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障害者を雇った会社に対して、「助成金」が贈られることはご存知でしょうか。なぜ、助成金が支給されるのか、そして、具体的にどのような障害者雇用助成金があるのかを解説いたします。
目次【本記事の内容】
法制度は、国民にやってほしくないことを刑罰によって規制している一方、やってほしいこと、推進したいことを実行しようとしている個人や法人には、公金を支出してサポートします。
国や地方自治体が推進したいことを、あらかじめ定められた条件に当てはまるかたちで実施している場合には、ほぼ必ず支給される公金が、助成金です(他方で、条件に当てはまっていても、審査によって支給されない場合がありうる公金が、補助金です)。
国(厚生労働省)や地元の自治体などが、企業に対して障害者雇用を推進してもらうために、障害者雇用助成金を支給しています。
人にとって「働く」ということは、他人の役に立って自己肯定感や社会貢献感を育むことができます。また、収入を得て経済的に自立する足がかりにもできます。社内外の人々との交流によって、世の中に参加する社会人としての実感や居場所を得ることも可能になるのです。
つまり、障害者をただ一方的に「助ける」「保護する」対象として扱うだけでなく、彼らからも「助けられる」「サービスを受ける」営みが経済活動を通じて行われることで、不当な差別なども解消される道筋が生まれます。
ただし、障害者を雇用するにあたっては、オフィス内の設備や社員教育などを新たに整備する負担が生じる場合もありますので、助成金によって企業をサポートするのです。そして、助成金の支給によって、障害者を雇用する企業の裾野を広げていき、世の中における障害者の活躍の場を殖やしていく狙いがあります。
企業が障害者雇用の助成金を受けられるのは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を保持している障害者を雇用した場合、さらに、これらの手帳を受けていなくても、統合失調症・双極性障害(躁うつ病)・てんかんにかかっていると診断された障害者を雇用した場合です。
ちなみに、障害者雇用が法的に義務づけられている企業があります。障害者の法定雇用率が定められており、一般企業の場合は「2.2%」です(なお、国や地方公共団体では2.5%、都道府県の教育委員会では2.4%)。つまり、企業全体の2.2%以上が、障害者手帳を保有している障害者で占められていなければならないのです。最低でも46人の従業員を雇用している企業で、少なくとも1人の障害者を雇用しなければなりません。
もちろん、45人以下の従業員の企業でも、障害者を雇用して問題ありません。そして、条件を満たせば助成金が支給されます。
なお、2021年4月までには、一般企業の障害者法定雇用率が「2.3%」に引き上がる予定です。つまり、最低でも44人の従業員を雇用している企業で1人以上の障害者を雇用する義務が生じるようになります。
では、具体的にどのような助成金があるのでしょうか。
※助成金の具体的支給額は2018年現在のものです。最新情報については関連省庁にお問い合わせください。
今まで障害者を雇用したことがない企業において、その初回雇用によって、障害者法定雇用率の条件を満たした場合に支給される助成金
ハローワークなどから紹介されたことをきっかけとして、障害者を雇用するようになった場合に支給される助成金
ハローワークなどの紹介をきっかけとして、雇い始めの時点で65歳未満の「発達障害者(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害[LD]、注意欠陥多動性障害[ADHD]など)」や「難治性疾患患者(厚生労働省が指定する難病)」を継続して雇用し、さらに自社の雇用管理を的確に把握し、その内容を報告する会社に対して支給される助成金
今までに働いたことがない、あるいは6ヵ月以上の職歴ブランクが空いていたり、2年以内に複数回の転職をしていたりする障害者を試行的に雇用し始めた会社に支給される助成金
訪問型職場適応援助者(訪問型ジョブコーチ)が支援計画に基づいて障害者の職場適応サポート(職場リハビリテーション)を行った会社に対して支給する助成金
企業在籍型職場適応援助者(企業在籍型ジョブコーチ)が、継続的な支援計画に基づいて障害者の職場適応サポート(職場リハビリテーション)を行った会社に対して支給する助成金
障害者の雇用契約に基づき、障害者を新たに5人以上雇用した後、障害者を10人以上継続的に雇用しつつ、障害者の雇用のために必要な設備投資を行った中小企業に対して支給される助成金。企業の規模や設備投資額の大小に応じた額が助成されます。
障害者がその職場に定着し、中長期的に勤務し続けるための計画を策定し、具体的に職場定着の措置を講じた会社に対して支給される助成金
障害者の職場定着支援措置は、具体的には次の通りの措置です。
障害者雇用のために、職場の作業施設や福祉施設などを新たに設置したり、整備・管理するために必要な介助、あるいは通退勤をスムーズに行うための介助措置を講じた企業に対して、投じられた費用の一部を助成します。
雇用する障害者の職業に関するポテンシャル(潜在能力)を掘り起こし、向上させるための施設の新設、あるいはメンテナンスなどを行う会社に対して支給される助成金
条件さえ満たせば、会社は助成金を受けることができますが、もちろん助成金を受けて終わりではいけません。その障害者が職場に溶け込んで、その能力を最大限に活かして働ける環境を整備する必要があります。他の健常者従業員と同じ仕事が可能な場合もあるかもしれません。ただ、不可能な場合や可能であっても相当な無理をしている場合には、ふさわしい職場に配置転換をしたり、独自の仕事を用意したりする工夫も必要です。車いすだから、学習能力が追いつかないからといって、簡単に「受け入れ不能」と判断を下すのでなく、どのように受け入れるべきかを創意で考え、本人や当該部署とも粘り強く話し合うことが必要となります。その努力を含めての助成金制度なのです。
同時に、障害者雇用に関する社会的意義を社内向けにセミナー等で伝えて、理解を深める努力が求められます。
障害者雇用を行うことは、社会の潜在能力を最大限に引き出し、1人でも多くの人々がビジネスという社会貢献に参加できる機会を与えることです。また、障害者本人にとっても、経済的自立や社会とのふれあいのチャンスを与えて、自己実現に資するものです。助成金は、あくまでも働く障害者のために活かされるべきといえます。
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