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2020年は、新型コロナウイルスの影響による世界的な景気後退が予想されています。本記事では、現時点での経済がどうなっているかの判断基準の一つとして、2019年度の国内企業の純利益額・営業利益額のランキングを見ていきます。
目次【本記事の内容】
さて、具体的な内容に入る前に、「売上」と「純利益」「営業利益」の違いについて少し見ていきましょう。「売上」とは、個人の給与に例えると、額面での給与のことを意味します。つまり、会社が事業によって稼いだお金の総額ということです。
次に「営業利益」とは、製造するためにかかった人件費や光熱費、商品を仕入れするために支払った仕入費用などの仕事と直接関係がある経費を差し引いたものであり、会社の本業の業務によって発生した経費を売上から引いたものとなります。「純利益」とは、会社にとっては、営業利益から本業以外の経費を差し引いて残った利益のことです。
売上と営業利益、純利益の3つを同時に見ることで、薄利多売をしている企業や、利益率のよい仕事をしている企業、また販売力がある企業など様々なことが予測できるようになります。
国内企業の2019年当期純利益のランキングは下の表のとおりです。参考のため、営業利益も記載してあります。
順位 |
銘柄名 |
純利益 |
営業利益 |
業種 |
1 |
トヨタ |
1,882,873 |
2,467,545 |
自動車 |
2 |
SBG |
1,411,199 |
2,353,931 |
通信 |
3 |
東芝 |
1,013,256 |
35,447 |
電気機器 |
4 |
ソニー |
916,271 |
894,235 |
電気機器 |
5 |
NTT |
854,561 |
1,693,833 |
通信 |
6 |
NTTドコモ |
663,629 |
1,013,645 |
通信 |
7 |
KDDI |
617,669 |
1,013,729 |
通信 |
8 |
ホンダ |
610,316 |
726,370 |
自動車 |
9 |
三菱商 |
590,737 |
290,477 |
商社 |
10 |
伊藤忠 |
500,523 |
361,492 |
商社 |
11 |
日本郵政 |
479,419 |
- |
サービス |
12 |
JR東海 |
438,715 |
709,775 |
鉄道・バス |
13 |
SB |
430,777 |
719,459 |
通信 |
14 |
三井物 |
414,215 |
259,789 |
商社 |
15 |
JT |
385,677 |
502,355 |
食品 |
16 |
オリックス |
323,745 |
329,438 |
その他金融 |
17 |
JXTG |
322,319 |
537,083 |
石油 |
18 |
住友商 |
320,523 |
274,156 |
商社 |
19 |
日産自 |
319,138 |
318,224 |
自動車 |
20 |
信越化 |
309,125 |
403,705 |
化学 |
トヨタは、現在売上も純利益も日本の第1位を誇る業績ですが、ただこれは、アメリカでの法人税減税と円安という、一時的な影響によるものだと見られています。トヨタが日本を代表する企業であることには変わり有りませんが、現在自動車業界は、電気自動車やカーシェアサービスの充実化など新たな波が起こっています。設備投資や経営体制などによって今後順位が変化する可能性もあるため、トヨタ自身が全力をあげてさらなる成長を目指しています。
上の表で見るとおり、2019年の国内企業 純利益額第1位は「トヨタ自動車」です。トヨタ自動車は2018年、2兆4,938億円の純利益を叩き出し、日本企業の過去最高を達成しました。ところが、2019年の純利益は、それより大幅に低い1兆8,828億円にとどまりました。
世界販売台数は過去最高、売上高も過去最高を更新して30兆円を超えたものの、持ち合い株の評価損計上や、前記の米法人減税による利益押し上げ効果の反動などがあり減益になったと見られています。
ちなみに純利益額国内1位のトヨタ自動車を世界ランキングで見てみると、19位となっています。世界ランキングの1位~5位は、下の表のとおりです。
順位 |
企業名 |
純利益額 |
収益 |
国 |
1 |
サウジアラムコ |
110,974.50 |
355,905.00 |
サウジアラビア |
2 |
アップル |
59,531.00 |
265,595.00 |
アメリカ |
3 |
中国工商銀行 |
45,002.30 |
168,979.00 |
中国 |
4 |
サムスン電子 |
39,895.20 |
221,579.40 |
韓国 |
5 |
中国建設銀行 |
38,498.40 |
151,110.80 |
中国 |
なお、国内2位のソフトバンクグループは世界ランキングでは第34位、3位の東芝は、世界ランキング第62位となっており、「世界の壁はまだまだ厚い」といえそうです。
