契約DXを実現する方法、推進するメリットについて詳しく解説

新型コロナウイルスの感染が拡大した時期、対面をしないで契約締結ができる電子契約に注目が集まりました。感染が沈静化した後も、ペーパーレス化・業務効率化を実現できるとして、契約業務のDXの重要性に対する認識が高まり続けています。 そこで今回は、契約DXを実現する方法、推進するメリットなどについて詳しく解説します。

日本社会で進むDXと契約業務で生じる課題

近年日本の経済界ではDXの重要性が論じられています。DXとは「Digital Transformation」のことで、英語では接頭辞である「Trans」は「X」と表記する慣例があるので「DX」と略されています。

日本でDXが重視されるようになった大きな理由として、日本における労働生産性の低さと、デジタル競争力の低さがデータにより露呈していることが挙げられます。

公益財団法人日本生産性本部によると、2024年時点における日本の時間当たり労働生産性（就業1時間当たりの付加価値）は56.8ドルで、これはOECD加盟国38カ国中で29位と下位にとどまっています。また就業者一人当たりの労働生産性は、同順位で32位でした。

日本人は昔から労働に対して「勤勉」「真面目」といわれていました。残業にも率先して取り組むなど、諸外国に比べて努力家のビジネスパーソンが多く、そのことが20世紀の高度成長期を支えた部分があったともいえます。しかし現在、そんな日本の経済界に対して、世界的に見ても非効率・非生産的であるとの事実が示されているわけです。

その最大の理由がデジタル化の遅れです。スイスの国際経営開発研究所（IMD）の「世界デジタル競争力ランキング2024」によると、先進国をはじめとする67カ国中で日本の順位は31位です。もはや先進国とはいえず、途上国並みのランク付けとなっています。

ビジネスの場で事業活動の業務を効率化し、労働生産性を高めるには、物理的な手間暇を要するアナログ作業から、端末で瞬時に業務を遂行できるデジタル作業への業務転換が極めて重要です。実際、先進諸国では率先してデジタル化に向けての取り組みが進められています。そんな中で日本だけが遅々としてデジタル化が進まないでいると、取り残されてしまうのは当然といえます。こうした状況を改善すべく、国も牽引役になって日本社会全体で「DX」への音頭が取られるようになったのです。

そしてDXによる業務効率化の余地の大きい領域の1つが、契約管理です。紙の契約書類の作成・整理、膨大なスペースを用意しての契約書の保管、紙をめくりながらの検索といった作業をDXによって効率化することは、企業活動の生産性向上に大きく寄与します。

契約DXとは？

契約書管理をDXすることは「契約DX」と呼ばれています。その意味を定義付けるなら、「契約業務の過程を、デジタル技術の利用により効率化すること」です。具体的には、取引相手との契約のための相談、契約書の作成、契約書の取り交わし、契約書管理のすべてをデジタル化することを意味します。

デジタル化によって、契約期間、契約が成立した金額、交渉プロセスの内容などがすべてデータ化され、端末を通して瞬時に閲覧可能となります。これらの契約に関する情報は、今後新たな契約締結を行う際に参考にできる貴重な情報となります。たとえば、成績のよい営業部社員の交渉手法に関する情報を営業部門全体で共有できれば、部門全員の営業スキルの底上げも可能になるのです。

もちろんペーパーレス化も実現されるため、それまで紙で行っていた契約書の作成、契約内容の閲覧、締結、チェック、審査・差分比較といった作業を、すべて端末上で完了できます。アナログ時代に比べて、圧倒的に契約業務の効率化を図れます。

契約DXを推進するメリット

契約DXを実現することのメリットをまとめると、以下の点を挙げられます。

契約成立までのリードタイムを短縮

契約のプロセスをすべて端末上で行えるため、先方との紙のやり取りも必要なく、締結後の契約書の保管もデータ化できます。端末の操作以外の物理的な作業を大幅に省けるため、契約の交渉開始から締結までのリードタイムを短縮できます。

マンパワー不足の解消

契約業務を担うのは企業の法務部門ですが、中小企業などでは法務部門を作るほどの財力、人的資源の余裕がないため、一人で法務全般を担ったり、他の業務と兼務したりすることも多いです。そうした人手が足りない状況において、DXによって業務を大幅に効率化できれば、負担軽減を図れます。

