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2023年10月から始まるインボイス制度。注意すべき「落とし穴」とは?

公開日2022/07/05 更新日2022/07/06

インボイス制度をご存じでしょうか。2023年10月から施行される新制度で、企業の経理部門や個人事業主などには事前の対応策が求められますが、有識者からは制度を理解する上で注意すべき「落とし穴」があるとの指摘もあります。

そこで今回は、インボイス制度の概要と導入される背景、注意すべき「落とし穴」について詳しく解説しましょう。

インボイス制度とは

そもそも「インボイス」とは、日本語では「適格請求書」という意味をもち、売り手側が買い手側に対して、正しい税率や消費税額などを伝えることをいいます。ここでいう適格請求書は、日本の現行制度では「区分記載請求書」に該当し、そこに適用税率、消費税額などを記載したものがインボイスに該当します。

インボイス制度とは、売り手である登録事業者が、買い手側(消費税の課税事業者)に求められた時に、インボイスを交付する義務を負うことを規定した制度です。

売り手側には交付したインボイスを保存する義務もあります。買い手側も、仕入税額控除の適用を受けるには、原則として売り手側から交付されたインボイスの保存が必要です。

仕入税額控除とは、仕入れの際に支払った消費税額と、商品の販売時に購入者から預かった消費税額との差額分のみ消費税を納めればいい、という制度です。

たとえば、商品を500円(税込価格550円)で仕入れた場合、仕入先に支払った消費税額は50円です。その後、その仕入れた商品を800円(税込価格880円)で販売したら、購入者から80円の消費税を預かることになります。本来、購入者から預かった80円の消費税はすべて納税する義務がありますが、仕入税額控除の制度により、仕入先に支払った消費税額50円を80円から差し引き、30円だけ納税すればいい、というわけです。

インボイス制度の施行以後は、この仕入税額控除の適用を受けるには、所定の登録番号をもつ仕入先からインボイスの交付を受けなければなりません。仕入先の側も、購入者(お得意先)がインボイスの交付を求めてくることを予想し、滞りなく交付できるように準備を進めておく必要があります。

インボイス制度が導入される理由

かつて請求書というと、税込みの請求金額と請求対象者、請求者の三点が乱暴な字により手書きで書かれていたりもしました。近年ではパソコンの会計ソフトの使用がスタンダードとなっていますが、それでも請求書の様式にはとくにこだわりがない、という企業も多かったといえます。

しかしこの状況が変化したのは、2019年10月から始まった軽減税率の導入です。

それまで、消費税は商品の種類に関係なくすべて一律とされていましたが、軽減税率が導入されたことで、一般商品の消費税は10%、軽減税率対象商品(生鮮食品など)の消費税は8%とされました。

軽減税率が導入された目的は、生活必需品の税率を下げることで、低所得者の負担を軽くすることにあります。しかしその一方で、軽減税率がスタートしたことにより、商品の仕入れ時や販売時の消費税の計算が複雑となりました。消費税率が複数あると、たとえば「請求書に書くべき消費税が本当は10%で計算すべきなのに、間違えて8%で計算してしまった」などのミスが起こりやすくなってきます。

こうした状況の中、商品の税率および税額などを明確に記載したインボイス(適格請求書=「区分記載請求書」)の交付様式について、厳格な規定を設けるべきとの議論が高まりました。その結果として導入が決まったのが、インボイス制度なのです。

インボイス制度の落とし穴とは

経理部門や個人事業主は、2023年10月からのインボイス制度施行に備えて、必要な対応策を取ることが求められます。しかし、インボイス制度の内容をしっかりと理解していないと、思わぬミス=「落とし穴」にはまる恐れがあるので注意が必要です。

まず注意すべきポイントは、交付したインボイスに保存義務がある点です。現行法では、請求書については控えの作成義務はありませんが、インボイス制度が始まると、その義務が課せられます。

しかも現在、2022年1月から施行された改正電子帳簿保存法により、電子データを紙に出力して保存することは禁止されています(猶予期間は2023年12月31日まで)。つまり、インボイス制度と合わせて考えると、「電子データのインボイスを紙に印刷して保存したから、義務を履行した」とはならないので、この点も注意しましょう。

二つ目の注意点としては、インボイスを交付する場合だけでなく、交付を受けたインボイスについても保存する義務がある点です。

これは、交付者が作成したものをそのまま保存する義務があることを意味します。たとえば現行制度だと、請求書を受け取った際、その内容に簡単な不備(ちょっとした記載漏れ)があれば、受け取った側が追記・修正できます。しかし、インボイス制度の施行以後はそのような行為は認められず、相手に再交付や別書面による補完を求める必要があるのです。

さらに三つ目の注意点として、日々行う記帳のパターンが増えてしまうことが挙げられます。

現行制度の下での消費税ごとに作成する請求書の様式は、標準税率である10%のもの、軽減税率の8%のもの、その混在するバージョンのもの、という3パターンのみです。

しかしインボイス制度が開始されると、インボイス制度に則った「適格請求書」と、それに則っていない「非適格請求書」を分けて作成する必要があります。「非適格請求書」のような請求書を作成しなければならない理由は、インボイス制度開始後に二種類の経過措置制度が設けられているからです。

インボイス制度が実施されると、免税事業者のような適格請求書を発行しない相手から課税仕入れを行った場合、適格請求書がないので先述の仕入税額控除は受けられなくなります。

この変化による衝撃を緩和するために、免税事業者などから仕入れを行った場合でも、所定の期間を設けて、一定割合については控除を受けられるようにしたわけです。具体的には、2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%控除可能、2026年10月~2029年9月までは仕入税額相当額の50%控除可能とされています。

ところが、この経過措置を設けたことで、「非適格請求書(軽減税率8%、経過措置適用80%の場合)」や「非適格請求書(標準税率、経過措置適用50%の場合)」など、請求書の発行パターンが大幅に増えてしまいます。経理担当者は、自社が交付する/受け取る請求書が、どのパターンになるのかを前もって理解しておくことが大切です。

まとめ

インボイス制度とは、売り手である登録事業者が買い手側に求められた時に、インボイスを交付する義務を負うことを規定した制度です。2023年10月から施行されます。

しかしこのインボイス制度は、所定の書式に則ったインボイスを交付または受領すればいいという制度ではなく、売り手側と買い手側の双方に「保存の義務」があるので注意が必要です。また、この制度には猶予期間があり、それにともなって記帳様式のパターンが増えてしまうことも、前もって理解しておく必要があります。

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