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記事転載元:ぱられる/株式会社コーナー
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2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂されました。今回の改訂では、取締役会が備えるべきスキルと実態の公表や、中核人材における多様性の確保など、人的資本に関する項目が新設され、それにより上場している企業や上場準備企業の人事も本改訂への対応が求められています。
そこで今回は、弁護士が講師を務めるコンプライアンスに関する研修やコンサルティング等を企業向けに展開している企業の方にお聞きして、前回記事では、改訂コーポレートガバナンス・コードの変更点や影響についてご説明しました。
後編の本記事では、具体的にどのような対応をすべきなのか?というポイントをまとめ、人事として準備しておくべき事項について解説していきます。
目次【本記事の内容】
※改訂コーポレートガバナンス・コードについて詳しく知りたい方はこちら
今回の改訂コーポレートガバナンス・コードにおいて、人事視点で取り組むべき内容は3つにまとめられます。
1つ目は「社外取締役の設置」です。
この点においては、「人材要件に見合った社外取締役を、規定人数設置する」必要があります。人材要件、規定人数に関しては、それぞれ以下で説明します。
・人数要件
これまで、少なくとも2名以上の選任が必要とされてきたものが、3分の1に変更されました。また、必要な場合には過半数の選任を検討を慫慂(しょうよう:しきりに勧めること)されています。もちろん、変更後も現状で要件を満たす企業もあるとは思いますが、これにより、追加の採用をしなければならなくなる企業もあるでしょう。(プライム市場以外の市場の場合は引き続き2名以上)
・人材要件
この社外取締役は、「独立」社外取締役である必要があります。独立社外取締役は、一般株主保護の観点から、経営陣から独立した役員である必要があります。例えば、上場会社・子会社や、親会社・兄弟会社の業務執行者は、独立性がないと判断されます。(過去10年以内に業務執行者であったものも含む。)
さらに、主要な取引先、多額の金銭を得ているコンサルタントなどの業務執行者も直近で取引がある場合は、独立性がないと判断されてしまいますので、注意が必要です。
「独立」か否かの判断については、「独立役員の確保に係る実務上の留意事項(2021 年 6 月改訂版)」(※)を参照すると良いでしょう。
また、取締役を選任する場合は、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性やバランスも必要とされるので、その点も十分に考慮して決定していきましょう。
なお、社外取締役を設置する際は、採用後の役員報酬もよく考慮しておく必要があります。役員報酬は、大きく分類すると、以下の3つに分類されます。
日本の上場企業の平均は、固定報酬が高く7割程度を占め、短期業績連動報酬が2割、長期連動報酬が1割程度となっていますが、欧米では、それぞれ3分の1ずつがスタンダードであり、最近では長期業績連動報酬の構成比の構成比を高める風潮があります。
この流れを受け、2021年改訂コーポレートガバナンス・コードにも次のように明記されています。
役員報酬を決定する際の業績連動の指標やKPIの選択は、自社の成長戦略を示すメッセージを示すことにも繋がるため、役員報酬の設計も株価に大きな影響を与えると考えておく必要があります。例えば人事として、役員報酬の原案を作成するような場合には、どのようなKPIを用い、どのような期間で業績と連動させるかなどの事項を踏まえて設計することが必要になります。
なお、独立社外取締役の人選においては、ケースによっては、いきなり迎え入れるのではなく、候補者には、一度、取締役会で話をしてもらう機会を設定しおくと、選任後のミスマッチを防ぐことに繋がりますので、必要に応じてこのような場を設定するといいでしょう。
2つ目に、「スキル・マトリックスの開示」が挙げられます。
「スキル・マトリックス」とは、各取締役が有するスキルを表にまとめたものを指し、取締役に必要なスキルを分野ごとに記載し、現状どの取締役がどこに対応しているか(知見や専門性を備えているか)を示します。
各企業は「スキル・マトリックス」を策定し、公表する必要があります。
ここでポイントになるのは、単純にスキル・マトリックスを策定するだけではなく、具体的な戦略ストーリーに沿って策定することです。
コーポレートガバナンス・コードでは、「投資家との対話」も1つの大きなテーマとなっているため、具体的なストーリーを元にステークホルダーと対話する必要があります。また同時に、ステークホルダーの関心は、独立社外取締役の人数の増加だけでなく、その資質のバランスや多様性の充実に移ってきているとの指摘があります。
これは単純に、今いる取締役のスキルをマトリックスにしただけの現状追認型のスキル・マトリックスでは、本質的には足りないということを意味しています。
スキル・マトリックスは、あくまでも自社の企業価値向上のための経営戦略の一環である必要があり、以下のような流れで策定すると良いでしょう。
最後に、「人的資本とサスティナビリティへの取り組みの開示」について説明します。
2021年改訂のコーポレートガバナンス・コードでは、ダイバーシティに関する取り組みとともに、サステナビリティの文脈でも、人的資本への投資について言及されています。
具体的には、以下のような内容です。
「投資家との対話」が大きなテーマであることを踏まえると、人材に関しても、自社の企業価値を高めるための経営戦略に紐づけて、ステークホルダーに対して適切なKPIを設定し、定性・定量的データをもとに、「現状・目標・進捗状況」を見える化する工夫が必要となります。
また、企業によっては、人材に関するKPIを、取締役の業績連動報酬のKPIのひとつとして採用している事例も見られます。例えばソニー株式会社は、「従業員エンゲージメント」指数を役員報酬体系に取り入れ、その内訳を任意の報告書で開示しています。
その他にも、
・働き方改革の推進に伴い営業利益率が、どう高まっているか?
・残業時間の減少や有給休暇の取得率向上を推進した結果、従業委の生産性が、どう高まっているか
などの資料を公開することもできます。
前提として、人的資本への投資は効果が出るまでに時間がかかりますので、そういった意味でも、目標値と併せて、定期的に、定性・定量に基づいた進捗を開示していくことが肝要と言えるでしょう。
具体的な事例としては、小林製薬株式会社は、アニュアルレポートにおいて、従業員サーベイの結果(「働きがい」「仕事を通じて成長を実感することがある」「心身ともに良好な状態で働けている」など)や、「女性管理職比率」「従業員定期健診・再検査受診率」などの情報を収集し、定期的に開示しています。
その他、参考になる情報としては、人材版伊藤レポートや、ISO 30414(Human Capital Reporting)が参考になるでしょう。
※ISO 30414に関して詳しくはこちら
人的資本に関する適切なKPIが設定・開示されていない場合、人的資本への投資の有無と成果を財務諸表から読み解くのは、時間もかかり、難しい側面があります。
熟練の機関投資家であれば、複数の定性的情報の組み合わせから、人的資本投資の有無を読み解くことも可能かもしれませんが、基本的には自社の活動内容を財務情報のみから読み解かせるのは難しいものとして考え、上述のような開示に取り組むと良いでしょう。
後編では、改訂コーポレートガバナンス・コードについて、人事目線を中心に解説いたしましたがいかがでしたでしょうか?
中には、ご紹介した対応が必要な取り組みについて既に実施している企業も少なくないと思いますが、一方で、まだそれらを開示していないケースなどもよく耳にするため、本記事を参考に進めていただけたらと思います。
投資家との対話を前提とした適切なKPIの設定や情報開示を進めることで、企業価値をより一層高めていくことができるのではないでしょうか。
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