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年末は業務が立て込み、経理でも「請求漏れ」が発生しやすい時期です。
請求漏れが起きると、入金遅延だけでなく決算数値への影響や取引先からの信用低下にもつながり、年末のミスは後々まで響きます。
本記事では、年末に実際に起きやすい請求漏れのパターンと、経理が今すぐ見直すべきチェックするポイントをわかりやすく整理しました。
本章では、年末に請求漏れが急増する主な原因を整理します。
年末は案件・伝票が集中し、通常月より処理量が増えるため、入力・承認フローで抜け漏れが起きやすくなります。
特に月末と年末が重なる12月、さらに12月決算の場合の年度末においては、経理の確認が間に合わず、請求作成が遅れるリスクが高まります。
年末は営業・現場が繁忙となり担当者不在も増え、営業日数が少ない場合は、請求に必要な入力が遅れやすく、確認が止まるケースも頻発します。その結果、請求書作成が年内に間に合わず、翌月に持ち越される“後追い処理”が増えます。
年額請求・保守契約・クラウドサービスなどのサブスク型契約は、更新月が契約ごとに異なり、担当変更時に特に漏れやすい領域です。
12月は、単発の支援業務・導入支援・繁忙期用オプションなど、 “イレギュラー案件”が増える時期でもあります。
通常フローに乗らず、承認や資料回収が遅れやすいため、経理がチェックできないまま年末を迎えるケースもあります。
請求漏れは「請求書の出し忘れ」で済む問題ではなく、企業運営そのものに影響を及ぼすリスクがあります。入金が予定どおりに得られなければ、資金繰りが悪化し、日々の支払い計画に支障が出る可能性があります。
また、未請求・未回収が続くと、外部からは「管理体制に不安がある企業」と見られ、信用力が低下するおそれがあります。特に金融機関は売掛金の回収状況を細かく確認するため、請求漏れが多い企業は資金調達面で不利になるケースもあります。
加えて、年末に漏れが発生すると決算数字が狂い、監査や税務申告で追加対応が必要となるなど、事後的に負荷がかかります。
年末は、経理がどんなに気をつけていても、思わぬところで請求漏れが発覚する場合もあります。
ここでは、実際の企業で起きた典型的なパターンを紹介しつつ、どこに落とし穴があるのかを整理します。営業担当が年末に退職・異動するケースでは、案件や契約情報の引継ぎが不十分なまま年内処理を迎えることがあります。
「誰がこの案件を担当しているのか」「請求条件がどこに記録されているのか」が宙に浮いた結果、請求書の作成自体が漏れてしまうこともあります。
請求書発行前の社内承認プロセスが滞ったことで、年末ぎりぎりに承認が下り、「締め切りまでに発行が間に合わなかった」という事例も少なくありません。
部長・役員など最終承認者が年末で不在となり、承認フローがストップするケースも多く、経理が急いで作成しても年内発行が叶わず、入金時期が翌年にずれ込む原因となります。
部門ごとにExcelやスプレッドシートで請求予定を管理している場合、更新忘れがそのまま請求漏れにつながる典型的なトラブルです。
「案件は完了していたのに、シートに反映されていなかった」「担当が休暇中で更新されないまま月末に」というパターンが年末は特に多発。 属人化した管理方法は、忙しい時期ほどリスクが顕在化します。
年末は「気づいたときには手遅れ」になりやすい時期です。ここでは経理担当者が今すぐ使えるチェック項目をまとめました。
契約管理台帳・サブスク管理シートを最新の状態にし、更新月・請求月のズレがないかを再確認します。特にクラウドサービス、保守契約、年額課金のSaaSは更新月が把握しづらいため要注意です。
契約ごとの請求条件(前払い/後払い・請求タイミング・分割の有無)も合わせて整理しておくと、漏れの発見が早まります。
営業・現場が入力していない案件がそのまま請求漏れにつながるため、年末前に「請求予定の棚卸し」を依頼することが必須です。
完了報告書、納品レポート、案件管理ツールなどを照合し、未入力・未申請がないかを確認します。 担当者が休暇に入る前に請求案件の棚卸しを済ませることで、年末の駆け込みトラブルを防げます。
