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給与「デジタル払い」解禁へ 知っておきたい10の知識

(更新)
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入社時に特定の金融機関の給与口座を指定され、そのまま普段使いの口座として利用する会社員も多いはず。そんな常識が変わろうとしている。企業が給与について銀行口座を介さず払えるようにする議論が厚生労働省の審議会で進んでいる。「○○ペイ」などを運営する資金移動業者が提供するスマートフォンのアプリでデジタルマネーとして給与を受け取り、即座にスマホ決済ができるようになる。キャッシュレスを加速させる好機になりそうだが、問題点はないのか。整理した。

◇  ◇  ◇

1:そもそも現在の給与支払いのルールはどんなもの?

労働基準法24条では「賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と規定されている。モノなどの現物支給は禁止されている。細かくいえば、(1)「通貨」で(2)「直接」(3)「全額」を(4)「毎月1回以上」の頻度で(5)「一定期日」に、企業は労働者に給与を払わなければならない。この(1)~(5)は「賃金支払いの5原則」として労基法に定められている。

ただし例外的に、企業と労働者間の同意などがあれば、労働者が指定する銀行その他の金融機関の口座や、証券総合口座への振り込みなどで給料を支払うことが労基法の施行規則で認められている。今では当たり前となっている銀行口座への給与振り込みは、法律上では例外となっている。

2:デジタル給与払いになると、何が変わる?

政府は、給与支払いのデジタル化を解禁する方針を示している。1月28日から厚生労働省労働政策審議会で専門家による議論が始まっている。現在の施行規則を改正し、PayPay(ペイペイ)、LINEペイなどスマートフォン決済サービスなどを提供する「資金移動業者」の口座にも給与を振り込めるようにすることが想定されている。

3:具体的な方法は?

資金移動業者が発行するプリペイド(前払い)式の給与振り込み用カード「ペイロールカード」の導入が想定されている。企業は銀行などの金融機関を経由せずに直接ペイロールカードの口座に振り込むことができる。こうしたペイロールカードをPayPay、LINEペイ、メルペイなどといったキャッシュレス決済事業者のサービスと接続して、給与を残高として扱えるようになれば、買い物でスマホ決済がしやすくなる。ATMなどで現金を引き出すことも可能だ。ちなみに米国では、ペイロールカードがすでに普及している。

4:制度変更の背景は?

菅義偉政権が掲げる政策の目玉の1つに、行政サービスや社会全体のデジタル化の推進が挙げられる。給与は生活資金の基盤となるため、給与払いのデジタル化を解禁することで、社会のキャッシュレス化を加速させるとともに、国全体のデジタル化を促したい狙いがある。日常の買い物シーンでは、QRコードなどを使用したキャッシュレス決済が増えており、現状を踏まえた顧客の利便性を考慮した面もある。

5:メリットは?

利用者のメリットとしては、ATMで現金を引き出す手間を省くことができる。また、銀行口座開設のハードルが高い外国人労働者の報酬受け取り手段として活用できる。定期的な給与払いを求めない労働者の資金ニーズにも柔軟に応えることができる。働いてから報酬振り込みまでの期間が短い方を好む傾向にある、日雇い労働者やアルバイトなどの非正規労働者の利便性が向上する。

企業が導入するメリットも大きい。銀行に毎月給与振り込みをせずにすむため、業務効率の改善や手数料削減効果が期待できる。都度払いや少額払いもしやすくなり、従業員の受け取り手段の多様化に対応できる。また、スマホ決済事業者が実施するキャッシュバックなどの特典を間接的に提供できるようになる。

6:デメリット、問題点は?

