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2023年11月27日、日本大学の副学長沢田康広氏が、1,000万円の損害賠償を求め理事長の林真理子氏を提訴しました。この訴訟は、日本大学アメリカンフットボール部の違法薬物事件の対応を巡るものです。
沢田氏は、林氏から不合理な理由で学内会議への出席を禁止されるなどのパワーハラスメントを受け、辞任を迫られたと主張しています。今回は、日本大学のパワハラ問題について考えてみましょう。
目次【本記事の内容】
訴訟の背景には、日本大学アメフト部の違法薬物問題があります。部員が乾燥大麻と覚醒剤を所持していたことが発覚し、社会的な注目を集めました。結果として3人の逮捕者を出し、現アメフト部を廃部にすることが決定されました。
今回沢田氏は、林氏の行動がパワーハラスメントに当たると主張しています。具体的には、すべての会議への出席禁止、責任を一方的に押し付けられる印象操作、弁明の機会を奪われるなどのハラスメントがあった、といいます。
沢田氏は、アメフト部の寮で植物片と錠剤を発見したものの、警視庁への報告が12日後になった点が問題視されています。沢田氏は「教育機関としての対応であり、学生に自首を促した」ことを理由に挙げていますが、この空白期間は大きな議論を呼んでいます。
日本大学の対応を調査した第三者委員会は、「沢田氏が大麻と疑われる植物片を発見後、警視庁への連絡まで12日間保管したこと」が信用失墜の最大の要因だと指摘しています。また、林氏と酒井健夫学長の組織統治が機能していなかったとの考えも示しました。
2023年11月22日、日大理事会は沢田氏と酒井氏に辞任を勧告し、両者はこれを受け入れる意向を示しています。林氏は報酬の50%減を了承したようで、後はパワハラ訴訟の行方を決めるのみとなりました。
厚生労働省によるパワーハラスメントの定義は、以下の3つの主要な要素にもとづくものとされています。
・優越的な関係にもとづく行為:パワーハラスメントは、職場における優越的な関係(たとえば、上司と部下の関係)を背景に行われます。優越的な関係は、加害者が被害者に対して権力や影響力を行使できる状況を生み出し、不当な行為が行われる基礎を作ります。
・業務の適正な範囲を超える行為:行為が業務遂行に必要な範囲を超えているかどうかが、パワハラの判断基準の1つになります。明らかに必要性のない業務命令、過度な仕事の負担、業務に関係のない個人的な要求などさまざまです。
・身体的または精神的な苦痛、または就業環境の害:パワーハラスメントは、被害者に身体的苦痛や精神的苦痛を与えること、または職場の就業環境を悪化させることを特徴とします。具体的に、殴打などの物理的な攻撃はもちろん、必要性のない激しい叱責や侮辱、職場内で孤立させる行為、過度なストレスを与える行為などです。
2019年6月には、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正され、パワハラ防止のために必要な措置を講じることが事業者の義務となっています(2020年6月1日施行)。最初に大企業に適用され、中小企業でも2022年4月からパワハラ防止のための措置が義務化されています。
今回の日本大学副学長によるパワーハラスメント訴訟で注目されている点の1つが、請求された賠償の金額です。副学長は理事長に対して1,000万円の損害賠償を求めています。この金額は、一般的なパワーハラスメント関連の訴訟で請求される慰謝料の相場と比較して極めて高額です。
パワーハラスメントに関する慰謝料の相場は、一般的には数十万~数百万円程度です。しかし、被害者が重大な精神的苦痛を受けたり、極端な場合には自殺に追い込まれたりするようなケースでは、より高額の賠償が認められる可能性もあります。
今回のケースで1,000万円という金額が請求された理由は、社会的影響の大きさに起因しているでしょう。大学のアメフト部の薬物問題は、社会的に大きな注目を集めました。大きな注目を浴びる事件に関連するパワーハラスメントは、被害者の名誉や社会的地位に対する影響が大きいと考えられます。
また真実は明らかになっていませんが、訴訟を起こした副学長は、理事長からのパワーハラスメントによって重大な精神的苦痛を受けたと主張しています。苦痛の程度がとくに深刻であると判断されれば、それに見合った高額の賠償が認められる可能性もあるでしょう。過去にも1,000万円以上の賠償金が認められた事例もあるため、今後も裁判の結果に注目が集まるでしょう。
2018年の悪質タックル問題や医学部の不適切入試問題、2021年に発覚した田中英寿元理事長の脱税問題など、日本大学を巡る社会問題は度々世間に注目されてきました。直木賞作家・林真理子氏の理事長就任は、こうしたさまざまな問題を受け、「大学再建のために白羽の矢が立った」ともいえます。
組織の改革を考えてきた林氏にとって、今回の事件は痛恨であり、トップとしての責任が問われるタイミングでもあります。林氏の辞任は今のところ否定されていますが、今後大学がどのように再建を進めていくか注目です。
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