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諸外国に比べて実質賃金が上がらないという厳しい声に、日本政府が出した答えは、仕事の中身によって賃金が決まる「職務給」への移行でした。今後2023年6月までに具体的な指針を明らかにするようですが、職務給への移行は賃金の上昇につながるのでしょうか。
目次【本記事の内容】
日本政府は経済成長率の低さと国際競争力の低下に危機感を抱いており、それと連動する実質賃金の問題でも、国民やメディアから無策ぶりを指摘されています。
この状況を打破するために、政府はすでに10回ほど「新しい資本主義実現会議」を開催しています。そこで議題に挙がっている課題は何なのか、主なものをまとめてみましょう。
・これまでの資本主義の見直し=グレート・リセット
・低い経済成長率
・国際競争力の低下
・産業界の低い生産性
・人材の不足
・収束しないデフレ環境
・企業に広がるコストカット重視の傾向
・中間所得層の伸び悩み
・上がらない実質賃金
こうした課題を解決しながら、企業の収入と政府の歳入を増やし、それを分配する仕組みを整えることで、新たな需要を喚起して消費や投資を増やすというのが、政府が掲げている新しい資本主義の骨子です。
企業内での賃金制度を年功給から職務給へと移行することも、新しい資本主義を実現するための1ステップと考えられます。
伝統的な日本の職場環境では、終身雇用と年功給の組み合わせが長く一般的でした。年功給は勤続年数が長くなるほど賃金が上がる仕組みのため、企業に対する従業員の所属意識が高まり、ベテラン社員から若手社員へと業務ノウハウを伝達しやすいというメリットがあります。
その反面実績が反映されにくいため、生産性が上がらなかったり、優秀な人材が集まらなかったりするデメリットもあります。
とくに終身雇用が崩れつつある現状では、年功給のマイナス面が強まるかもしれません。
一方の職務給とは、ひと言で表すと成果主義の賃金体系です。職務給は働く本人の担当業務、業務に対する責任の度合い、業務上の成果などをもとに賃金が決められます。勤続年数や年齢は重視せず、担当業務に対する実績・成果が給与の算定基準になるのです。
職務給制度のもとでは、高い評価を得れば年齢にかかわらず賃金が上がるため、従業員のモチベーションが上がり企業の業績も向上するというメリットがあります。また、人材不足が続く現状でも、優秀な人材を集めやすいという利点もあります。
ただし、職場への帰属意識が希薄になりがちで、転職が活発に行われるようになり、優秀な人材の流出を招くというデメリットもあります。年功給にも職務給にも、それぞれに一長一短があると言えるでしょう。
新しい資本主義実現会議で描かれるイメージでは、経済成長により分配の原資を稼ぎ出し、それを次の成長につなげるために分配することにより、経済市場全体の活性化を促して、持続可能な社会を実現するというビジョンが描かれています。ただし、具体的な施策はまだこれから決められるようです。
現在は転職が一般的になり、優秀な人材が幅広い分野で活躍できるチャンスが広がっています。職務給の導入により、日本でも成果主義のビジネス環境が常識になるかもしれません。いずれにしても、新しい資本主義の進展を見守る必要がありそうです。
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