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「監査経験だけの会計士は事業会社で活躍できない」と断言する会計士が実務を通じて確立した「これからのCFO像」【CFOインタビュー プロパティエージェント株式会社 取締役CFO岩瀬晃二氏】

公開日2023/04/14 更新日2023/06/05


プロパティエージェント株式会社は、「不動産と不動産サービスの価値を創造、向上し、社会を進化させ、人の未来を育み最高の喜びを創出する」を企業理念に、2004年に設立。

以来、真の資産の代理人(プロパティエージェント)として、時代変化に揺らぐことのない新しい価値創造を続けています。実際におよそ2年に1回のペースで新規事業・新規サービスを開発しており、不動産関連の事業を中心にDX推進事業も成長しています。

急成長を遂げている企業をバックオフィスから支える岩瀬晃二取締役に、CFO就任までの経緯や今後のCFOの役割などについて伺いました。

<プロフィール>

岩瀬晃二(いわせこうじ)/ プロパティエージェント株式会社 取締役/ 公認会計士

2006年、九州大学工学部を卒業し公認会計士試験合格。
同年に有限責任監査法人トーマツに入所し、主に専業商社や大手小売業の監査業務に従事。
2011年、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に転籍し、企業再編を中心としたアドバイザリー業務に従事。
2014年、プロパティエージェントに入社。2015年、同社取締役就任(現任)。


入所2週間にして「辞めたい」と思った大手監査法人

――(清水)最初に岩瀬さんのご経歴を教えてください。公認会計士の資格をお持ちなので、資格取得を目指したきっかけも伺いたいです。

大学進学にあたって、将来の職業選択に対して「手に職を付ける」ことが大事だというイメージがあったからです。

私はもともと工学部出身のバリバリの理系なので、大学の授業では物理学や化学をやっていました。同級生は研究職などに就職していく環境でしたが、将来それを仕事にしたいと思えませんでした。漠然と将来自分でビジネスをやっていきたい、起業する可能性もあるなと思っていたので、何かそれに役立つ仕事に就きたいと考えました。公認会計士は、資格としても優位性があって、長期的に需要が尽きない資格だと当時学生の私なりに考え、取得を目指しました。

試験に合格したあと、他の合格者同様に大手監査法人に就職しました。

しかし、入所して2週間で、「辞めたい」と強く思いました。正直なところ、監査の業務は肌に合わず、やりがいを見出せませんでした。とはいえ、結果的に9年勤め続けたので、似たタイプの会計士の中では長く在籍した方だと思います。その間、ずっと「何か違うな」とモヤモヤした思いでいました。

――(清水)確かに監査業務にやりがいが無いという理由で転職する会計士の方は、毎年一定数いますね。その辺り、改めて具体的にどういうことなのか教えていただけますか?

本来、監査業務は「1円たりとも間違ってはいけない」というものではありません。

「重要性の基準値」という、いくら以上の間違いは監査意見を出せないといった基準があって、会社規模にもよりますが、間違いがあっても一定額は監査意見に影響しないんです。

ところが、仮に監査先で確認した金額と帳簿の金額が5円異なっていた場合、「5円ズレていますが、差が僅少なのでこれ以上は手続きしません」と記載し調書を提出すると、「本当に差は5円なのか?」となることがあって。上長に「その他にもズレている可能性があるし、万が一、故意だったらいけない」と指摘されました。

確率論的に考えたら、そうした可能性は非常に低いですし、故意で差異を記帳することが非常に高度なことだということは、会計士が合理的に考えればわかります。しかし、実際には必要以上に細部まで確認することを求められました。

こうした環境が自分には合わず、何のために資格を取ったのか、専門的な知識を身に着けたのかと感じることが少なくありませんでした。

――(清水)歯がゆい時期を過ごされていたんですね。とはいえ9年勤められたのは、何か理由があるのですか?

9年内で監査業務は6年やっていたのですが、仕事内容にやりがいは感じないものの、私はクライアント企業に恵まれていたと思います。クライアント企業の経営戦略や事業内容など、ビジネス自体もそうですし、組織や中で働いている人たちにとても興味がありました。

例えば、会計帳簿はそれ自体は単なる数字の記録でしかないのですが、その企業のビジネスや組織まで俯瞰的に理解することで、単なる数字ということではなく、現在その企業がおかれている状況や、今後選択するべき経営判断といったことまで読み解けてきます。

そうした経験を通じて、最終的にさまざまな経営判断や事業運営が会計上ではどのように現れるのかを学ぶことができました。

監査経験しかない会計士は事業会社で活躍できない

――(清水)CFOの立場になった今に繋がっている経験ですね。監査法人の最後の3年間は何をされていたのですか?またFASに移籍されていますが、これは希望されたのですか? 事業会社への転職という選択肢もあったと思うのですが。

2011年から同じ監査法人のグループ内にあるFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)に移籍しました。私より先にFASに行った先輩に誘われたのがきっかけです。監査法人でモヤモヤしているのを気にかけてくれたのかもしれません。

元々、いつかは事業会社で挑戦したいと考えていましたが、監査業務を通じて事業会社のことを理解すればするほど、今の自分は使い道がないと感じました。

これは実際に事業会社で働いている今でも強く言っているのですが、監査だけをやってきた会計士は事業会社ですぐに活躍できないです。私は、今後事業会社に転職する際に貢献できるようなスキル・専門性を身に着けたいと思い、まずはFASで経験を積もうと考えていました。

――(清水)実際にFASではどんなご経験をされましたか?