単発のコンサル、導入支援、イベント出展、繁忙期対応など、年末だけ増えるスポット業務は、請求フローに乗らず漏れやすい領域です。
スケジュール表や依頼メール、チャット履歴を確認し、経理に情報が届いていない業務がないかを洗い出しましょう。
請求金額、数量、工数、締め日など、請求書の根拠となる情報の最終照合を行います。
特に、12月決算の年度末となる会社においては、締め日が月末と年度末で異なる場合は、処理の遅れがそのまま決算の正確性につながるため注意が必要です。過去の請求書と比較することで、金額の異常値も早期に発見できます。
年内の請求書発行がどうしても間に合わない場合、取引先と事前に連絡をとり、翌年に請求する合意を取り付けておくケースもあります。
この場合でも、何らかの合意文書や少なくとも合意した相手先担当者や合意日時を含めた合意内容をメモなどで文書化しておくことが望まれます。年末のタイムリミットに備えて、状況次第では法務・営業と共通のルールを再確認しておくことが重要です。
外注費・業務委託費・講師費用など、“相手側が請求書を発行する”契約は、先方の動きに依存するため漏れやすい領域です。
「まだ請求書が届いていない案件」「提出予定日が不明な外注先」をリスト化し、 年内に受領できるかを確認しておきましょう。支払い遅延の防止にもつながります。
請求漏れの多くは、“経理だけが把握していても改善しない”ものです。 部門別に「請求未処理リスト」を作成し、営業・CS・現場・管理職に共有することで、抜け漏れの早期発見と責任分担の明確化ができます。
全社で同じリストを見る習慣をつけることで、年末処理だけでなく月次処理が早期化し、精度も向上します。
請求漏れは、年末だけの突発的な問題ではなく、日々の運用フローが属人化していることが根本原因であることが多いものです。
ここでは、請求フローを安定化させるための対策案をご紹介します。
発行する請求書には必ず連番を振り、関連する書類と合わせて管理できる体制を整えましょう。
見積書・注文書・納品書など、請求までの流れで作成する書類にも同じ番号を付けておくと、取引の流れを一つの番号で追えるため、確認作業が格段に効率化します。
番号による管理が徹底されていると、取引先から問い合わせがあった際も、請求書番号から関連書類を素早く照会でき、正確な回答が可能になります。
請求書を発行するまでには、売上の入力、請求データの作成、印刷、送付など多様なステップがあります。
この一連の業務を細かく分解し、リスト化して“抜けがないか”確認できる状態にしておきましょう。
チェックリストは担当者だけでなく、チーム全体で共有すると、業務品質が平準化され、ヒューマンエラーの減少につながります。
特定の担当者に作業が集中している場合、どうしてもミスが起こりやすくなります。 請求書作成は1人で完結させず、入力・作成・確認といった工程ごとに複数人が関わるフローに変更することで、ミスの発生を防ぐことができます。
万が一担当者が不在でも業務が止まらない体制になるため、リスク管理の面でも有効です。
手作業で請求を行っている場合、システム導入による自動化も選択肢です。 請求管理システムは、請求書作成・送付・入金消込までをデジタル化でき、締め日ごとの請求データ生成や金額計算を自動で処理します。
人の手作業に頼る部分が減るため、工数削減だけでなく、請求漏れや金額ミスの防止にもつながります。
年末は、案件集中や担当者不在など、請求漏れが最も起きやすい時期です。発覚が遅れるほど入金遅延や決算数値への影響、取引先との信用問題など、企業にとって大きなリスクにつながります。
本記事で紹介したチェックリストや運用改善策は、今日からすぐに実践できるものばかりです。契約管理と経理フローの連携強化、属人化の解消、月次での棚卸し、AIによる自動検知など、仕組みの整備は“年末だけの対処”に有効であるだけではなく、長期的な経理体制の強化にもつながります。
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