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大型トラックなど商用車のシェア争いで、長年ライバル関係にあった日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが、2024年末までに経営統合することで基本合意したと発表しました。その背景には、モビリティ社会の未来を見据えた両者の親会社の思惑もあるようです。
⇒経営統合・M&Aの秘訣とは?ビジネスチャンスを広げるには何が必要なのか
大型トラックなどの商用車は、配送など社会インフラを支える重要な役割を担っています。しかしカーボンニュートラルや物流の効率化など、改善すべき多くの課題を抱えており、課題解決に取り組むためには、多大な投資が必要となります。
ところが、商用車の市場規模は乗用車に比べると小さく、世界全体の販売台数も年間350万台程度にしかすぎません。そのため、スケールメリットを求めることも難しく、1社単独で課題解決に取り組むのはリスクが大きく、困難な状況にあるといえるでしょう。
そこで、協力関係を築くことにより競争力の強化を目指すという目的もあるようです。両社の親会社であるトヨタ自動車と独ダイムラートラックが、株式公開を視野に新たな持ち株会社を設立し、統合する2社を完全子会社とするという戦略です。
新たな持ち株会社は、トヨタとダイムラートラックが同じ割合で出資して設立しますが、その後は4社で出資比率を協議することになっています。まずは脱炭素につながる商用車の電動化や技術開発、部品や資材の調達で協力し、競争力を高めていくことが狙いです。
もちろん、ライバル企業がタッグを組むことで、競争力強化につながる期待はあります。しかし、今回の経営統合は、エンジン不正により巨額赤字に陥った日野自動車の、生き残りをかけた戦略でもあるようです。
不正が発覚したことにより、これまで築き上げてきた“日野”のブランドイメージも大きく低下したことはいうまでもありません。日野自動車は赤字からの脱却とともに、ブランドイメージの再構築にも取り組まなければなりません。
さらに自動車産業はいま、革命的な転換期に直面しています。AI活用による自動運転や電気自動車、またエネルギー源としての水素活用など、カーボンニュートラル化を進めるにあたっての技術開発に、各メーカーはしのぎを削っている状況です。
さて、このライバル会社の経営統合には、モビリティ社会の未来を見据えたトヨタとダイムラートラックの、共通の思惑も見え隠れしています。
自動車を動かすエネルギーは、ガソリンから電気へとシフトしていますが大型トラックを走らせるためには大きなエネルギーが必要です。そのためには大容量のバッテリーEVが欠かせませんが、そうなると電池の重量が重くなります。
そこで、水素の活用にも力を入れているダイムラートラックとトヨタは、大型トラックのカーボンニュートラル化を見据え、商用トラック市場をリードしていきたいという思惑があるようです。
さて、新会社が運輸業界のカーボンニュートラル化を加速させ、より強い日本の商用車メーカーを創り上げていくことになるのか、大いに期待も寄せられています。そのためにはクリアすべき課題も多く、これからの動きに注目が集まるでしょう。
日野自動車の他にも、自動車メーカーの検査不正は後を絶ちません。安全にかかわる問題をなぜこれほど軽視されてきたのか、自動車産業そのものの構造的な問題であるとするなら、カーボンニュートラル化の前に、真剣に取り組む必要があるのではないでしょうか。
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