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老舗ネットメディア「TechCrunch」「エンガジェット」日本版サイトを、3月末で更新を終了し、2022年5月1日をもって閉鎖することを、運営するBoundlessが発表しました。
閉鎖の理由はアメリカ本社の戦略変更ということですが、背景にはネットメディア運営の難しさもあるようです。
エンガジェット日本版サイトがスタートしたのは2005年で、翌2006年には日本語版のTechCrunch Japanもスタートしています。
日本語版には、アメリカ版に掲載された記事の翻訳に加え、日本のスタートアップに関する記事も掲載されています。それだけに、IT技術者や起業家にとっては、業界の動向を知るうえでの貴重な情報源でもあったメディアです。
媒体資料(2021年11月発行)によると、エンガジェットのページビュー(PV)は3,000万、ユーザー数900万、TechCrunchのPVは450万で、ユーザー数が180万です。閉鎖に追い込まれるほどの閲覧数でもユーザー数でもありません。
では、なぜ閉鎖することを決断したのでしょうか。その背景には、ネットメディア運営の難しさがあるようです。
ネットメディアというと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。メディアといえば、これまでは新聞や雑誌、テレビ、ラジオが代表的なものです。しかし、インターネットの普及によって、メディアの形態も大きく変わってきています。
たとえばヤフーやスマートニュース、オウンドメディア、さらには企業のホームページさえもメディアとしての機能を有するほか、個人のブログでさえ、情報発信メディアとして位置付けられます。あらゆるものがメディア化し、それがネット上に拡散しているというのが現在の状況です。
そのネットメディアは、スポンサーからの広告収入と、ユーザーからの購読料収入が主な運営費で、その両方を採用しているメディアもあります。
ところで、広告収入で運営しているメディアは、記事を無料で読めるため、読者にとってはありがたい存在です。しかし、トップページや記事の片隅に掲載される広告が、目障りと感じる人も多いのではないでしょうか。
さらに、広告で運営しているメディアの一番の弱点は、掲載記事の信ぴょう性です。そこに広告スポンサーへの忖度が働いているのではないかという疑問です。
一方、購読料で運営しているメディアは、スポンサーへの忖度がない分、信ぴょう性の高い記事を読むことができます。しかし、無料で情報が得られることが多いネット社会では、その購読料を負担してまで読者になる人がどの程度いるのかという疑問も残ります。
それぞれ弱点もありますが、広告収入と購読料収入の二刀流が、安定した運営方法となりそうです。しかし、あらゆる媒体がメディア化しているという、今のネットメディアの状況を考えれば、メディアのあり方も運営方法も、まさに変革の真っ最中といえるのではないでしょうか。
ネット上には、新聞社やテレビ局が独自に取材したニュースを報じるメディアもあれば、それらをまとめたサイト、また、それらのニュース記事を元に、個人の意見を加えた個人ブログもあります。
実は、そこにネットメディアの限界があります。正確な情報、質の高い記事を掲載し続ければ、信頼度が高まり読者も増えるでしょう。でも、運営が安定するまでには、相当な年月が必要です。
しかし、さまざまなサイトから記事を集め、もっともらしい記事に仕上げることも可能です。もちろん、その記事のエビデンスには信頼がもてません。そのため、やがて淘汰されていくに違いありません。いわばネットメディアの宿命でもありますが、これからどのような方向に向かうのでしょうか。
広告収入であれ購読料収入であれ、ネットメディアの信頼性を高めるのは、運営者の意識次第といえるでしょう。広告スポンサーや購読者に忖度した記事を掲載するメディアは、やがて淘汰される運命にあることは、これまでの歴史が証明しています。それにしても嘘や間違った情報を流すネットメディアも多く、まさに過渡期なのかもしれません。
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