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会社に勤めていると、ときに「インセンティブ」という言葉が使われるのを聞く機会があるのではないでしょうか。言葉は知っていて、何となくの意味はわかるものの、具体的かつ的確にどういうものかを説明できる人は意外と少ないようです。
インセンティブとは端的に言えばどういう役割を果たすもので、具体的にどんなインセンティブがあるのでしょうか。
インセンティブとは?
インセンティブとは、会社が設定している目標を従業員が達成したときに、その従業員に与えられる給与とは別の利益一般をいいます。
ボーナス(賞与)も、会社が特別な利益を上げた場合に、給与とは別に支払われる金銭という点では、インセンティブと共通しているかもしれません。しかし、ボーナスが夏と冬の年2回など定期的に、社内の従業員の多くが受け取ることができる一方で、インセンティブは、従業員個人が目標達成した場合に限り、個別に受け取れるものとなっています。
英語の「incentive」が語源となっており、日本語では「動機付け」や「成果報酬」「報奨金」と訳されます。
もともとはラテン語の「incentīvus→incinere」(日本語で励ます、駆り立てるの意)から来た言葉であり、文字通り、会社が望む成果をあげた従業員を讃えて、臨時収入などの具体的な利益を与えて励まし、さらなる頑張りを引き出す意味合いがあるのです。
なお、達成された目標に対して臨時報酬を与えたことで、従業員に引き出された意欲や動機そのものをインセンティブと呼ぶ場合もありますが、ここでは、目標達成に対する臨時収入をインセンティブと定義して解説します。
企業から見たインセンティブのメリット
会社にとってのインセンティブは、経済的な負担感を抑えたままで、従業員のモチベーションを引き上げる効果が期待できるものです。なぜなら、給与のように会社が利益を出せずに赤字を抱えていても毎月一定額の支払いが義務づけられ、簡単には減額できない種類の金銭ではないからです。
企業にとっては、いくら優秀な従業員であったとしても、毎月の給与額を引き上げるのは経営リスクを抱えることになりうるのです。
しかし、インセンティブは従業員が一定の成果や目標達成を挙げたことを条件に支払う対価ですので、すでに出された利益の中から(あるいは、近い将来に確定している利益見込みの中から)捻出すればいいのです。よって、企業にとってはリスクを抱えずに従業員の努力や成果に報いることができます。
また、優秀な従業員をスカウトして引き入れる場面でも、給与を高くするよりもインセンティブを高くするほうが、リスクを避けながらも魅力的な条件を提示できるメリットがあるのです。
インセンティブの具体例
インセンティブが設定されやすいのは、営業部門です。営業部門は、会社の利益に直接結びつけるアクションを取る部署です。そのため、会社としてもインセンティブを捻出してでも営業スタッフのやる気を引き出したい、との動機を持ちやすいのです。
では、インセンティブには具体的にどんなものがあるのでしょうか。
<成果報酬>
成約1件あたり「いくら」という歩合制・出来高制の報酬が設定されているのが成果報酬です。会社は、成約した商品やサービスの利益の中から捻出するのが通常です。
販売する商品やサービスにバリエーションがあり、それぞれ価格帯が異なる場合には、成約額の割合によってインセンティブの金額を設定する場合もあります。
<ノルマ報酬>
成果報酬の一種ですが、営業目標である「ノルマ」を達成したことに対して支払われる特別報酬も、インセンティブの一種です。金銭だけでなく、プレゼントや商品券、旅行などの非金銭的報酬で与えられる場合もあります。営業スタッフの頑張りを讃えて、今後のモチベーションを上げることを狙いとして行われることが多いです。
<ストックオプション>
ストックオプションは、いわば「前払い」の特殊なインセンティブです。たとえば、上場を目指すベンチャー企業が、未上場の株式を一定金額で購入できる権利をメンバーに渡すケースがこれにあたります。
ベンチャー企業の上場は、上場後にその株式の価格は上昇することが大半です。よって、上場後にストックオプションの権利を行使して、自社株を株式市場で売却すれば、そのメンバーは大きな利益を上げることができるのです。
ストックオプションは、まだ資本基盤が脆弱で、高額の報酬を支払うことができないベンチャー企業が、初期メンバーのやる気を引き出すのに有効な方法として採用されています。仮に上場を果たせなかったとしても、ストックオプションを付与したせいで会社が損害を被るおそれもありません。
教えて専門家:ストックオプションに関する質問への専門家の回答
まとめ
給与を上げることは従業員のやる気を引き出すのに有効な方法ですが、一度上げた給与は簡単に下げられないために、会社にとってはリスク要因を抱えることとなります。その点、インセンティブは、会社がリスクを抱えずに従業員のやる気を引き出すことが可能なメリットがあるのです。
必ずしも金銭である必要もないので、状況に応じて旅行などの非金銭的インセンティブも選択肢に入れ、有効に活用してみましょう。
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