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セレンディップ・ホールディングス株式会社は、中堅・中小製造業に特化した事業承継を行う事業投資会社として2006年に創業しました。単にM&Aするだけではなく、買収先にプロ経営者を送り込み、バックオフィス機能を「シェアード化」するとともに、製造現場のDX化・省人化を進め、様々なノウハウを傘下のグループ企業に提供することで、事業のバリューアップを図っています。
今回は同社の取締役CFOの小谷和央氏に監査法人時代の苦労話や同社のCFOになるまでの経緯、上場のエピソード、今後の展望について伺いました。
<プロフィール>
小谷 和央(おだに かずひさ)
セレンディップ・ホールディングス株式会社 取締役CFO
同志社大学経済学部卒業
公認会計士合格後、新日本有限責任監査法人に入所。主に上場企業等の法定監査業務に従事。
現在は、セレンディップ・ホールディングス株式会社の取締役として、ディスクロージャーおよびJ-sox対応を担当。子会社のバックオフィスのシェアード化業務にも携わる。
――(清水)まずは、小谷さんのご経歴を教えていただけますか?
大学在学中に公認会計士の資格を取得しました。公認会計士を目指したきっかけは、専門知識を活かした業務に携わりたいと考えたからです。
合格後は新日本有限責任監査法人に入所し、名古屋事務所で東海地区のクライアントを中心に、上場企業の金商法監査、会社法の監査や上場準備の会社にも携わりました。地域柄、製造業のクライアントが多かったです。
――(清水)監査をしていて、これまでに印象に残る出来事はありますか?
失敗談ならいっぱいあります(笑)。
例えば、監査法人の仕事をしていると年に1回程度、クライアントの経営者とのディスカッションがあります。
その際、とある社長から改善案を求められ、私は「原価の見える化をして、取り組んだ方が良い」という模範的な提案をしました。それに対して、「見える化したら、具体的にどんな利益があるの?今より儲かるの?」と聞かれたのです。
今だったら、「原価の可視化」が何のために必要なのか、どんなメリットがあるのかを伝えられると思いますが、当時の私は答えられませんでした。
恥ずかしながら目的を横において、あるべき論で語ってしまいました。何より、企業の経営者は、利益につなげるHow(どうしたら)に対してアドバイスを求めていることに気づけていませんでした。
そうですね。ただ、それから「どうしたら儲かるか?」ということを経営者は常に必死に考えているということに気がつくことができ、非常に良い経験になりました。
結局、その体験から最終的には、企業成長のためのミッションを担いたいと考えるようなりました。監査法人の中で、IPO支援の部署に異動するという選択肢もあったのですが、その時に事業会社で当事者として企業経営に携わりたいと考えるようになりました。
――(清水)数ある事業会社の中でも、セレンディップ・ホールディングスを選んだのは何故ですか?
実は最初は転職ではなく、監査法人に在籍しながら出向という形で当社に参画しました。
監査法人に長く勤めていた私にとっては、いきなり事業会社に転職するよりも、段階的にキャリアチェンジできたのは助かりました。また、代表の髙村も公認会計士としての一面を持っており、会計士には何ができ、何ができないかを理解してくれる経営者であったことも、働きやすさの一つでした。
実際に関わらせていただく中で、投資先に入り込んで経営改善も行う当社であれば、M&Aやコンサルティングに携わることができ、公認会計士の知見を活かしつつ、幅広い経験が積めると考えて魅力を感じました。
――(清水)特徴的なビジネスモデルですね。改めてどんなサービスを展開しているのか教えていただけますでしょうか?
