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【詳細解説】22年3月度の国内企業物価指数 伸び率は縮小するも過去最高水準

公開日2023/05/16 更新日2023/05/15


4月12日、日本銀行は22年3月度の国内企業物価指数が、前年度の同月比7.2%増の119.4となったことを発表しました。同時に発表した22年度の国内企業物価指数は117.0で、前年度比9.3%増でした。年単位では過去最高値となり企業間取引の顕著な物価上昇がみられる一方で、月単位の伸び率は縮小傾向にあり、物価の上昇が沈静化しつつある傾向も見られました。



企業物価指数とは

企業物価指数とは、企業間で売買される物品等の価格変動を示す指標です。物品等の価格変動は企業間取引価格から始まり、消費者が購入する物価へ反映されていきます。企業物価指数は景気動向を先読みする指標として重要視されているのです。


20年度の値を基準値(=100)として物価の上下が表現され、例えば指数が110だった場合は20年度比で10%物価が上昇したことになります。


ちなみに企業物価指数には主に三種類あります。今回紹介する「国内企業物価指数」はその一つで、国内で生産した国内需要家向けの財を対象とした指数です。他にも「輸出物価指数」と「輸入物価指数」があります。


企業物価指数とは別に、消費者物価指数という指標もあります。消費者物価指数とは、消費者が購入する物品価格などをまとめて指数で表したものです。国内企業物価指数と同じく、基準値を100として表現され、企業物価指数と一緒に見られることの多い指標です。


たとえば企業物価指数の伸び率と比べて消費者物価指数の伸び率が低い場合、国内全体でみて企業はコスト上昇分を消費者販売価格に十分に転嫁しきれていないと分析できます。


時系列でみた動向

月単位でみると、国内企業物価指数の上昇は落ち着く傾向が出ています。ウクライナ侵攻が始まった22年2月以来、前年度比で9.3%を超える水準が続いていましたが、2023年2月になると前年度比8.3%、2022年3月は7.2%でした。物価が上昇していること自体は変わらないものの、伸び率は小さくなってきています。


ただし年単位でみると、国内企業物価指数は1980年以来、過去最高値を記録しました。過去43年間で110以上となった年は、第二次オイルショック(1978年-1982年)の影響もあった1980年から1984年の5年間だけで、その記録を更新したのです。当然ながら、日本経済に及ぼす影響は非常に大きいといえます。


業界別でみた動向

業界別に国内企業物価指数の動向をみると、「鉱産物」「電力・都市ガス・水道」「鉄鋼」「金属製品」が特に高い伸び率を示しています。共通しているのは、原材料や水光熱といった、事業活動における上流部分で物価上昇が顕著にみられていることです。今後は中・下流への価格転嫁がさらに進む可能性があります。業界23分野のなかで伸び率が高かった業界を月別・年度別に紹介します。


【月別の国内企業物価指数伸び率 トップ5】
(23年3月度:前年度同月比)
1 鉱産物:28.1%
2 電力・都市ガス・水道:26.8%
3 鉄鋼:17.4%
4 パルプ・紙・同製品:14.3%
5 金属製品:12.5%


【年度別の国内企業物価指数伸び率 トップ5】
(22年度:前年度比)
1 電力・都市ガス・水道:37.6%
2 鉱産物:30.7%
3 鉄鋼:23.8%
4 金属製品:12.1%
5 木材・木製品:11.3%


消費者物価への反映

総務省が3月24日に発表した消費者物価指数(2020年基準)によると、最新の23年2月度は104.0で前年度同月比3.3%の伸び率となり、消費者価格においても物価の上昇傾向が見られます。22年2月度から伸び率は上昇傾向が続いていましたが、23年1月度の4.3%をピークに、それ以降は低下の傾向にあります。


企業物価指数に比べると伸び率は低く、全体として企業側はコスト上昇分を消費者向けの販売価格に転嫁しきれていない可能性があるでしょう。現在の傾向が続くと企業の収益を圧迫し、賃金上昇を阻害する要因にもなり、日本全体で負のスパイラルに陥る可能性も否定できないでしょう。


消費者物価指数は、家計に影響する消費財やサービス10分野それぞれについて動向を整理しています。品目別にみることで、どの品目で価格転嫁が進んでいるのか把握できます。


【品目別の消費者物価指数伸び率 トップ5】
(23年2月度:前年度同月比)
1 家具・家事用品:8.7%
2 食料品:7.5%
3 被服および履物:3.6%
4 交通・通信:1.7%
5 教養・娯楽:1.5%


終わりに

国内企業物価指数は、早い段階で日本経済の動向を予想するための有用な指標です。たとえば、自社が属する業界の物価上昇率が自社の値上げ率と比べて高ければ、まだ価格転嫁する余地は残されているかもしれません。
長らくデフレが続いた日本経済にとって、物価上昇によるインフレは必ずしも悪い現象ではありません。


しかし企業にとってのコスト上昇分を販売価格に転嫁し、収益を確保できなければ、競争力の低下が懸念されます。
社会情勢が安定しない現在、自社の商品・サービス価格の設定、従業員に対する賃金の設定等、それらを決めていくためにも、継続的に企業物価指数の動向のチェックをおすすめします。


■参考サイト
日本銀行|国内企業物価指数(2022年度平均 速報)
独立行政法人労働政策研究・研修機構|労働統計用語解説
資源エネルギー庁|【日本のエネルギー、150年の歴史④】2度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む
総務省|2020年基準 消費者物価指数 全国2023年(令和5年)2月分


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