最も懸念されているのが、資金移動業者が経営破綻したときの対応だ。どのような仕組みで利用者の資金を保全するかが課題となっている。1月28日に行われた労働政策審議会でも、「資金移動業者が経営破綻などした場合、スムーズな払い戻し、資金保全について懸念がある」と指摘され、論点整理が行われた。議論は始まったばかりだ。

銀行その他の金融機関の場合、破綻した際には預金保険制度が適用され、預金者の口座の元本1000万円が保護される。また、預金者へ速やかに払い戻しされる。一方、資金移動業者は供託などで利用者の資金の全額を保全しなければならないが、資金の取扱額が日々変動している資金移動業者の場合、経営破綻時に保全額が十分ではないこともあり、一部しか資金が戻ってこないケースもある。また、全額を払い戻せる場合でも、確定手続きに半年程度かかることが多い。

給与の確実な支払いを担保するために、本人確認をいかに徹底するかも課題となっている。ハッキングなどによる資金の不正流出やセキュリティー不備による不正送金が起きないようにするといった課題への対応、補償の枠組みの整備も必要だ。

7:銀行口座を介した給与支払いの現状は?

全国銀行協会によると、銀行口座の給与支払額の統計指標はない。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、2019年中に民間事業者が支払った給与の総額は前年比3.6%増の231兆6046億円で、給与所得者数は同1.3%増の5990万人(19年12月末時点)となっている。ほとんどが銀行などの金融機関の口座に振り込まれているとみられ、今回のデジタルマネーによる給与支払い解禁は、年間200兆円超、6000万人弱の給与口座の動向に影響を与える可能性がある。

8:給与口座からの出金のうち、キャッシュレス決済の比率は?

全国銀行協会が主要銀行(みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、ゆうちょ銀行)を対象に調べた「キャッシュレスによる払出し比率の調査」によると、集計対象銀行の口座から引き出された19年の出金額は112兆円。このうち、ATMなどの現金引き出しが全体出金額の48.9%、キャッシュレスによるものが51.1%で、キャッシュレスが現金引き出しを上回っている。キャッシュレスの内訳をみると、クレジット払いなどの口座振替が全体の33.7%を占め、インターネットバンキングでの振り込みが8.8%、ATMからの振り込みが4.1%。年々、キャッシュレス比率は増加傾向にある。

9:銀行界、労働団体の反応は?

顧客基盤の流出にもつながりかねない銀行界からは「顧客との接点機会を失いかねない」との声が上がる一方、「安心して預けられる銀行口座の優位性は変わらない」(メガバンク関係者)という見方や、「月何十万円もスマホアプリに給与として送金してほしいという労働者がそれほど多くいるとは思えない」(同)と冷静に捉える声も出ている。とはいっても資金移動業者が銀行の経営基盤を揺るがす脅威の存在となりうることから、危機感は大きい。

労働団体からは急速な制度変更に対する懸念の声が上がる。日本労働組合総連合会(連合)は1月28日に会見を開き、資金移動業者が経営破綻した際の顧客保護の整備が不十分としたうえで、「労働者の生活の糧である賃金の支払い方法は安全で確実な方法でなければならない」などと述べるなど、今回の制度改正に現時点で反対の立場を取っている。

10:資金移動業者を監督する金融庁はどうみている?

資金移動業者を監督する金融庁は「資金決済法に基づいて引き続きモニタリングする」として厚生労働省との連携を密にして対応する考えだ。利用者の資金保全については、現時点では、今の資金決済法のスキーム(供託などで全額保全)に基づいて監督していくとしている。20年の資金決済法改正によって現行類型(送金総額1件あたり100万円)に、少額類型(同5万円)、高額類型(上限なし)を加え、送金額に応じた規制を適用することになり、よりきめ細かく監督するようになった。資金移動業者の数は80(20年12月時点)。金融庁は「資金移動業者といってもさまざまある。今回のデジタルマネーによる給与振り込みに関しては、不正送金など何か起きたときのインパクトは大きい。こうしたリスクをみて、ペイロールカードを発行する業者についてはより重点的にみていくことはある」として、今後、監督を強化する可能性もあるとしている。

(日経ビジネス 小原擁、武田安恵)

[日経ビジネス電子版 2021年2月5日の記事を再構成]

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