2026.01.16

新着 【総務向け】相見積もりのやり方完全ガイド!依頼メール・比較表・断り方までまとめて解説

目次

はじめに:業者選定を任されたあなたへ

「オフィスのレイアウトを変更したい」「社用PCを100台入れ替えたい」といった物理的な環境整備から、「勤怠管理システムを刷新したい」「電子契約システムを導入してハンコレス化を進めたい」「基幹システムをクラウドへ移行したい」といったDX推進にまつわるシステム刷新まで。企業の成長とともに、総務担当者をはじめ、管理部門で働く方には日々さまざまな調達依頼が舞い込みます。
そのたびに発生するのが、複数の業者から見積もりを取り寄せ、比較検討する「相見積もり」業務です。

しかし、業者を選定するにあたって、多くの担当者が以下のような悩みを抱えています。

  • 「上層部は『とにかく安く』と言うが、現場は『使いやすさ』を譲りたくない。板挟みで苦しい」
  • 「見積書のフォーマットがバラバラで、どこをどう比較すればいいのか分からない」
  • 「断りの連絡を入れるのが心苦しく、精神的な負担が大きい」

相見積もりは、単なる「価格競争」の場ではなく、自社の課題を解決してくれるパートナーを選ぶ重要な投資プロセスです。また、適切なプロセスを経ることは、後々のトラブルを防ぐリスクマネジメントにもつながります。

この記事では、準備段階から比較検討、社内稟議、そして契約・お断りのマナーまで、ノウハウを体系的に解説します。読み終える頃には、自信を持って「この会社が当社にとってベストです」と断言できる基準を持つことができるでしょう。

Step1【準備・依頼】RFP(提案依頼書)作成と依頼メールのポイント

「とりあえず良さそうな3社に声をかけてみよう」
もし見切り発車で依頼をしているなら、それが「選定に迷う」最大の原因かもしれません。

システム開発や大規模プロジェクトの失敗原因の多くは「要件定義の不備」にあると言われますが、これは備品購入やアウトソーシングでも同様です。「何をしてほしいか」が曖昧なままでは、「いくらでできるか」の正確な答えは返ってきません。

精度の高い見積もりを引き出し、横並びで比較するために、依頼メールを送る前に以下の3ステップを完了させましょう。

1.目的と要望を言語化する(簡易RFPの作成)

「いい感じに提案してください」という丸投げは禁物です。業者によって解釈が分かれ、比較不能な見積もりが届くだけでなく、後から「思っていたものと違う」というトラブルの温床になります。これを防ぐために、簡易的なRFP(提案依頼書)を作成しましょう。以下の項目をメモ書き程度で良いので書き出します。

  • 背景・目的:なぜ今回依頼するのか(例:コスト削減、業務効率化、法改正対応など)
  • Must(必須条件):予算上限、絶対守るべき納期、外せない機能・品質
  • Want(希望条件):あれば嬉しい機能、将来的な拡張性
  • NG事項:絶対に避けたいこと(例:セキュリティレベルの低下、特定の海外サーバー利用など)

これらを提示することで、業者側も「提案の的」を絞ることができ、質の高い提案を集めることができます。

2.依頼の条件を統一する

「A社にはこの情報を伝えたが、B社には伝えていなかった」といった情報の非対称性は、公平な比較を妨げます。以下の「前提条件」は、共通のドキュメントとして、各業者へ提示しましょう。

  • 対象範囲:どこからどこまでを依頼するのか
  • 数量・期間:正確なロット数や契約期間
  • 提出期限:いつまでに見積もりが必要か
  • 選定スケジュール:いつ頃社内決定し、いつから稼働予定か

特に「選定スケジュール」の共有は重要です。例えば、「3月中に決定します」と伝えておくことで、無用な催促を防げるほか、決算期に合わせた値引き提案などを引き出しやすくなります。

3.信頼できる依頼先候補を見つける

Web検索だけで候補を決めるのはリスクがあります。SEO対策が上手な会社と、実務能力が高い会社は必ずしもイコールではないからです。

  • 業界の評判:同業他社の総務担当者など、横のつながりで「実際に使ってよかった業者」を聞くのが最も信頼性が高いです。
  • 与信管理(反社・倒産リスク):帝国データバンク等のスコア確認や、Webでの不祥事検索を行いましょう。契約直前になって「経営状態が悪い」と判明しては、それまでの時間が水の泡です。候補リストに入れる段階でスクリーニングしておくと安心です。

Step2【比較・検討】比較表の作り方と4つの評価基準

各社から見積書と提案書が出揃いました。ここで陥りがちなのが、「合計金額だけを見て安い順に並べてしまう」ことです。「安物買いの銭失い」にならないためには数字の裏を読み解くことが大切です。比較表を作成する際は、以下の4項目をチェックします。

1.金額:TCO(総保有コスト)で見る

金額は「初期費用」と「月額費用」のバランスに加え、TCO(Total Cost of Ownership)の視点が不可欠です。

  • 見せかけの安さに注意:本体価格は安くても、必須オプションが含まれていなかったり、消耗品単価が高かったりしませんか?
  • 隠れたコスト:導入時の社内教育コスト、廃棄費用、解約時の違約金などを含めた「トータルでのコスト」で試算して比較します。

2.範囲:役務の境界線を確認する

「A社は高い、B社は安い」と思ったとき、実は前提条件が違うケースが多々あります。

  • A社:導入設定、マニュアル作成、3ヶ月の伴走サポート込み
  • B社:システムライセンス利用料のみ(設定やサポートは別料金)

