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厚生労働省は2023年1月から9回にわたり、仕事と育児・介護の両立支援制度や次世代育成支援対策についての研究会を開き、それを今回「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」として公表しました。
この先、社会全体で向き合うべきこの問題について、政府はどのような見解を示しているのか、そこからどのような取り組みが始まるのか、報告書の内容から重要なポイントを紹介します。
⇒育児・介護の支援だけじゃない!企業が考えるべきウェルビーイングとは?
仕事と育児・介護の両立は、当事者の従業員のみならず、雇用する企業にとっても重要な課題です。そのため厚生労働省が主体となり、事業者まで含めた支援制度を提供しています。
その主な取り組みが「育休復帰支援プラン」「介護支援プラン」であり、「仕事と家庭の両立支援プランナー」が無料でサポートしてくれます。また資金面からの支援策としては、「両立支援等助成金」という制度もあります。 しかし依然として課題は多く、事業者が直接関わる仕組みづくりが求められています。
企業で働く従業員が育児や介護にも関わっている場合、日々の仕事を安定的に調整することが難しくなります。中でも最も悩みが大きいのは、職場や家庭で突発的なトラブルが起きた場合だということです。
例えば家庭で子どもが熱を出したり、介護中の家族に何かあったりすると、それに対処するためには無理をして仕事のスケジュールを調整しなければなりません。その反対に業務上でトラブルが生じてしまうと、家庭を犠牲にするリスクが生じてしまいます。
一方で企業側には、実際に支援制度があっても活用できていないという課題があります。原因は社内での周知が進んでいないことや、制度の利用をためらう雰囲気があるなどさまざまです。つまり現状では、労使ともに公的なサポートがないと、仕事と育児・介護の両立を実現することは難しいのです。
こうした状況下で、厚生労働省の「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」がこれまでの研究結果を公表しました。その報告書で示された、今後の取り組み概要を紹介しましょう。
・今後は夫婦で育児や家事を分担するという前提で、働き方改革を一層推進する。
・仕事とさまざまなライフイベントを両立できるように、性別を問わず気兼ねなく休暇が取れる職場づくりを目指し、テレワークも同時に推進する。
・子どもの年齢を3歳前と後に分け、それぞれに最適な働き方を選べるように、短時間勤務やテレワークなどの拡充を目指す。
・さらに子どもの体調不良や、学校行事などに対応した休暇制度の導入も促進する。
・事業者側から積極的に、職場での制度周知などを行うように指導し、従業員の介護離職を防ぐための環境整備を促進する。
・同時に従業員の働き方や、介護休業制度の利用なども見直しと改善を図る。
・事業者が自主的に取り組み強化を図るように、仕事と育児・介護の両立支援に対する行動計画の策定や、認定制度の導入などを進める。
・とくに男性の育児休業取得については、数値目標を設定して実践モデル化する。
・2025年3月末で失効予定の「次世代育成支援対策推進法」の期限を延長し、内容の改善と充実を図る。
・事業者の行動計画については、男女ともに時間外労働の縮減や、柔軟な働き方の拡充など、具体的な取り組み方法についても盛り込むことを指導する。
このように、今回の報告書では実効性を考慮して、制度の導入にまで一歩踏み込んでいます。今後はこの報告書の内容を踏まえて、引き続き厚生労働省の主導で具体案の検討が行われる予定です。
誰にとっても働きやすい職場づくりのためには、今回のような調査結果を発表するだけでなく、それを実践する仕組みづくりも必要です。その点について「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」は、以下のような提言もまとめています。
・従業員の休業と職場復帰に対する規定を設け、職場での周知を徹底する。
・妊娠、出産、介護などの情報は、慎重にプライベートへの配慮を行う。
・従業員のヘルスケア、メンタルヘルスケアにも配慮する。
・有期雇用労働者にも同様の仕組みを適用する。
これらは主に、事業者である企業側が積極的に取り組むべきことです。今後具体的な法整備が進む前に、ひと足早く職場改革を始める必要があるでしょう。
育児や介護と仕事が両立できる職場は、これからの企業にとっては人材確保のために欠かせない条件です。少子高齢化社会への貢献という面からも、企業の社会的責任の1つとして積極的に取り組むべきテーマでしょう。
今回の「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」では、今後の取り組みに関する指針が示されましたが、いずれは実効力をもった制度の施行が予想されます。その時に対応が後手に回らないように、今のうちから職場環境の整備を始めることをおすすめします。
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