ミスの削減

契約のプロセスがデジタルデータ上で自動化されるため、契約更新・終了の漏れがなくなります。

契約データの活用

過去の契約、とくに成功事例の交渉プロセスを従業員間で共有することで、将来の新たな契約締結をスムーズに行えるようになります。また現在の契約の履行状況の確認、リスクの高い取引の内容検討など、契約データ活用の可能性の幅は広いです。

契約DXを実現するために必要なこと

契約DXを成功させるには、以下の課題を乗り越える必要があります。

経営陣がデジタル化のメリットを理解する

日本企業の経営者には60代以上の人が多く、そうした高齢世代はアナログの業務手法に慣れ親しんでいるため、デジタル化によるメリットを理解できない場合もあるようです。DXの最終決定者がそのような経営陣であれば、いくら部課長クラスが重要性を認識していても、遅々として導入が進まないとの事態を招きます。しかし「経営陣を研修する」といったことは下位の従業員ではできないため、経営陣自らが意識改革を図るよう努めなければなりません。

ITに明るい人材の確保

DX推進で不可欠なのが、既存のシステムとの統合を図れるITリテラシー能力のある人材です。いくらDXを望んでも、それを担える従業員がいなければ絵に描いた餅にならざるを得ません。社外から中途採用で採用する、もしくは担当者を決めて教育・研修を徹底するなど、中長期的な視野で人材確保を図る必要があります。

成功事例のデータ化

契約DXをこれから導入するという場合、社内の全契約をいきなりDXするのではなく、どのくらいの業務効率化を図れるのかを分析するため、試験的・部分的に導入する期間を設けるのが通例です。その際、試験的・部分的に行ってどのくらい業務の効率化を行えたのかを、数値として明確にデータ化することが重要です。それが全体のDXを進める上での説得材料になるためです。

この点は先の「経営陣がデジタル化のメリットを理解する」にもつながることです。成功事例を目に見える形で数値化してまとめ、その成果について経営陣を含め全社的にアピールすることで、契約DXを一気に進められます。

契約DXにおけるCLM、契約書管理システム

現在、契約DXにおいて重要な考え方・ツールとして重要視されているのがCLMと契約書管理システムの活用です。

CLM

CLMとはContract Lifecycle Managementの頭文字を取った言葉で、日本語では契約ライフサイクルマネジメントと呼ばれます。契約業務には「契約書作成」「締結」「契約書管理」など、複数のプロセスが含まれますが、それらの業務を契約前から契約後までのライフサイクルとして捉え、一体的に契約業務を捉えて業務効率化を図る考え方がCLMです。

従来のアナログ思考ではCLMとして契約業務を捉えるのは難しい面もありましたが、契約業務をデジタルデータ化できる契約DXの実現により、CLMが容易に可能となります。CLMを実現し、契約管理を効率化してコスト削減を図るためにも、契約DXは重要です。

契約書管理システム

自社の資金力や人材力だけでは契約DXの実現が難しい場合、契約書管理システムを提供してくれる外部サービスを利用する方法もあります。法務OSの「OLGA」（GVA TECH株式会社）、契約データベースを提供する「Contract One」（Sansan株式会社）、電子契約の国内標準となりつつある「クラウドサイン」（弁護士ドットコム株式会社）などのサービスがその一例です。

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まとめ

契約業務には大きく分けて契約書作成、契約締結、契約管理の3つの段階がありますが、これらの業務を一体的、効率的に遂行していくには、契約DXの実現が重要になります。契約不履行などのリスク管理もスムーズに行うことができ、事業活動を軌道に乗せ、企業成長を実現させていく上でも契約DXは大きなカギを握るといえます。

参考サイト
ContractS｜業務効率化を促進する『契約DX推進』は難しい？推進のコツとは
ContractS｜法務DX、契約DXとは？契約DXで生まれる価値と進め方を解説
Docusign｜DXによる攻めの契約管理実践編（1）契約作成段階のDX
OLGA｜契約のDXを実現するには？業務時間やコストを下げる方法を解説
Rentec Insight｜契約DXの実態とCLMが注目される理由
モンスターラボ DXブログ｜DX（デジタルトランスフォーメーション）とは？　意味・定義をわかりやすく解説〈2024年最新版〉
公益財団法人日本生産性本部｜日本生産性本部、「労働生産性の国際比較 2024」を公表
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