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今年(2022年)3月8日、コンサルティング会社大手のアクセンチュアが労働基準法違反の疑いで書類送検されました。
同社は去年1月、ソフトウェアエンジニアとして働いていた社員1人に1か月で140時間以上の違法な残業をさせていた疑いが持たれています。
本件は報道後、大きな話題となりました。
「労働基準法」は、昭和22年に制定され、労働条件に関する最低基準を定めたものです。
平成30年6月に一部改正が行われ、平成31年4月1日から施行されています(中小企業には令和2年4月1日から適用)。企業の総務や人事労務の担当者は把握しておくべき法律です。
本記事ではこの「労働基準法」について改めておさらいします。
目次【本記事の内容】
厚生労働省は労働基準法を分かりやすくまとめた資料「労働基準法の基礎知識」をインターネット上で公開しています。ここでは、その資料をもとに基本的なポイントをご説明しましょう。
労働者を採用するときは、以下の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項、労働基準法施⾏規則第5条)。
■必ず明示しなければならないこと
①契約期間
②期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
③就業場所、従事する業務に関すること
④始業・終業時刻、休憩、休日など
⑤賃⾦の決定⽅法、⽀払時期など
⑥退職に関すること(解雇の事由を含む)
⑦昇給に関すること
※①~⑥は原則、書面で交付しなければなりません。ただし、労働者が希望した場合は、FAXやWebメールサービス等の方法で明示することができます。また、書面として出力できるものに限られます。
■定めた場合に明示しなければならないこと
①退職手当
②賞与など
③食費、作業用品などの負担に関すること
④安全衛生
⑤職業訓練
⑥災害補償など
⑦表彰・制裁
⑧休職
賃⾦は通貨で、直接労働者に、全額を毎月1回以上、一定の期日を定めて⽀払わなければなりません(労働基準法第24条)。また、労働者の同意があっても最低賃⾦額を下回ることはできません(最低賃⾦法第4条)。
労働時間の上限は、1日8時間、1週40時間(10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業は44時間)です(※1)(労働基準法第32条、第40条)。また、少なくとも1週間に1日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません(労働基準法第35条)。この労働時間の上限を超えてまたは休日に働かせるには、あらかじめ労使協定(36協定)を結び(※2)、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第36条)。
(※1)変形労働時間制などを採用する場合は、この限りではありません。
(※2)過半数労働組合、または過半数組合がない場合は労働者の過半数代表者との書面による協定。
→時間外労働及び休日労働の上限について
36協定で定めることのできる時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象労働者は、月42時間・年320時間)です。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)には、年6か月まで月45時間を超えることができますが、その場合でも[時間外労働が年720時間以内] [時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満]としなければなりません。
1日の労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を、勤務時間の途中で与えなければなりません(労働基準法第34条)。
時間外労働、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時)を⾏わせた場合には、割増賃⾦を⽀払わなければなりません(労働基準法第37条)。
雇い入れの日(試用期間含む)から6か月間継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者には年次有給休暇が与えられます。
また、年次有給休暇が10日以上付与される労働者については、年5日の年休を取得させることが使用者の義務となります(労働基準法第39条)。
やむを得ず、労働者を解雇する場合、30日以上前に予告するか、解雇予告手当(平均賃⾦の30日分以上)を⽀払わなければなりません(労働基準法第20条)。
また、業務上の傷病や産前産後による休業期間及びその後30日間は、原則として解雇できません(労働基準法第19条)。
常時10人以上の労働者を使用している場合は、就業規則を作成し、労働者代表の意⾒書を添えて、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。
また、就業規則を変更した場合も同様です(労働基準法第89条、第90条)。就業規則は、作業場の⾒やすい場所に掲示するなどの方法により労働者に周知しなければなりません。
■必ず記載しなければならないこと
①始業・終業時刻、休憩、休日など
②賃⾦の決定⽅法、⽀払時期など
③退職に関すること(解雇の事由を含む)
■定めた場合に記載しなければならないこと
①退職手当
②賞与など
③食費、作業用品などの負担に関すること
④安全衛生
⑤職業訓練
⑥災害補償など
⑦表彰・制裁
⑧その他全労働者に適用されること
以上が、「労働基準法」についての基本的なポイントです。
(参照・転載:厚生労働省「労働基準法の基礎知識」 )
ここでは過去に起こった労働基準法違反の事例で代表的なものを3例、簡単にご紹介しましょう。
2017年1月、労使協定(36協定)の上限を超える残業を研究職の社員にさせたとして、労基法違反の容疑で、大手総合電機メーカーの三菱電機と、同社の幹部が書類送検されました。
2017年6月、従業員2人に労使協定の上限を超える時間外労働をさせていたとして、労働基準法違反の疑いで、大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)と、同社の幹部2人が書類送検されました。
2019年9月、広告代理店最大手の電通は労使協定に関する労働基準法違反で、労働基準監督署から是正勧告を受けました。同社は他にも2015年に新入社員が過労自殺し、社長の引責辞任や法人として有罪判決が行われ、問題となっています。
以上が、労働基準法に関する基礎知識と、過去の違反事例です。
労働基準法の違反は、従業員の心身の健康や労働環境を脅かすだけでなく、企業自体の存続にもかかわる重要な事柄です。総務や人事労務の担当者は、必ず労働基準法をいま一度確認しましょう。
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