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2018年10月、政府が同年度中にまとめる予定の「国家公務員の働き方改革案」において、テレワークの推進を打ち出すことを決定したと報じられました。さらにこの改革案では、各省庁の職員に占めるテレワーク導入者の数値目標を設け、達成できていない場合は公表して改善を促す方針も検討されているとのことです。
ほかにも国内においては、政府が2018年の7月23日~7月27日の間で7月24日プラス1日を「テレワーク・デイ」として、テレワークを実施することを企業や官公庁に求めるなどの動きもみられますが、その一方で「テレワーク」という言葉自体がいまひとつ社会に浸透しておらず、在宅勤務、モバイルワーク、リモートワークなど、様々な言葉がテレワークと混同して使われている現状もあります。
そこで、ここでは曖昧に理解している人も多いと思われるテレワークの定義や種類と、テレワーク導入のメリットやデメリットについて解説していきたいと思います。
目次【本記事の内容】
テレワークは「tere=離れた場所」と「work=働く」をかけあわせた造語であり、職場以外の場所で情報通信技術(ICT)を活用して働くワークスタイル全般を指します。
テレワークは働く場所によって、おおまかに下記の3種類に分けられます。
・在宅勤務…自宅にいて、会社とインターネットや電話を通じて連絡を取りながら仕事をする。
・モバイルワーク…顧客先にいるときや移動中の時間などにパソコンやタブレット、スマートフォン、携帯電話といった機器を使って業務を行う。
・サテライトオフィス勤務…サテライトオフィスとは企業の本社や支社、あるいは官公庁の庁舎などから離れて設置されたオフィスのこと。サテライトオフィスにはさまざまな形態があり、1社が専属で使用しているもののほか、社内LANが使えるスポットを会社が設置しているもの、数社が共同でシェアしているオフィス、期間限定でレンタルしているオフィスなどがあります。
こうしてみると、在宅勤務やモバイルワークは、テレワークのひとつの形であることがわかりますね。またリモートワークは、テレワークとほぼ同じ意味を持つ用語ですが、上記のうち「在宅勤務」を指す意味で使われる場合もあります。
また、テレワークは働く場所だけでなく、雇用か自営かといった働き方のタイプによっても分けることができます。
雇用型のテレワークの場合、労働者は企業側と社員や契約社員、派遣社員、アルバイトなど様々な形の雇用契約を結びますが、自営型のテレワークの場合は、業務委託のように、仕事ごとに企業と契約を結んで業務を行うケースが多いようです。さらに雇用型のテレワークでも、常にテレワークを行うものから、テレワークを週や月のうち数回行うもの、または午前中だけなど勤務時間の一部をテレワークにするものまで、企業によって導入の頻度は様々となっています。
一方、自営型のテレワークの場合も、自宅で空き時間に行う「内職型」のものから、SOHOのように自宅をオフィスにしたり、個人で小規模なオフィスを借りたりして行う独立自営の度合いが高いものまで、仕事のスタイルも収入の規模も多種多様となっています。
ちなみに、カフェや旅先など色々な場所で仕事をするノマドワーカーもテレワークのひとつの形ですが、ノマドワーカーは自営型で業務を行っている人が多いようですね。
テレワークは基本的に1人で行う仕事に向いているワークスタイルといえます。
そのため、デザイナーやライター、プログラマーやシステムエンジニアといった職種においては、フルタイムで常時テレワークを行っている人も多くみられます。
また、顧客や取引先をまわる営業職も、移動中や空き時間に作業をこなすという形でテレワークを行いやすい職種といえます。さらに一般的な事務職においても、資料作成やデータ入力といった作業は、1人で行うのに向いている場合が多く、テレワークを行いやすい業務といえるでしょう。
一方、テレワークに不向きな仕事しては、サービス業や医療、介護、保育といった人と接することが重要となる仕事があげられます。そのほかにも、機密情報や個人情報を扱う仕事はセキュリティの観点からテレワークには不向きといえますが、こうした業務に限らず、テレワークを行う際には情報の保護や取り扱いには十分な注意を行い、情報の流出や漏えいを防ぐ万全の体制を整えておくことが重要といえるでしょう。
働く側にとってのテレワークの大きなメリットとしては、場所を選ばずに仕事ができることや、通勤時間を短縮できることがあげられます。
場所を選ばずに仕事ができるということは、育児や介護で家族のもとを離れにくい人や、身体的な障害などにより通勤が困難な人でも業務に従事しやすいことを意味していますが、テレワークを行う企業の側にとっても、出産・育児・介護などによる離職を防ぐことができ、障害者の雇用を促進できるのは大きなメリットといえるでしょう。さらに企業にとっては、テレワークを導入することで、オフィス維持や通勤などにかかるコストを削減できるというメリットもあります。
一方、テレワークのデメリットとしては、コミュニケーションやセキュリティの問題があげられます。いかに情報通信技術が発達したとはいえ、いまのところお互いに顔を見てやりとりをしながらおこなったほうがスムーズにいく業務が少なくないのも事実です。またテレワークはカフェやシェアオフィスなど複数の人が出入りする場所で行われるケースも多いため、上の項でも述べたようにセキュリティへの対策は不可欠といえるでしょう。
総務省が2018年7月に発表した2018年版の『情報通信白書』によると、2017年におけるテレワークの普及率は13.9%で、前年に比べて0.6%のみ増加したとのこと。これはテレワークの普及がいまひとつ進んでいない現状をあらわす数値といえますが、この資料ではテレワークを希望する労働者の約半数が、テレワーク実施の課題として「会社のルールが整備されていない」と回答したことも報告されています。
また、テレワークについては生産性や社員の満足度の向上がメリットとして取りあげられる一方で、米IBMや米ヤフーのように近年テレワークを廃止した企業もあります。特に米IBMについては、1990年代にテレワークを導入した「先駆者」であることから、その廃止は多くの議論を呼びました。
なお、これらの企業がテレワークを廃止した理由としては、「コミュニケーション」や「チームワーク」を重視したからとの見方が強いようですが、同じ系列の企業であっても、ヤフージャパンや日本IBMでは2018年現在でもテレワークを推進していることから、日米の雇用環境や社会環境の違いを指摘する声もあります。
テレワークとひと口にいっても、そのスタイルや導入の割合は企業によって大きく異なるため、これらをひとくくりにするのは少々乱暴なのかもしれませんが、いずれにしても、テレワークの推進がワークスタイルの多様化につながるのは事実といえそうです。
もちろん、給与や福利厚生など、テレワークにおいても労働者に対する社会的・経済的な保障は不可欠といえますが、多様なワークスタイルから自分にあった働き方を選べるという点において、働く側にとってテレワークの普及は望ましいことといえるのではないでしょうか。
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