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政府は、「少額投資非課税制度NISA」の恒久化と、非課税期間を無期限化することを表明しました。投資による資産形成がしやすくなる環境を整えることで、「貯蓄から投資」へと促す狙いのようですが、はたして、目論見通りとなるのでしょうか。
「NISA」は、株や投資信託を買う「一般NISA」と、少額から毎月積み立てていく「つみたてNISA」(年間40万円が上限)があります。
なかでも、若年層の関心が高いのが、手元に投資資金がなくても、毎月積み立てていくことで投資に参加できる「つみたてNISA」です。
その背景にあるのは、公的年金だけでは、老後の生活を支えられないという不安が、年々大きくなっていることです。年金支給額の減少や、年金保険料の増額など、年金を取り巻く環境が年々厳しくなっていることを、若年層ほど敏感に感じ取っているのではないでしょうか。
年金の財源は、現役世代が納める年金保険料で賄われています。このまま少子高齢化に歯止めがかからなければ、年金保険料を納める人が少なくなり、受給者ばかりが増え続けることになります。
だからといって、年金保険料を簡単に上げるわけにもいきません。現役世代の保険料負担がこれ以上重くなると、年金制度そのものが破綻してしまうという、最悪の事態も招きかねません。
リタイア後も安定した生活を送るためには、老後資金をせっせと貯めなければなりませんが、賃金が物価高騰に見合うだけ上がっていませんから、それもなかなか難しいのが現状です。
年金への不安が高まるなか、2018年に登場したのが、2042年までの期間限定で、運用益の一定額を非課税(最長20年間)にする少額投資非課税制度NISAです。
しかし、期間が限定されていることがネックとなり、このままでは老後の資産形成に向けて十分活用できないと、証券業界などから指摘されていました。
そこで、いつでも始められるように期間限定を取り止め、最長20年間だった非課税期間もなくし、投資で得た金融商品などを売却しない限り、運用を続けられるようにしたわけです。
「少額投資非課税制度NISA」の恒久化と、非課税期間の無期限化に踏み切ったのは、老後の資産形成だけを目的としたものではありません。
岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の目玉である、個人が貯めこんだ預貯金を投資へ振り向けることで、経済再生につなげていきたいという狙いがあります。
“老後資金2,000万円”問題もありましたから、これまで投資に興味を示さなかった人の関心も高くなっています。そこにNISAをより活用しやすくするための施策が打ち出されたわけですが、それがはたして功を奏することになるでしょうか。
懸念されるのは、投資には損失リスクがつきもの、ということです。必ずしも、運用益を手にすることができるわけではありません。
しかも、為替変動が激しく、歴史的な円安がこの先どうなるのか、株価がどう動くのかの見通しも、なかなか立たない不透明な状況です。
また、大手仮想通貨交換所の経営破綻も、投資に対する不安要素となっています。結局、「少額投資非課税制度NISA」の恒久化と、非課税期間の無期限化によって、誰が得することになるのか、注意深く見ていくことも大切なようです。
そもそも、公的年金だけでそれなりの老後生活が営めるなら、多少、年金支給額が減らされようと、節約することでなんとかしのげるはずです。しかし、「貯蓄から投資へ」というフレーズが声高に叫ばれれば叫ばれるほど、それすら“ままならなくなるのでは”という不安感に襲われてしまう人も、決して少なくはないようです。
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