参照:https://www.manegy.com/news/detail/411
純利益額第2位は、2018年には第3位だったソフトバンクグループです。売上高は前期比4.8%増、純利益は前期比35.8%増と増収増益で、特に利益が大幅に伸びましたが、第1位のトヨタには及ばず、期待された「トヨタ超え」は実現しませんでした。
ソフトバンクグループの増収増益を大きく牽引したのは、2016年に設立したソフトバンク・ビジョン・ファンドです。同ファンドにより、営業利益は前期比85.5%の2兆3,539億円と過去最高を記録したものの、純利益については、2017年の1兆4,263億円を上回れませんでした。
2020年に関しては、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの営業損失が1.9兆円になるなど、投資の不調が明らかになっています。UberやWeWorkなどの公正価値が減少したほか、新型コロナウイルスの感染拡大によりその他の投資先についても公正価値が大幅減少したからです。そのためソフトバンクグループは、最大4.5兆円の資産売却も方針決定しています。
ただし、ソフトバンクの事業自体は、営業利益が前期比7.4%増と好調です。今後の動向に注目したいところです。
純利益額の第3位は東芝です。経営再建中の東芝は、海外原子力事業の不振で一時は債務超過に陥りましたが、半導体メモリ事業の売却やそのほかの構造改革により、2019年は1兆132億円のプラスに転じました。
ただし、事業は必ずしも順調とはいえず、連結売上高は前期比6.4%減の3兆6,935億円、営業利益は前期比58.9%減の354億円、営業利益率は1%にとどまり、現時点ではあくまで「構造改革の成果がでている」ことにとどまり、収益力には大きな課題を抱えています。
そこで東芝は、2019年4月から中長期経営計画「東芝Nextプラン」をスタートさせ、2019年11月には上場子会社4社のうち3社を、総額2,000億円の資金を投じて子会社化しました。このことは、これまで子会社などの保有株式を矢継ぎ早に売却し、構造改革を行ってきた東芝が、新たなフェーズに入ったことを意味しています。
2019年4~9月期の決算では、前年同期比7.5倍の営業利益520億円を叩き出し、東芝の業績は急回復しています。今後の「V字回復」に期待がかかるところです。
これまでは、純利益でのランキングを見てきました。最後に、営業利益でのランキングも確認しておきましょう。
順位 |
銘柄名 |
営業利益 |
業種 |
1 |
トヨタ |
2,467,545 |
自動車 |
2 |
SBG |
2,353,931 |
通信 |
3 |
NTT |
1,693,833 |
通信 |
4 |
KDDI |
1,013,729 |
通信 |
5 |
NTTドコモ |
1,013,645 |
通信 |
6 |
ソニー |
894,235 |
電気機器 |
7 |
日立 |
754,976 |
電気機器 |
8 |
ホンダ |
726,370 |
自動車 |
9 |
SB |
719,459 |
通信 |
10 |
JR東海 |
709,775 |
鉄道・バス |
営業利益のランキングでも、純利益のランキングと同様、トヨタ自動車です。2位も、ソフトバンクグループで変わりません。
純利益で3位の東芝は、営業利益はまだわずかであるために、ランキングでは圏外となってしまいます。そのほかのランキング上位は、純利益のランキングと大きく変わらないといえますが、営業利益の7位に、純利益では34位の日立が入っているのが目を引くところです。
構造改革を続けてきた日立製作所は、2019年の決算では、新型コロナウイルス感染症の影響、上場子会社の減収、事業売却などにより減収減益となっているものの、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、およびライフの中核事業は過去最高益を記録しています。
10年間にわたって改革を続けてきた日立は、成長分野である自動車向け安全システムやロボット、パワーグリット事業などで買収を続けており、2020年度では、コロナショック下でも282.4%増3,350億円の純利益を見込んでいます。今後のさらなる成長が期待されるところです。
2019年の国内企業利益ランキングは、純利益・営業利益ともトヨタ自動車が第1位の結果となりました。毎年のことではあるものの、これだけの利益を維持するトヨタ自動車は「さすが」というべきでしょう。
また、純利益ランキングの10位までにランクインしている企業の業種をみると、通信4社、自動車2社、総合商社2社、電気機器2社の内訳です。この通信、自動車、総合商社、電気機器が、日本を牽引する業種であることになります。
2020年のランキングは新型コロナウイルス感染症の影響も懸念されるなか、どのような順位変動があるのか注目です。
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