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スマートフォンの決済アプリなどを使ったデジタル賃金払いが、来年度にもいよいよ解禁される見通しとなりました。はたして、賃金がデジタルマネーで支払われる時代となるのでしょうか。
成長戦略の一つにキャッシュレス決済の普及を掲げる政府は、労使などで構成する厚生労働省の審議会で、デジタル賃金払いについて2年前から議論を重ねてきました。
そして、デジタル賃金払いに関連する省令の改正案が、厚生労働省の審議会で了承され、2023年4月に施行となりました。賃金をデジタルマネーで支払う制度が、いよいよ運用されることになりそうです。
デジタル賃金払いとは、賃金が銀行口座ではなく、資金移動業者のキャッシュレス決済口座に、デジタルマネーで振り込まれる仕組みです。
つまり、日常的に利用しているスマホの決済アプリに、給料が銀行口座を経由せずに直接振り込まれることになります。
決済アプリの口座残高は上限100万円に設定し、そのまま買い物などに使え、貯金に回す分については、金融機関口座振り込みにできるようです。
銀行口座を経由しないため、振込手数料は必要ありません。また、銀行口座の開設が難しい外国人労働者への給与の支払いも、決済アプリなら簡単に行えるようになります。
ところで、「民間給与実態統計調査」(国税庁)によると、2019年の給与所得者数は5,990万人で、民間事業者が支払った給与の総額は231兆6,046億円(2019年度)です。
そのほとんどが金融機関口座への振り込みとみられていますが、そのうちのどれくらいがデジタル賃金払いとなるのでしょうか。
11月に発表されたロイター企業調査によると、デジタル賃金払いについては、64%が「様子見」で、「利用するつもりなし」が29%、「利用する可能性を検討」は、わずか6%でした。
*調査概要
調査期間は10月25日から11月4日。
発送社数は495、回答社数は241。
企業がデジタル賃金払いに消極的な理由でもっとも多かったのが「社員のニーズが不明」(85%)です。
デジタル賃金払い導入に社員の同意が必要なため、社員がどう受け止めているのかを把握しきれていないことが、導入のネックになっているようです。
日本トレンドリサーチの「給与のデジタル払いに関する調査」によると、デジタル払い賛成は22.1%、反対は約40.9%と、給与を受け取る側には反対派が多いことが判明しています。
*「給与に関するアンケート」調査概要
調査手法 インターネットでのアンケート ※自社運営のアンケートサイト「ボイスノート」を利用して調査を実施
調査対象者 事前調査で「現在、定期的に給与を受け取っている」と回答した男女
調査期間 2021年4月6日~7日
集計対象人数 1,000人
そもそも、賃金の支払いは労働基準法24条で、「通貨で・労働者に直接・全額・毎月1回以上・一定の期日」を定めて支払わなければならないと定められています。ただし、給与所得者の同意があれば、金融機関への振り込みも、デジタル払いも認められます。
デジタル賃金払いを普及させるためには、給与所得者のデジタルマネーに対する信頼度がカギとなりそうです。ロイターの企業調査でも、社員のニーズが不明という理由に続いてセキュリティリスクへの不安(32%)、スマホ決済の普及度合い(18%)、不正利用時の補償(18%)が、デジタル賃金払い導入に二の足を踏む理由に挙げられています。
*調査概要
調査期間は10月25日から11月4日。発送社数は495、回答社数は241。
デジタルマネーも資金移動業者も、まだまだ歴史が浅く、金融機関のような信用度を利用者から得られているわけではありません。もし、資金移動業者が破綻した場合の補償の仕組みをどうするかなど、デジタル賃金払いの普及には解決すべき課題が数多くあることは、理解しておく必要があるのではないでしょうか。
デジタル賃金払いの普及拡大を目指す政府は、デジタル化によるメリットをいくつか示しています。しかし、銀行振り込みと比べ、それが給与所得者にどれほどのメリットを与えるのかといえば、かなり曖昧です。まずは、便利さの裏にあるリスクへの対応が、強く求められるのではないでしょうか。
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