一社で勤め上げる人材は少数派となっていきます。今回取り上げたのは新入社員を対象とした意識調査の結果ですが、同様の傾向は若手の人材全般についても当てはまるでしょう。
優秀な若手の人材を確保することは、将来に向けた安定経営を左右しかねない重要な課題といえます。新入社員の声は、今後の人材戦略を講じていく際に重要な示唆を与えてくれるはずです。調査結果を参考に、ぜひ新入社員のフォローや教育・研修制度の充実を図る上での手がかりとしてください。
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