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あなたのまわりに休職している社員はいませんか。休職は、仕事を休んでいる状態ですが、風邪などをひいて熱を出して会社を休む「欠勤」とは異なるのでしょうか。休職に要する手続きには、どのようなものがあるのでしょう。
休職とは、会社などの従業員が、ケガや病気などで仕事が難しくなるなど、自分の都合で仕事から離れることです。休職中の従業員は、労働する法的義務を負いません。
休職は「欠勤」や「休業」と区別されなければなりません。
欠勤は風邪などの体調不良などで、一時的に仕事を休むことです。半日ほど休む(遅刻・早退)こともあるでしょうし、連続して3日ぐらい自宅療養をすることもあります。ただし、休職とは異なり、その出勤日に働く法的義務は消えていません。それにもかかわらず、やむをえず仕事を休んでいる状態です。
もちろん、会社に届け出ない「無断欠勤」は、会社と従業員の間の信頼関係を壊しかねず、懲戒の対象となるおそれがあります。長期間の無断欠勤では、解雇(労働契約解除)の可能性もあります。
会社の許可を得て欠勤していても、欠勤中の期間は無給となります。「ノーワーク・ノーペイの原則」によって、労働が提供されない限り、会社は原則としてその対価を支払う義務がないのです。
また休業は、休職と異なり、業務用機器の大規模な故障など、会社の事情によって従業員に仕事をさせないことです。この場合は会社に責任があり、従業員側には責任がないのが一般的ですので、休業中の給与は例外的に支給されることが多いです。
休職中の従業員は労働を提供していませんが、そもそも休職期間中は労働の義務を負っていませんので、「ノーワーク・ノーペイの原則」は当てはまりません。ただし、会社が特別に休職期間中にも、特別な手当を支給する場合があります。休職が始まってしばらくの間は満額の給与分の手当が支給されるものの、休職が長期間にわたると、手当が徐々に減額されたり、支給されなくなったりする場合があります。
休職中に手当が支給されない場合、保険協会・保険組合に申請することで、健康保険から「傷病手当金」が支給されることがあります。
休職期間中の取り扱いについては、従業員にとって一方的に不利なルールを定めない限り、会社が就業規則で自由に定められます。
なお、手当が出ないからといって、休職中に有給休暇を取得することは認められません。有給休暇の取得は、その従業員に労働義務が課されていることが前提だからです。
前述の通り、無断欠勤が続けば解雇の対象になりますが、重い病気やケガなど、やむを得ない事情がある場合には、欠勤ではなく休職として扱って、労働義務から解放しなければなりません。
もし、重い病気やケガが原因で欠勤が続いたとしても、そのことを理由にする解雇は裁判所によって認められない可能性が高いです。日本の労働法体系で、会社が従業員を解雇するハードルはかなり高く設定されており、それによって従業員が保護されています。
まずは、休職という取り扱いを挟んで様子を見て、その病気やケガの種類や程度によって、通常であれば仕事に戻れるまで回復してもしかるべき期間(数ヵ月から数年)を待っても、回復がみられない場合に、やむをえず解雇することは可能となります。
ただし、休職を決める前に、会社は任意に「自己都合退職」の意思を本人に確認したり、「退職勧奨」を行ったりする余地はあります。もし、従業員に復職の意思があれば、退職勧奨に応じる必要はありません。毅然とした態度で、休職の取り扱いを求めるようにしましょう。
休職は従業員の自己都合とはいえ、病気やケガなどやむを得ない事情があります。会社は可能な限り、その従業員がもともと勤めていた職場やセクションに戻れるよう、復職の努力をしなければなりません。休職を取得したことを理由として、配置転換や減給などを行えば、他の従業員が休職制度を使うことをためらってしまいます。
復職をきっかけとした配置転換や減給は、休職以外に何かやむを得ない事情がある場合に限られると考えるべきです。
特に近年、問題となるのは、がんや鬱病です。
医療技術の進歩によって、がんが進行している患者も就労可能な状態になっている例が増えています。本人に働く意思がある限り、会社はその意思を最大限に尊重すべきです。働くことが生きる意欲に繋がる場合もありますので、がん患者だからといって業務量を減らしたりと手心を加えることは、かえって本人の自尊心を削いでしまいかねません。
がん患者は、体調が急変することもありますので、職場で働かせることに躊躇する企業の事情も理解できます。しかし、休職制度の採用も合わせて、がんを罹患したからといって安易に解雇しないようにしなければなりません。
鬱病などメンタルヘルスを損なった従業員の休職や復職については、会社が十分なケアを行う必要があります。鬱病の治癒には数ヵ月から数年の期間を要する場合があり、会社も粘り強く、治癒を待つべきです。
鬱病は、定時の仕事で毎日の生活リズムが整うことによって、回復しやすくなる場合も多いのです。また、メンタルヘルスを損なった従業員のケアで特に重要なのは、へたに復職させたために「再休職」してしまうリスクです。仕事内容にストレスの原因があると、労災認定されて会社の責任を問われかねません。言動に違和感があったり、突然連絡が取れなくなるなどの異変があれば、ご家族と連携を取り、病院の受診命令を出すように努めましょう。
民事事件の被告として裁判に巻き込まれる場合がありますし、犯罪の容疑を掛けられて逮捕・勾留されることもあります。こうした司法手続きへの対応で仕事に就けない場合がありえますので、その場合は休職手続きを採りましょう。
「裁判沙汰」という言葉があるとおり、日本では裁判に巻き込まれている時点で、「面倒なことになっている」「何かやったに違いない」と色眼鏡でみられがちです。しかし、証拠に基づいて最終的な判断を出すのは裁判所です。刑事手続きなら有罪が確定するまで無愛が推定されていますので、本人が罪を認めていない以上は、休職で裁判の行方を見守るべきです。
自己研鑽や国際貢献のため、しばらく日本を離れるために休職することがありえます。多くの場合は期間が決まっているでしょうから、復職のときの問題も少ないはずです。
留学の場合は、海外に拠点がある企業であれば、そこで就労を続ける余地がありますし、リモートワークの可能性も検討すべきでしょう。
休職の手続きについては、会社ごとに対応が異なりますので、まずは就業規則を確認しましょう。そして、直属の上司に相談するようにします。休職の意思が受け入れられれば、その上司が社長や管理職などに伝えてくれます。
別に休職届などの作成や提出などの手続きが求められることも少なくありません。
確かに、休職は従業員の権利ですが、その権利を振りかざしたり、会社に対して不満を述べたりすることは避けましょう。会社や上司、同僚にとっても、引き継ぎなどの負担が増えることは間違いないのです。
休職を認めてもらえることに感謝の意思を表明し、復職の意思も伝えましょう。また、休職中も定期的に、直属の上司に連絡を入れるようにすると印象がいいです。このあたりの感情的なケアをおろそかにしていると、会社から退職勧奨を受けることもありえます。
休職とは、会社の従業員という地位は維持しつつ、長期間にわたって労働義務を負わないことです。会社にとってその待遇や手続きはさまざまです。基本的には無給ですが、特別な手当が支払われる会社もあります。病気やケガからの復職では、会社の協力やケアも必要となります。このほか、裁判や留学などによる休職も認められます。
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