カーブアウト案件のセルサイドアドバイザーがメインでした。売却事業の切り出し数字の作成や、売り手側から第三者的立場でレポートを書いてQA対応をするといった仕事です。

監査と違い、事業や組織のことを知らないと売却事業の切り出しの財務諸表は作れませんので、まさに自分に不足しているスキルが身に付く環境でした。

また、事業会社に来たら当たり前ですが、事業の将来を見据えて、それを数字に表すというスキルが身に付きました。

「誰と働くか」を重視して現職に転職

――(清水)FASでの経験を経て、事業会社の現職に転職していますね。転職先はどのように選びましたか?

FASを3年ほど経験したことで、さらに当事者として事業に携わりたいという思いが強くなりました。

当時は事業会社だけではなくハンズオン系のVCも希望していました。ただ、役員レベルの経営判断をする経験をしていないということで、選考通過は厳しかったです。そこで、自分のこれまでのキャリアを活かし、経営判断に携わりたい考えて、CFO候補ポジションを希望しました。

――(清水)やはり経営ボードを目指すには、監査とFASの間にもう一つステップが必要なんですね。キャリア上、重要な選択だと思いますが、現職のプロパティエージェントの決め手は何でしたか?

言葉が悪いのですが、うちの社長は喧嘩を売るようなことを質問をしても怒らない、冷静な人だったからです。(笑)

面接の時は敢えて、コア事業の将来性を否定したり、企業にとって都合が悪いような質問をしたりしていました。社長には「不動産投資の業界は長期的に先行きが厳しいと思いますが、どう考えていますか?」と聞いたのですが、気分を害することもなく、自社の勝ち筋について冷静に話をしてくれたんです。むしろ、業界を知らなかった私にもわかりやすいような言葉や例えを交え、「どう言ったら相手が理解してくれるか」という視点で説明してくれました。私自身、言いたいことはハッキリ伝えるというタイプなので、冷静で、客観的な言動が出来るこの人となら、一緒に事業をやれると思えたのが、決め手になりました。

企業選びは人それぞれに重視するポイントがあると思いますが、私は「誰と働くか」が重要だと考えています。事業自体は余程脈のないものでなければ、外れは無いと考えています。それよりも、自分がどう貢献するかを考えた時、一緒に働く人の人間性は重要だなと思います。

――(清水)魅力的な社長ですね!御社の具体的な不動産事業について、教えていただけますか?

不動産事業とDX推進事業の二本柱に、新しいサービスや事業に積極的にチャレンジしています。

私の入社当時は不動産事業だけで、収益不動産の売買、ワンルームマンション投資を行っていました。それから概ね2年に1回のペースでサービスを拡大しています。最初は居住用マンションの販売、次がアパートの開発・販売、そして中古の流通部門まで展開し、事業の幅が広がりました。

また新事業として、不動産投資型クラウドファンディング「Rimple」を進めています。

――(清水)競合が多い業界ですが、貴社の強みはどこにありますか?

強みは、変化に対して柔軟に対応できる経営陣であり、組織であるということです。弊社が持つ根本的な価値観のなかに「変わらないことは維持ではなく衰退だ」というものがあります。標榜するだけではなく、実際に2年に1回ペースで積極的に新しいサービスや事業の開発に取り組む会社のなかで、在籍する社員も変化することが当たり前だと感じていると思います。この風土を醸成できていることが、一番の強みです。

「問題の把握」と「改善へのアプローチ」がCFOの役割


――(清水)成長企業は変化に対してポジティブですよね。一方で、変化を良い意味で安定化させるのが管理部門の役割だと思いますが、貴社の管理部門ではどんな経験が積めるのですか?

弊社は、さまざま変化がある環境なので、転職をしなくても幅広い経験を積むことができます。変化が苦手な管理部門の方もいますが、それってネガティブな変化ですよね。今の弊社はポジティブな変化を経験できるステージにあると思うので、そこに前向きに取り組める人には非常に面白いはずです。

新しいことにチャレンジして、経験値を高めたいと考えている人とは、ぜひ一緒に仕事をしたいです。

――(清水)最後に、岩瀬さんが目指すCFO像と管理部門で活躍を目指すManegy読者に向けてメッセージをいただければ幸いです。

よくたとえて言われることですが、企業にとってのお金は、人間にとっての血なので、足りなければ輸血するし、多ければ献血する必要がある。もし血が行き渡っていない部分があれば、そこに血流を持っていくことが必要です。

重要なのは、悪いところがどこにあるのか、CFOが把握していることです。分からなければ改善できないですし、そのまま気づかずにいると手遅れになることもあります。会社で言えば、まずは事業の問題点を素早く的確に把握することが必要で、そこから適切な方法を導き出して、解決することが求められます。この責任を負うのが、CFOの役割だと私は考えています。

特に弊社のようなミドルサイズの会社のCFOの場合、調達や配分の役割だけに留まっていたら、事業の成長に寄与できていないどころか、成長を阻害してしまう可能性もあります。必要があれば、自分で実行することもいとわない行動力が重要なんです。そこにやりがいや面白さを感じています。

また、このスタンスは実はCFOに限らず、管理部門の全員が持っておくと良いと思っています。経理で言えば、会計はあくまでツールなので、会計や経理の業務だけにこだわりすぎると、木を見て森を見ずになってしまう。

管理部門で何が最も重要かというと「事実を把握した上で課題を見いだし、解決する能力」、これに尽きるのではないかと思います。

――(清水)本日は貴重なお話しをいただき、ありがとうございました。

まとめ

CFOを目指す多くの方がチャレンジする成長フェーズの企業には、ポジティブな変化と組織の高揚感もあると思いますが、それをしっかりと支え、場合によっては自ら牽引することが管理部門にも求められてきています。
インタビューを通じて、自分の立場や役割だけに固執するのではなく、組織としての課題に当事者意識を持って臨むことが、これからの管理部門にとって重要だと感じました。



インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ マーケティングDivision / 執行役員

2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在はマーケティングDivision長/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。


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