弊社のミッションは『100年企業の創造』『経営の近代化』です。
国内の中堅・中小製造業は経営者の高齢者に伴い、時代の変化に柔軟に対応することが困難になっています。それらの深刻な課題に対して、当社は事業承継にお困りの企業をM&Aで当社にグループインしていただき、プロ経営者を送り込み、ハンズオンで経営支援を行うことで解決策を見出しています。
買収企業のソーシングから投資、その後の経営支援も全てインハウスで行うことが大きな特徴です。子会社の経営を巡航高度まで上げていくため、我々は一連の機能を標準化した仕組みとして構築しました。その仕組みを「事業承継プラットフォーム」と呼んでおります。
また、一連の流れを外部に委託せずに全てをワンストップで行うため、製造業の経営に関するノウハウが社内に蓄積されていきます。その蓄積されたノウハウを活かして、製造の品質、効率を向上させるため、IoT化や自動化も支援しています。
自社開発した製造現場DX支援ツール「HiConnex」や協働ロボットの導入など、ナレッジマネジメントやDXを強力に推進しています。
――(清水)M&Aから経営改善まで、一貫して携わることができるのは、会計士の方が活躍できる環境ですね。具体的には、どのような経験を積めるのでしょうか?
プロジェクトを通じて、かなり幅広い業務が経験できます。CFOの立場になるので、買収に関わるファイナンス、人事制度の構築、職務権限の見直しやコーポレート機能の整備、内部管理体制などオールマイティに行います。
また、会社の方向性を見極めるために、M&Aの段階から関わります。設定した仮説に基づいて、プロジェクトを実行していく流れです。
――(清水)実際に小谷さんは、どのような業務に携わっていましたか?
出向した当時は、企業再生、組織再編など主に経営コンサルティング業務に携わりました。しばらくすると会社として初のM&Aプロジェクトが始まり、投資会社としての機能を高めるために内部統制構築業務にシフトチェンジしました。
その後上場することになり、監査法人時代に経験したいと思っていたIPO準備にも携わることができました。自社の上場も外部委託を行わず、全て社内で取り組みました。大変な時期でしたが、今となっては大事な経験だったと思います。
現在は、経理業務のシェアード化、内部管理体制の整備、ストックオプションの設計、資本政策、審査対応、IR等、グループ内のバックオフィスに関わることを全般的に見ています。
管理部門すべての業務に経験者を配置することはできないので、経験者がいない業務に関しては外部の専門家の協力を得ながら私がサポートに入って業務を回しています。ほんとうに何でも屋さんです。
――(清水)会計士の方にとって、御社ならではの魅力はどんなところですか?
弊社には経営コンサルティング、投資、製造業の子会社と幅広い部門があります。会計士以外の専門性を持った方も多くいるため、人脈を広げることもできます。転職しなければできないような多分野での経験を、一社でできるのが大きな魅力です。
――(清水)今後のご自身のキャリア像について教えていただけますでしょうか?
キャリアを選択する際、常に自分が「ワクワクする仕事」に挑戦したいと考えています。そして限界を作らず、何でもチャレンジしてみたいです。
専門性については狭い分野の中でも深く・広く業務に携わることで、かけ算式にキャリアを積んで、希少な人材になれればと思っています。
――(清水)弊社ビジネスメディア「マネジー」のユーザーは管理部門の方が中心となります。そのような管理部門の方々へ、これまでのご経験からメッセージをいただけますでしょうか。
管理部門の方々に関して言えば、帳簿管理をするだけでは活躍の幅が狭まってしまうと思います。
今後、期待されているのは経営者とビジネスパートナーとして歩むことができる人材です。実際にCFOを経験して感じたことは、経営者は過去の数値の分析だけには、あまり興味がないということです。
最も関心があるのはロジカルな分析を基にした将来予測や課題発見の方です。
そういった、経営者からの期待に応えられる人材が経営管理部門には求められていると思います。ぜひ、一歩踏み出したフィールドで挑戦して欲しいです。
――(清水)以上になります。本日はありがとうございました。
監査法人での苦い経験を経てコンサルティング事業会社に出向、それを転機に会計士のキャリアの幅を広げた小谷さんにお話しを伺いました。
常に自分が「ワクワクする仕事」に挑戦したい、そして限界を作らず、何でもチャレンジしてみたいと積極的な姿勢に魅力を感じました。また、これからの管理部門に求められるのは、経営者と同じ目線で物事を考えられるビジネスパートナーであるということを学びました。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division / 執行役員
2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。
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