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年度末が近くなると、企業に勤めている人の一番の関心事は賃上げに関わる状況になるのではないでしょうか。
新型コロナ感染拡大の影響によって、長引く不景気や企業の業績不振が来年度の賃上げにどこまで影響するのか?
会社から発表があるまでは、とても不安になることでしょう。
今回は民間調査機関の労務行政研究所が発表した「賃上げ等に関するアンケート」の結果を元に、2022年の定昇やベアの見通しについて解説していきます。
賃上げに関する記事などを読んでいると、「定昇」や「ベア」といった言葉をよく見かけることと思います。定昇やベアとは、何を意味しているのでしょうか?ここでそれぞれの意味を確認しておきましょう。
●定昇(定期昇給)
定昇とは定期昇給を略したもので、会社が定めた時期に給与を上げる制度のことです。たとえば年一回4月、年二回4月と10月など、定期的に昇給が行われます。また年齢や勤続年数によって定期的に昇給する場合なども、これに当たります。
一般的に定昇はライフステージに応じて設定されていることが多く、ライフプランを設計しやすいことがそのメリットだといわれています。ただし定期とはいえ必ずあるかは決まっておらず、会社の業績によっては行われないこともあります。
●ベア(ベースアップ)
ベースアップは、会社の業績などに応じて社員全員の給与を一律で上げる制度です。定昇が個人(年齢や勤続年数など)を基準に行われるのに対し、ベアは会社の業績を基準として行われます。経営と組合の交渉でベア交渉(ベア1.2%など)がまとまれば、組合員全員の給与が上がります。
通常賃上げといった場合には、定昇+ベアの昇給額や昇給率を指しています。
ここから紹介するデータは、冒頭でも書いたとおり民間調査機関の労務行政研究所が発表した「賃上げ等に関するアンケート」の結果に基づきます。本調査は、東証第一部・第二部上場している企業から、406人(調査対象は7651人)の回答を得てまとめられたものです。
これによると定昇分を含む2022年の賃上げ(予測)は、額が平均6,277円、賃上げ率は2.00%となっています。特に賃上げ率については予測通り2%となれば、2年ぶりの2%台となります(2021年は1.86%:厚生労働省による調査)。年度でいえば2020年度と2021年度に大きな爪痕を残しているコロナですが、2022年度は少し明るい兆しが見えてきたのかもしれません。
ちなみに賃上げは労使共に行われるので、労使別のデータにも注目すると、労働側は賃上げ額6,428円、賃上げ率2.05%、経営側は賃上げ額6,423円、賃上げ率2.04%となっていて、労使共に回復基調(予測)であることがわかります。
定昇及びベアについては賃上げ金額や率ばかりが注目されますが、そもそも実施するかどうかも見ておかねばなりません。実際、コロナ禍で業績の先が見通せないことを理由に、2020年度や2021年度の定昇・ベアを見送った企業も少なくないのです。
今回の調査では、定昇について労働側の89%が「実施すべき」、経営側の87.2%が「実施する予定」と回答しています。経営側の回答に関しては、もともと定昇制度が無い企業と無回答を除外すると92.1%が「実施する予定」となり、経営側としては2022年度の従業員の活躍にとても期待していることがわかります。
一方ベアの実施については、労働側の70.8%が「実施すべき」と回答していますが、経営側の「実施する予定」は17.0%にとどまっています。ベアについてはその性質上(会社の業績に応じて社員全員の給与を一律で上げる)慎重になる経営者が多く、業績にインパクトを与えそうな出来事が直接影響します。ベアを「実施する予定」は2015年に35.7%、2016年以降は20〜30%台となっていましたが、コロナのインパクトが影響したのか2020年は16.9%に下がっています。2021年には更に4.8%に急落し、2022年は17.0%となっているのです。2021年に比べれば回復基調ではあるものの、2016年以降の20〜30%台にまでは回復していません。コロナ後に上昇するのか更に下降するのか、景気の先行きはまだ見通せないということでしょう。
本調査では、定昇やベアと同じように夏季賞与や一時金の見通しについてもアンケートを行っています。ただしこちらは感覚的に「増加する」、「減少する」、「同程度」などの回答になります。
2022年の夏季賞与・一時金の見通しについて労働側の回答は「同程度」が50.4%、「増加する」は34.1%で「減少する」は15.5%でした。2021年の実績、「同程度」が36.4%、「増加した」35.2%、「減少した」は28.4%と比べると、2022年度の夏季賞与と一時金に関しては、その期待の大きさがわかります。
一方経営側は「同程度」が57.3%、「増加する」は27.2%で「減少する」は15.5%でした。2021年の実績は「同程度」が36.8%、「増加した」36.0%、「減少した」は27.2%で、過度な期待はしないものの、同程度まで業績は回復するだろうと予想しているようです。
今回の調査を通してわかることは、労働者側は切に景気の回復を期待しているということです。もちろん日常生活が戻りつつある確証が得られなければ単なる予測に終わってしまうかもしれませんが、閉塞感の強い現状をなんとか打破したいという願いが現れている調査結果でした。賃上げは消費を刺激し、経済を活性化させます。2022年度の賃上げが、日本経済復活の起爆剤となってほしいものです。
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