この場合、B社を選ぶと総務担当者が設定作業に忙殺されることになります。「どこまでやってくれるのか」という役務範囲を揃えて評価しましょう。

3.実績:自社と「似た事例」があるか

「大手企業〇〇社への導入実績」は魅力的ですが、自社が中小規模の場合はあまり参考にならない可能性があります。

  • 自社と同規模・同業種の事例があるか
  • トラブル時の対応事例は具体的かこれらを確認し、自社のフェーズに合った対応(小回りがきくかなど)が期待できるかを見極めます。

4.契約内容:縛りとSLA(サービスレベル合意書)

契約後のトラブルを防ぐため、以下の条件を見積もり段階で確認します。

  • 契約期間の縛り:「最低2年契約」などの条件がないか。
  • SLA(品質保証):サーバー稼働率や納期遅延時のペナルティなど、品質基準が明確か。

Step3【社内稟議】決裁者を納得させる「ロジック」の作り方

担当者として「B社がいい」と思っても、上司が「一番安いA社にしろ」と言う。この壁を突破するには、ビジネスの共通言語であるQCD(品質コスト・納期)を用いたロジックが必要です。「私の好み」ではなく「会社全体の利益とリスク回避」という視点で説明資料を作成しましょう。

稟議を通すためのロジック例

  • Quality(品質)の観点
    「A社は最安ですが、サポートがメールのみです。対してB社は専任担当がつきます。過去の事例から、初期支援がないと現場が混乱し、復旧に〇時間のロス(約〇〇万円相当の機会損失)が出るリスクがあります」
  • Cost(コスト)の観点
    「初期費用はB社が10%高いですが、耐久性がA社の1.5倍です。3年間の運用で見ると、B社の方がトータルコストを15%削減できます」
  • Delivery(納期・安定性)の観点
    「A社は納期が不確定ですが、B社は在庫を確保しており即納可能です。来月の繁忙期に間に合わせるためにはB社一択です」

Step4【決定・お断り】契約チェックと失礼のない「断り方メール」例文

発注先が決まった後も、総務担当者の仕事は終わりではありません。ここからの対応が企業の信頼性を決定づけます。最近ではクラウドサインなどの「電子契約」を用いるケースも増えていますが、紙でも電子でも、ボタンを押す(またはハンコを押す)前に中身を精査することが不可欠です。

契約締結前の最終確認チェックリスト

「見積書の内容で合意したはずなのに、契約書を見たら条件が違う」。こうしたトラブルを防ぐため、正式な契約締結の前に以下をチェックしてください。

特に相手が中小企業や個人事業主の場合、「中小受託取引適正化法(取適法)」や2024年11月施行の「フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が適用されるため、発注側の責任は重大です。

関係を壊さない「お断り」の伝え方

選ばなかった企業への連絡をしない「サイレントお祈り」は、ビジネスにおいて最大のマナー違反です。相手は提案のために多くの時間を割いています。また、将来的に別の案件で協力したり、逆に相手が自社の顧客になったりする可能性もあります。
敬意を込めて、決定後1週間以内には必ずメールで連絡しましょう。

【コピペで使える!お断りメールのテンプレート】

件名:【選定結果のご連絡】〇〇案件につきまして(株式会社〇〇)

〇〇株式会社営業部 〇〇様

いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇(ご自身の名前)です。

この度は、「〇〇導入案件」につきまして、素晴らしいご提案とお見積もりをいただき、誠にありがとうございました。
社内にて慎重に検討いたしました結果、誠に恐縮ながら、今回は貴社への発注を見送らせていただくこととなりました。
貴社のご提案も大変魅力的でございましたが、今回は弊社の〇〇の要件(例:納期、既存システムとの連携性など)を最優先する結論に至りました。

せっかく熱心にご提案いただいたにも関わらず、ご期待に沿えず大変心苦しいのですが、何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。
今回は残念な結果となりましたが、また別の機会がございましたら、ぜひご相談させていただけますと幸いです。

末筆ながら、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。

ポイント

  1. 感謝:提案への労いと感謝を最初に述べる
  2. 理由:可能な範囲で「何が決め手で及ばなかったか」を伝える
  3. 未来:関係を断ち切らず、「また機会があれば」と結ぶ

おわりに:相見積もりは、未来の働きやすさを決める重要な対話

ここまで、相見積もりの全工程におけるポイントを解説してきました。

  1. 準備:曖昧な要望を明確にし、比較の土台を作る(簡易RFP)
  2. 比較:目先の価格だけでなく、TCOやリスク、将来性を含めて評価する
  3. 決定:社内をロジカルに説得し、選ばなかった相手にも誠意を尽くす

このプロセスは確かに手間がかかります。しかし、ここを丁寧に行うことは、単なるコスト削減以上の価値を生みます。それは、「導入後のトラブル防止」であり、「運用担当者の負担軽減」であり、ひいては「会社全体の生産性向上」です。

適当な業者を選んでしまい、後からクレーム対応に追われるのは、他ならぬあなた自身かもしれません。「今の丁寧な選定業務が、未来の自分と社員の働きやすさを作っている」。そう捉え直して、まずは次回の案件で、「とりあえず見積もり」と言う前に、要望整理から始めてみてはいかがでしょうか。

Manegy Learning

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