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 3月期決算企業の株主総会が2022年6月29日にピークを迎える。現在、株式市場関係者の関心が集まっているポイントの1つは、会場に足を運べない株主でもインターネット経由で参加できる「バーチャル株主総会」の開催動向だ。

 東京証券取引所などを運営する日本取引所グループによる2022年6月15日までの集計によれば、同年3月期の定時株主総会においてバーチャル株主総会を実施すると回答した企業は全体の2割弱となる401社だ。内訳を見ると、取締役選任案などに対する議決権行使や質問、動議が会場でもオンラインでも可能な「ハイブリッド出席」型が26社(1.2%)、オンラインではそれらができない「ハイブリッド参加」型は369社(16.7%)である。

 一方、会場を設けずオンラインに特化した「バーチャルオンリー」型の総会を開催する企業は6社(0.3%)にとどまっている。ヤフーやLINEを傘下に持つZホールディングス、ソフトウエア開発のアステリアなどのIT関連企業が同方式で開催する。

2022年3月期決算企業によるバーチャル株主総会の実施意向
2022年3月期決算企業によるバーチャル株主総会の実施意向
(出所:日本取引所グループのデータを基に日経クロステック作成)
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「バーチャルオンリー」は2021年6月解禁

 バーチャル株主総会を巡っては、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降、ハイブリッド型で開催する企業が急増した。そもそも従来の会社法の規定では、株主総会を開催する際に物理的な「場所」を定める必要がある。ただしハイブリッド型なら現行法下でも開催可能と解釈されており、新型コロナ感染予防の観点から採用が進んだ。

 一方、バーチャルオンリー型が国内で登場したのは2021年である。会社法の特例として同方式の開催を認める産業競争力強化法等改正法が同年6月に施行されたのがきっかけだ。具体的には同年8月に東大発のバイオベンチャーであるユーグレナが日本初のバーチャルオンリー型総会を開催し、スマートフォン向けゲームを手掛けるグリーなども続いた。